「養護老人ホームに入所すると生活保護が受給できなくなるって本当?」
「費用面が心配だけど、どんな費用がかかるの?」
このような疑問をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。養護老人ホームに入所すると生活保護は廃止されますが、措置費によって利用料が賄われるため安心して利用できます。
本記事では、養護老人ホームへの入所で生活保護が廃止される理由と利用に必要な費用を解説します。ほかにも生活保護を受けながら利用できる施設も紹介しているため、条件に合った施設選びに役立てましょう。
記事目次
養護老人ホームに入所すると生活保護は廃止されるの?
養護老人ホームに入所した場合、生活保護は原則として廃止されます。生活に必要な費用は、市町村が給付する「措置費」という費用で賄われることが理由です。
養護老人ホームに入所している生活保護受給者が介護保険サービスを利用すると、利用者負担額は措置費から給付されるため、介護扶助の対象にはなりません。しかし、通院などの医療的ケアが必要になった場合、医療扶助が受けられる可能性があります。医療扶助は次の事項の範囲内で行われます。
一 診察
二 薬剤又は治療材料
三 医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
六 移送
養護老人ホームは医療的ケアが必要になったとしても、経済負担を心配せずに利用できるといえるでしょう。
養護老人ホームの利用に必要な費用
老人ホームに入所する場合、月々の利用料のほかにも入居一時金がかかる施設もあります。養護老人ホームでは、どのような費用を負担するのでしょうか。
入所時に必要な費用
有料老人ホームなどでは入居一時金が数百万円かかるケースもあります。しかし、養護老人ホームに入所する場合、入所時に一時金や保証金は一切かかりません。養護老人ホームは自立して社会復帰を目指す施設であり、長期的な利用は想定されていないことが理由です。
1か月あたりに必要な費用
養護老人ホームの月々の費用は、入所する本人やその家族の前年度の収入によって決まります。1~39段階の費用徴収階層区分によって費用が異なり、一般的には月々0円~140,000円の費用が必要です。
前年度の収入は「年金収入-(医療費+社会保険料)= 対象収入」の式で計算します。算出した対象収入によって費用徴収階層区分に当てはめ、月々に負担する金額が決定します。おおまかな費用徴収階層区分は以下の表の通りです。
対象収入による階層区分 | 月額費用 | |
区分1 | 0円~270,000円 | 0円 |
区分2~28 | 270,001円~1,000,000円 | 1,000~49,800円 |
区分29~38 | 1,000,001円~1,500,000 | 51,800円~81,100円 |
養護老人ホームの対象者
養護老人ホームは現在置かれている環境では生活が難しく、経済的にも厳しい状況である65歳以上の高齢者が入所できます。具体的には以下のような方が対象です。
- 経済状況が厳しい方(無年金など)
- 虐待を受けている方
- ホームレスの方
- 賃貸住宅からの退去を求められた方
なお、入所の可否は市町村が調査して判断します。対象となる範囲は市町村によって異なるため、あらかじめ確認しましょう。
生活保護を受けながら入所できる老人ホーム一覧
生活保護を受けていても入所できる老人ホームは、次のような種類があります。
- 特別養護老人ホーム
- 軽費老人ホーム
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
それぞれの対象者や費用を解説します。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、身体的または精神的な理由により在宅生活が困難な高齢者が入所し、食事や入浴、排泄などの支援が受けられる施設です。
対象者
特別養護老人ホームの対象者は、原則要介護3~5に認定された65歳以上の方です。要介護1・2の方でも特例的に認められれば入所できます。
費用
特別養護老人ホームを利用するには、次のような費用がかかります。
- 施設サービス費
- 居住費
- 食費
- 日常生活費など
居室のタイプや施設によって料金が異なります。要介護5の方が多床室を利用した場合、1か月にかかる費用は約100,000円です。
しかし、生活保護を受けている場合、特定入所者介護サービス費をはじめとした負担を軽減する措置が受けられます。生活保護費を上回らなければ0円で利用できるケースもあります。
軽費老人ホーム
軽費老人ホームは、家族の援助が難しく日常生活に不安のある60歳以上の方が入所できる施設です。A型やB型、ケアハウスなどの種類があり、それぞれ受けられるサービスが異なります。
対象者
軽費老人ホームの対象者とサービス内容は以下の表の通りです。
軽費老人ホームの種類 | 特徴 | 対象者 |
軽費老人ホームA型 | 低所得高齢者のための住まい | 高齢などの理由により独立して生活するには不安があると認められた60歳以上の方 |
軽費老人ホームB型 | 自炊ができる低所得高齢者のための住まい | ・身体機能等の低下などが認められるものの自炊は行える状態である60歳以上の方 ・高齢などの理由により独立して生活するには不安があると認められた方 |
都市型軽費老人ホーム | 都市部における低所得高齢者のための住まい | ※ケアハウス対象者を想定 |
ケアハウス(軽費老人ホーム) | 低所得高齢者のための住まい | ・身体機能の低下などにより自立した日常生活を営むことについて不安があると認められた60歳以上の方 ・家族による援助を受けることが困難な方 |
ケアハウス(特定施設入居者生活介護) | 包括的な介護サービスが必要な低所得高齢者のための住まい | 要支援・要介護認定された60歳以上の方 |
参考:全国老人福祉施設協議会|自立した尊厳ある生活を支える軽費老人ホーム・ケアハウス
費用
軽費老人ホームを利用するには次のような費用がかかります。
- サービスの提供に要する費用
- 生活費
- 居住に要する費用(ケアハウスのみ)
介護保険サービスを利用する場合は上記に加えてほかにも費用がかかります。また、光熱費の支払いが必要な施設もあるため、注意しましょう。
軽費老人ホームのおおよその費用は以下の表の通りです。
軽費老人ホームの種類 | 月額費用 |
軽費老人ホームA型 | 月65,000円~前年の収入額に応じて150,000円程度まで |
軽費老人ホームB型 | 40,000円程度 |
都市型軽費老人ホーム | 90,000円~前年の収入額に応じて150,000円程度まで |
ケアハウス(軽費老人ホーム) | 90,000円~前年の収入額に応じて150,000円程度まで |
ケアハウス(特定施設入居者生活介護) | 各施設・要介護度により異なる |
参考:全国老人福祉施設協議会|自立した尊厳ある生活を支える軽費老人ホーム・ケアハウス
生活保護を受けている場合、軽費老人ホームに入所するには受給額明細書を用意しなければなりません。
費用を生活保護費で賄うため、問題なく支払えるかどうかを入所先の施設に確認してもらう必要があります。その判断材料として受給額明細書の提出が必要です。
また、軽費老人ホームのなかには生活保護受給者を受け入れていない施設もあります。入所を希望する施設があれば、事前に確認しておきましょう。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、高齢者が心身の健康を保ちながら生活できるように配慮された居住住宅です。介護付き・住宅型・健康型の3種類あり、それぞれ受けられるサービスが異なります。
対象者
有料老人ホームの特徴と対象者は以下の表の通りです。
種類 | 特徴 | 対象者 |
介護付き有料老人ホーム | 介護度に応じて必要な介護が受けられる住まい | 65歳以上で介護が必要な方 |
住宅型有料老人ホーム | 生活支援が受けられ、介護が必要になっても訪問介護などのサービスが受けられる住まい | 60歳以上で介護が必要な方・自立している方のいずれも対象 |
健康型有料老人ホーム | 自立している健康な方が生活する住まい | 60歳以上で介護を必要としない自立している方 |
参考:厚生労働省|介護を受けながら暮らす高齢者向け住まいについて
なお、対象者は入居希望者の状況や施設によって異なります。
費用
有料老人ホームを利用するには、次のような費用がかかります。
- 賃料
- 共益費
- 光熱費
- 食費
- 雑費など
平均月額費用は約190,000円ですが、有料老人ホームは民間施設であるため、賃料の基準は定められていません。施設の立地やサービス内容、居室のグレードにより、施設ごとの料金の差が大きいため注意しましょう。
有料老人ホームは、生活保護を受けている方でも入居可能です。しかし、特別養護老人ホームと比較すると、負担を軽減する措置は限られています。受給している生活保護費で負担できる範囲の利用料かどうかをあらかじめ確認しましょう。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者の安心を支える介護と医療が連携したサービスが受けられる住宅です。建物はバリアフリー構造になっており、安否確認や生活相談に加えて食事の提供や生活支援などが受けられる住宅もあります。
対象者
サービス付き高齢者向け住宅は、60歳以上の方あるいは要介護・要支援認定されている60歳未満の方が入居できます。
費用
サービス付き高齢者向け住宅を利用するには、次のような費用がかかります。
- 賃料
- 共益費
- サービス費など
光熱費は共益費に含まれるケースや、居室ごとのメーターで使用分のみを自己負担するケースがあります。ほかにも食事を提供している住宅では食費も必要です。提供されているサービスはあらかじめ確認しましょう。
平均月額費用は約140,000円であり、受給している生活保護費で負担できれば入居可能です。しかし、運営会社の方針によって受け入れていない住宅もあるため注意が必要です。
まとめ
養護老人ホームに入所すると措置費で費用が賄われるため、生活保護は廃止となります。しかし、医療的ケアが必要になった場合などは医療扶助が受けられる場合もあり、安心して利用できる施設であるといえるでしょう。
また、生活保護を受けながら利用できる施設はいくつかありますが、費用やサービス内容に差があります。対象者や必要な費用を理解し、安心して生活を送れる施設を選びましょう。