皆さんこんにちは!
養護白寿荘の伊藤です。
新緑の季節を通り越し、急に夏のような暑さがやってきた今日この頃。皆さまいかがお過ごしでしょうか?
少しでも涼しい気分を味わっていただきたいと思い、本日は高齢者向けアート鑑賞プログラム「アートリップ(Artrip)」の様子をレポートします。

今回のテーマは「遊びに夢中」。
参加者の皆さまから、驚くほど豊かな感性と、優しさに満ちたコメントがたくさん飛び出した、心温まる1時間の様子をぜひご覧ください。
アートリップ(Artrip)とは?
アートリップは、アート(芸術)とトリップ(旅)を掛け合わせた言葉です。
絵画をただ眺めるだけでなく、参加者同士が「何が見える?」「どう感じる?」と自由に言葉を交わしながら、一緒にアートの旅を楽しむ「対話型アート鑑賞プログラム」です。
当日は、プログラムのロゴマークを見ながら、こんな対話からスタートしました。
アートコンダクター:「このマーク、真ん中の白い部分と、周りの紫の部分、何に見えますか?」
参加者:「カップに見える!あ、でも、人と人が顔を合わせているようにも見えるね」
「見方によって色々な見え方ができる。どれも間違いではなく、全部が正解」
それがアートリップの素晴らしいところです。
正解を当てるクイズではないので、皆さま安心して自由に思ったことをお話ししてくださいます。
1作品目:メアリー・カサット『浜辺で遊ぶ子供たち』

まず皆さまと一緒に旅したのが、アメリカの画家メアリー・カサットが描いた油絵です。
真夏の砂浜で、幼い子供が2人、バケツを持って遊んでいる微笑ましい作品です。
じっくり絵を見つめるうちに、皆さまの視点は「子供たちの様子」へと注がれました。
• 「片方の子は帽子を被っていないから、ほっぺたが真っ赤。暑そう!」
• 「本当だ、腕も真っ赤。大丈夫かしら?」
• 「子供だけで海辺は危ないから、ここには映っていないけれど親御さんや先生が近くで見守っているはずよ」
参加者の皆さまから次々と出てくるのは、絵の中の子供たちをまるで我が子や我が孫のように愛おしみ、体調を気遣う「優しいいたわりの言葉」でした。

さらに、子供たちが何に夢中になっているのか、想像の手は広がります。
「バケツの中にカニがいるんじゃない?」
「土壌(ドジョウ)を作ってるのかも」
「動くものを見てるから飽きないんだね」と大盛り上がり。

拡大して手足のむくむくした可愛らしさが見えると、
「可愛いねぇ、抱っこしたくなっちゃう」
「お餅みたいに柔らかそう」と、皆さまの表情も自然とほころんでいました。
2作品目:竹久夢二『走れ』

続いて鑑賞したのは、日本の大正ロマンを代表する画家・竹久夢二の水彩画。男の子たちが「輪転がし(わっころがし)」をして競い合っている躍動感あふれる作品です。
この絵が登場した瞬間、参加者の皆さまからは「懐かしい!」という声が上がりました。
「私、これ男の子と一緒になって遊んだことがある!回して遊ぶのよね」
「自転車のタイヤの枠を使ってやった男性陣を中心に、一気に子供時代の思い出話に花が咲きます。
「止まると倒れちゃうから、一生懸命走らないといけないんだ」
「結構な速さで走ってるから、これは大変な運動量だよ」と、絵から溢れ出る躍動感やスピード感を肌で感じ取っていらっしゃいました。

また、背景に描かれた女性たちを見て、
「頑張れって応援しながら見守っているんだね」
「木の色が赤みがかっているから、季節は秋か、あるいは春先かな?」と、色彩や構図から時代背景や季節を細かく観察される場面もありました。

2つの「夢中」を体験して
今回は、
1. 『浜辺で遊ぶ子供たち』(静の夢中:手元でじっと生き物を観察する姿)
2. 『走れ』(動の夢中:輪を倒さないように全力で走る躍動感)
という、異なる2つの「遊びに夢中な姿」を対比して鑑賞しました。

最後に「もし自分がこの絵の中に入れるとしたら、どちらに入って遊びたいですか?」と問いかけると、「やっぱり懐かしいから輪転がしがいいな」「可愛い子供たちと一緒に浜辺にいたいな」と、それぞれの思い出や好みに合わせて、最後まで笑顔で答えてくださいました。
豊かな感性に触れた最高の1時間
今回のプログラムを通じて、参加者の皆さまの「人を思いやる優しい気持ち」や「豊かな観察力・感性」を肌で感じることができ、スタッフ一同、心がほんわかと温まる最高の時間を過ごさせていただきました。

普段は少し内向的だったり、お体に痛みがあってお部屋で過ごしがちだったりする方も、アートを前にすると「これはやったことがある!」「男はみんなやるんだよ」と、本当に生き生きとした表情で自発的に言葉を発してくださいます。これこそが、アートリップが持つリハビリテーションや心のケアとしての大きな力だと実感しています。
ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました!
また次回の「アートの旅」でお会いしましょう。