「介護業界は人手不足で、30代でも転職しやすいと聞いたけれど本当?」
「30代で介護職に転職する場合のメリット・注意点を踏まえて、転職するかどうかを判断したい」
30代で介護職への転職を検討している方のなかには、上記のような悩みがある方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、30代でも介護業界に転職できる4つの理由と介護職に転職するメリット・注意点を中心に解説します。30代での介護職へ転職すべきかどうかの判断に役立つ内容のため、転職を検討している方はぜひご覧ください。
30代でも介護業界に転職できる4つの理由
30代でも介護業界に転職できると考えられる理由は、以下の4つです。
- 2025年には約32万人介護職員が不足する見込みである
- 60%以上の事業所が人手不足を感じている
- 介護職員の平均年齢は47.3歳と高め
- 介護職員に義務付けられている研修は1年の猶予期間がある
2025年には約32万人介護職員が不足する見込みである
厚生労働省が介護職員の必要数を試算した結果によると、2019年の介護職員数約211万人と比べて、2025年には約243万人、2040年には約280万人が必要となります。2025年には約32万人もの介護職員が不足する見込みのため、少子高齢化も相まって、30代でも介護業界へ転職しやすいといえます。
参照:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
60%以上の事業所が人手不足を感じている
多くの介護事業所が肌感覚で人手不足を感じているのも、30代で介護業界へ転職できると考えられる理由の1つです。
2023年に公益財団法人介護労働安定センターが介護事業所を対象に実施した調査によると、介護施設で働く介護職員が不足していると答えた事業所の割合は65.9%でした。さらに、利用者の自宅へ訪問してサービスを提供する訪問介護員に至っては80%を超える事業所が不足感を感じており、介護職が働く多くの現場で「人手が足りていない」と感じていることがわかります。
人手不足が慢性化すると「現在働いている職員の負担の増加する」「介護の質が低下する」「利用者の受け入れ数を抑える必要が出てくる」といった悪影響を及ぼすため、介護職員や訪問介護員などの人材確保が急務となっています。
参照:公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査結果報告書」
介護職員の平均年齢は47.3歳と高め
介護業界で働く職員の平均年齢は比較的高いため、30代でも転職しやすい理由として挙げられます。
2022年に公益財団法人介護労働安定センターが実施した調査によると、介護職員の平均年齢は47.3歳であり、そのほかの職種でも訪問介護員は54.7歳、ケアマネジャーは53歳となっています。
介護業界は体力が必要な場面もあるため、介護職のなかでも若手に分類される30代は歓迎されやすい傾向があります。
参照:公益財団法人 介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査結果報告書」
介護職員に義務付けられている研修は1年の猶予期間がある
これまで、介護施設では無資格でも働くことができましたが、2024年から「認知症介護基礎研修」の受講が義務付けられています。ただし、新卒・中途を問わず新入職員の受講については1年の猶予期間があることから、職場によっては未経験で働き始められるため、介護職に転職してから認知症介護基礎研修を受講できます。
よって、他職種で働いていて研修受講の時間が確保できない30代の方でも、介護職に転職することが可能です。
30代が介護職に転職する3つのメリット
30代で介護職に転職するメリットは以下の3つです。
- 未経験で転職してもキャリアアップできる
- 地域を問わず活躍できる
- 前職の経験を活かせる
未経験で転職してもキャリアアップできる
介護業界はキャリアを構築する仕組みが整備されているため、資格取得によりキャリアアップできます。
たとえば、未経験から認知症介護基礎研修を受講した場合、次に資格取得の選択肢に挙がるのは、介護に関する基本的な知識・技術を習得できる「介護職員初任者研修」の受講や、実践的かつ専門的な知識・技術を習得できる「介護実務者研修」の受講となります。
さらに、介護実務者研修の修了および3年以上の実務経験がある場合、国家資格である「介護福祉士」の受験資格を得ることができます。
各種資格を取得すると資格手当が支給される職場もあるため、資格取得はキャリアアップの面だけでなく給与面のメリットも大きい選択肢です。
以下の記事では、介護福祉士の仕事内容を解説しています。介護職との違いや1日の具体的なスケジュールも紹介しているため、介護福祉士に関心のある方はぜひご覧ください。
▼介護福祉士の仕事内容を職場ごとに徹底解説!介護士との違い・1日のスケジュールまで紹介
以下の記事では、介護職のキャリアアップの選択肢の1つである「ケアマネジャー(介護支援専門員)」の特別養護老人ホームにおける仕事内容を解説しています。平均給与額も紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。
▼特養(特別養護老人ホーム)のケアマネジャーの仕事内容は?平均給与額も解説
地域を問わず活躍できる
介護職は介護施設だけでなく、訪問介護事業所や病院など職場の選択肢が豊富な仕事です。そのため地域を問わず活躍できるのもメリットです。
都道府県によって差はあるものの、2022年に実施された調査によると、福祉分野の地域別の有効求人倍率は1.42倍~13.02倍となっています。最も高かったのは福岡県の13.02%で、次いで三重県の10.83 倍、秋田県の9.52倍となっています。一方、最も低かったのは徳島県の1.42倍、次いで香川県の1.91倍です。
2022年の有効求人倍率の平均は1.28倍のため、介護の仕事を含めた福祉分野は地域を問わず仕事が見つけやすいことがわかります。
参照:社会福祉法人 全国社会福祉協議会 中央福祉人材センター「令和4年度 福祉分野の求人求職動向」
参照:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年12月分及び令和4年分)について」
前職の経験を活かせる
介護の仕事には、コミュニケーション能力やマネジメント能力、チームワークなど多岐にわたるスキルが求められます。ほかの職種でも求められるスキルが多いため、前職の経験を活かして仕事できます。
たとえば、介護施設で介護職として働く場合、現場で働く介護職はもちろんのこと、ケアマネジャーや看護師、ご利用者様の家族など、多くの人々と連携してご利用者様を支援するため、コミュニケーション能力が不可欠です。
また、介護職のキャリアアップ候補の「管理者」や「生活相談員」などの場合、施設利用者を集めるために施設見学会を開いたり、利用者を紹介してもらえるつながりとして医療ソーシャルワーカーや居宅介護支援事業所のケアマネジャーへ対応したりするケースもあります。この場合、前職で営業職を経験していれば営業スキルを活かせるでしょう。
前職で培った経験・スキルを活かせるのも介護職に転職するメリットの1つです。
30代で介護職へ転職する3つの注意点
30代で介護職に転職するメリットがある一方で、以下のような注意点もあります。
- 前職より年収が下がる可能性がある
- 身体的・精神的な負担がかかる
- 年下の上司と仕事する可能性がある
前職より年収が下がる可能性がある
前職の年収によっては、介護職への転職によって年収が下がる可能性がある点に注意が必要です。
2022年に厚生労働省が実施した調査によると、介護職員処遇改善支援補助金を取得している事業所で働く常勤の介護職員の平均月給は317,540円でした。年収に換算すると約380万円のため、この平均給与額よりも高い給与を得ていた方は介護職への転職によって年収が下がる可能性があります。
また、同じ介護職でもサービス種類によって以下のように平均給与額が異なります。
サービス種類 | 平均月給 | 平均年収 |
介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム) | 348,040円 | 約418万円 |
介護老人保健施設 | 339,040円 | 約407万円 |
訪問介護事業所 | 315,170円 | 約378万円 |
通所介護事業所 (デイサービス) | 275,620円 | 約331万円 |
認知症対応型共同生活介護事業所 (グループホーム) | 291,080円 | 約349万円 |
参照:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
たとえばデイサービスは、夜勤がある職場が少ないため、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの夜勤のある施設と比べると、年収が低い傾向があります。そのため、年収を減らしたくない場合は夜勤のある職場で働くことも検討しましょう。
身体的・精神的な負担がかかる
介護の仕事は、身体的・精神的な負担がかかることも認識しておきましょう。
たとえば要介護度5のご利用者様を支援する場合、車椅子からベッドへ身体を抱き抱えて移乗したり、排泄時もおむつ交換が必要だったりするケースがあるため、腰に負担がかかって腰痛を引き起こす可能性があります。
また、施設によっては延命治療をせずに最期を迎える「看取り」に対応しています。ご利用者様が自然に亡くなっていく過程を見守りながら日常的なケアをおこなうため、慣れないうちは不安を感じる可能性もあるでしょう。
身体的な負担に耐えられるか不安な場合は、身体介助の機会が比較的少ないデイサービスやグループホームなどで経験を積む方法があります。また、ご利用者様の体調の変化への対応が不安な場合は、看護師が24時間常駐している職場を選ぶとよいでしょう。
年下の上司と仕事する可能性がある
介護業界では、18歳ごろから現場で経験を積んでいる職員もいるため、30代で入職すると年下の上司のもとに配属される可能性があります。そのため、年下から指導を受けたり指示を受けたりする場面では、仕事がしにくいと感じるかもしれません。
しかし、年下であっても介護業界で経験を積んで役職に就いているため、仕事だと割り切って業務を進めることが大切です。
30代での介護職への転職についてよくある3つの質問
30代での介護職への転職に関して、よくある質問は以下の3つです。
- 質問1.介護業界への転職前に取得しておくと有利になる資格はありますか?
- 質問2.介護未経験者におすすめの職場の特徴はありますか?
- 質問3.職歴がない30代でも介護職として働けますか?
質問1.介護業界への転職前に取得しておくと有利になる資格はありますか?
介護の求人のなかには、介護職として働くうえで必要な基礎的な知識・技術が学べる「介護職員初任者研修」を修了していなければ応募できないものもあるため、転職先の選択肢を増やしたい場合は初任者研修を受講しておくことをおすすめします。
また、ハローワーク(公共職業安定所)が雇用保険に加入していた求職者の方向けに実施している「公共職業訓練」でも、初任者研修を受講することが可能です。詳しくは、お住まいの地域を管轄するハローワークへお問い合わせください。
質問2.介護未経験者におすすめの職場の特徴はありますか?
介護業界未経験の方におすすめなのは、以下のような職場です。
- 教育制度が整っている
- 資格取得支援制度が充実している
- 看護師が24時間常駐している
- 1フロアで複数のスタッフが働いている
介護業界は人手不足で30代でも転職しやすい反面、入職者への教育まで手が回らない職場も存在します。そのため、面接時に教育体制や1人立ちまでの期間を確認し、不安なく働ける職場を選びましょう。
また、介護業界で長く働いていく場合、キャリアアップを見据えて資格取得時の支援が充実している職場を選ぶとよいでしょう。なかには「資格取得のための費用を負担する」「研修の受講日を出勤日として扱う」といった職場もあるため、資格取得に対する支援が充実している転職先を選びましょう。
さらに、未経験でご利用者様の体調の急変への対応に不安がある場合、看護師が24時間配置されている職場がおすすめです。たとえば、特別養護老人ホームのなかには「夜間は看護師が不在でオンコール体制を整えている施設」と「看護師が24時間常駐している施設」があります。前者であっても、電話をかければ看護師に相談できますが、不安な場合は看護師が24時間配置されている職場を選びましょう。
加えて、介護の仕事ではとっさに判断しなければならない場面もあるため、1人立ち後も業務を遂行できるか不安な場合は、1フロアで常に複数のスタッフが働いている職場を選びましょう。求人の情報では判断しにくい場合は、面接時に確認することも大切です。
質問3.職歴がない30代でも介護職として働けますか?
職歴がなかったり空白期間が長かったりする場合でも、介護職に転職することは可能です。ただし「介護職以外に就けそうな仕事がない」と介護の仕事を知らずに安易な気持ちで就職してしまうと、やりがいを感じられずに離職してしまう可能性があります。
そのため、介護職の仕事内容を知ったうえでチャレンジするかどうかを検討しましょう。
まとめ
介護業界は「2025年には約32万人介護職員が不足する見込み」「介護職員の平均年齢は47.3歳と高め」などの理由から、未経験の30代でも転職できる可能性がある仕事です。ただし、前職より年収が下がる可能性があったり、身体的・精神的に負担がかかったりすることから、十分に検討したうえで転職する必要があります。
本記事で紹介した介護職に転職するメリットと注意点を参考に、30代での転職を成功させましょう。
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