特養(特別養護老人ホーム)の3ヶ月ルールとは?追い出されるケース・退去勧告された場合の相談先も解説

特養(特別養護老人ホーム)の3ヶ月ルールとは?追い出されるケース・退去勧告された場合の相談先も解説

「特養から退去を迫られるケースがあるのか知りたい」
「特養の3ヶ月ルールを詳しく知って、入居先として特養が適しているのか判断したい」

特養への入居を検討されている方のなかには、上記のような悩みがある方もいるのではないでしょうか。

本記事では「特養の3ヶ月ルールの概要」と「特養を追い出される可能性がある4つのケース」を中心に解説します。入居後に起こり得るリスクが確認できる内容のため、ぜひ最後までご覧ください。

特養(特別養護老人ホーム)の3ヶ月ルールとは?

特養(特別養護老人ホーム)の3ヶ月ルールとは?

特養の3ヶ月ルールとは、特養に入居している間に3ヶ月を超えて医療機関に入院した場合、退去となる規定を指します。

3ヶ月ルールは、特養の運営基準のなかの第22条に由来しています。運営基準では「入所者の入院期間中の取り扱い」として、以下の文言が明記されています。

第二十二条 特別養護老人ホームは、入所者について、病院又は診療所に入院する必要が生じた場合であって、入院後おおむね三月以内に退院することが明らかに見込まれるときは、その者及びその家族の希望等を勘案し、必要に応じて適切な便宜を供与するとともに、やむを得ない事情がある場合を除き、退院後再び当該特別養護老人ホームに円滑に入所することができるようにしなければならない。

引用:厚生労働省「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準

上記の条文は「医療機関への入院が3ヶ月以内であれば、退院後は円滑に特養へ入所できるようにしなければならない」という内容です。この内容を「3ヶ月以上の入院が見込まれる場合は、再入所の対応が必要ない」と解釈してルール化したものが、いわゆる特養の3ヶ月ルールです。

なお、3ヶ月ルールは、特養の入居時に取り交わす契約書に終了事由として記載されています。施設によって設定期間が異なり、なかには6ヶ月程度に設定しているケースもあります。入居先の施設が定める期間を必ず確認しましょう。

入院中に支払いが必要な費用

入居する本人が医療機関に入院している間も、特養に対して「居住費」を支払う必要があります。居住費は、賃貸でいう「家賃」や「管理費」に該当します。実際に住んでいなくても部屋は確保している状態のため、入院中も支払いが必要です。

入院中も一定の居住費がかかり続けることから、費用負担を避けるために一旦は退去する方も存在します。

なお、特養でのサービスは受けないため「介護サービス費」と「食費」の支払いは不要です。

特養(特別養護老人ホーム)の強制退去になる4つのケース

特養(特別養護老人ホーム)の強制退去になる4つのケース

3ヶ月ルールのほかに、特養を強制退去になる可能性のあるケースは以下の4つが考えられます。

  • 施設の利用料を滞納している
  • ほかの入居者・職員への迷惑行為がある
  • 要介護度3以下に判定された
  • 施設で対応できない医療的ケアが必要になった

施設の利用料を滞納している

特養を利用するにあたって、一定の月額料金がかかります。費用を支払えずに滞納した場合、退去を求められるケースがあります。

費用の支払いが遅れそうな場合は施設の相談員などに相談し、対処法を検討しましょう。特養は公的施設のため、利用できる負担軽減制度の種類が多いのが特徴です。対象の制度があれば提案してもらえるケースもあるため、支払いに不安がある場合は事前に相談しましょう。

また、ユニット型に入居している場合、従来型に入居すれば費用を抑えることも可能です。施設内に従来型の居室もあれば、移動できる可能性があるため相談してみましょう。

ほかの入居者・職員への迷惑行為がある

施設のスタッフやほかの入居者に対して迷惑行為がある場合、共同生活が難しいと判断されて退去を求められるケースがあります。

具体的には、以下のような行為が該当します。

  • 暴力行為により誰かに怪我を負わせる
  • 他人の持ち物を盗む
  • 施設の物を故意に破壊する
  • 過度なセクハラ行為がある
  • 複数回にわたって夜中に大声を出す

なかには認知症の症状によって上記の行為をしてしまうケースがあるものの、ほかの入居者の生活に影響を及ぼす場合は、施設では対応しきれないと判断される可能性があります。認知症に関係なく「本人の性格」や「過度なストレス」などが原因の場合、施設に相談して適切に対処しましょう。

要介護度2以下に判定された

特養は、以下の入居条件に該当する方が利用できる施設です。

  • 65歳以上で要介護3~5に認定されている方
  • 40歳~64歳で特定疾患があり、要介護3~5に認定されている方
  • 特例により入居が認められた要介護1・2の方

よって、入居後に要介護2以下に判定された場合は退去する必要があります。

なお特養の対象者は、2015年4月に要介護3以上となりました。それまでは要介護1・2の方も対象だったため、2015年4月以前に入居している方は退去の対象外です。

施設で対応できない医療的ケアが必要になった

特養には医師が常駐していないため、必要な医療的ケアは看護師がメインで行います。施設によって医療的ケアの提供体制が異なり、看護師が24時間常駐している施設から、日中しか配置されていない施設などさまざまです。

よって、入居者に高度な医療的ケアが必要になった場合は医師が対応する必要があります。「必要な医療的ケアが提供できない」という理由から、退去を求められるケースがあることを認識しておきましょう。

令和3年に株式会社日本総合研究所が調査した結果によると「入居者に必要となった際は退去となる医療処置」として、以下が挙げられています。

  • レスピータ(人工呼吸器)の管理:87.9%
  • 中心静脈カテーテルの管理(CVport含む):78.4%
  • 医療用麻酔の点滴:71.8%
  • 気管切開の管理:79.3%
  • モニター測定:67.2%
  • 透析が必要な入居者の日常的な観察・送迎:60.4%

たとえば気管切開が必要になると、79.3%の特養が対応できないと答えています。入居先の施設が対応できなければ「対応できるほかの特養」や、医療体制が整えられている「介護医療院」などへの転居を検討する必要があります。

このように、入居者の体調の変化によって新たな医療的ケアが必要になると、退去となる可能性があります。医療機関ではなく積極的な治療も行わないため、入居者の病状によっては住み続けられない点に注意が必要です。

特養(特別養護老人ホーム)から退去勧告された場合の相談先

特養(特別養護老人ホーム)から退去勧告された場合の相談先

特養から退去を迫られた場合、相談できる窓口は以下の6つです。

  • 施設の管理者
  • 地域包括支援センター
  • 居宅介護支援事業所
  • 国民健康保険団体連合会
  • 社会福祉協議会
  • 民生委員

施設の管理者

施設側から退去を求められた場合、まずは管理者から退去に向けての説明を受けましょう。退去勧告に至った理由を詳しく説明してもらうだけでなく、今後の流れに関しても確認します。

退去までの期間に「新たな転居先を探す」あるいは「在宅介護に向けた準備」などが必要です。必要に応じてほかの介護事業者を紹介してもらい、退去に向けて備えましょう。

地域包括支援センター

地域包括支援センターとは、市区町村から委託されている公的な相談窓口です。保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)などが在籍しており、介護に関する相談をはじめとした幅広い相談を受け付けています。

「転居先の施設探し」や「在宅介護への移行」に関するサポートも受けられ、介護事業所や医療機関とも連携しているため、適切なアドバイスが受けられる窓口です。

居宅介護支援事業所

居宅介護支援事業所は、介護が必要な方が自宅で介護サービスを受けるのに必要な「ケアプランの作成」や「介護サービスの調整」などを主業務とする事業所です。ケアマネジャーが在籍しており、在宅介護に関する支援だけでなく、必要に応じて施設入居のための調整も行っています。

特養への入居前に利用していた居宅介護支援事業所があれば、再び相談するのも1つの方法です。

国民健康保険団体連合会

国民健康保険団体連合会は、国民健康保険法に基いて設置されている団体です。介護保険法に基づいて、介護サービス利用者・家族からの相談を受け付けています。よって、特養からの退去勧告に不服がある場合に相談することで、第三者の目線で評価してもらえます。

国民健康保険団体連合会に相談すると、相談内容を審査・調査したうえで、必要性が判断された場合は施設側に指導・助言を行います。市区町村での対応が難しい場合にも対応してもらえる窓口です。

運営適正化委員会

運営適正化委員会は、福祉サービス利用者の相談・苦情を解決し、利用者の権利擁護を目的として運営されています。たとえば東京都の場合、外部の有識者で構成されており、苦情には弁護士や医師、大学教授などの専門家が対応します。

相談を受け付けたあとに調査を実施し、退去勧告が不当であると判断された場合は「事業者への申し入れ」や「都道府県知事への通知」などが実施されます。全国の社会福祉協議会に設置されているため、退去勧告に対して不服がある場合は相談してみましょう。

民生委員

民生委員は、厚生労働大臣から委託されている非常勤の地方公務員です。地域住民の立場から、生活・福祉全般の相談・支援を行っています。地域住民の身近な相談相手として、支援が必要な住民と行政・専門機関をつなぐ役割のため、気軽に相談できるのが特徴です。

各種相談窓口に相談するかどうか迷った場合は、民生委員への相談も検討してみましょう。

良い特養の見分け方

良い特養の見分け方

特養に入居するには、多角的な視点で情報を集める必要があります。良い特養を見分けるには、施設選びの際に以下の5つのポイントを意識してみましょう。

  • 費用が標準額を大きく上回っていないか
  • スタッフの人員体制が充実しているか
  • スタッフの雰囲気がよいか
  • 入居者が確保できているか
  • 入居者の表情に安心感があるか

以下の記事では、上記のポイントをさらに詳しく解説しています。入居先選びのポイントも解説しているため、ぜひご覧ください。

参考記事:良い特養とは?特徴から入居先を選ぶ5つのポイントまで解説

特養(特別養護老人ホーム)の平均入居期間

特養(特別養護老人ホーム)の平均入居期間

特養の平均入居期間は、約3.5年です。終身で利用できる施設のため、ほかの施設と比べると長いのが特徴です。

なかでも老健(介護老人保健施設)は、入居期間が3ヶ月と定められています。特養は「介護が必要な方の生活の場」である一方で、老健は「在宅復帰を目指す場」であることが理由です。

特養の3ヶ月ルールに関してよくある3つの質問

特養の3ヶ月ルールに関してよくある3つの質問

特養の3ヶ月ルールに関して、よくある質問は次の3つです。

  • 質問1.特養から特養への転居は可能ですか?
  • 質問2.同じ特養に再入居できますか?
  • 質問3.特養で病気になったらどうなりますか?

質問1.特養から特養への転居は可能ですか?

これまで利用していた特養から、ほかの特養への転居も可能です。ただし、特養に入居中の場合は介護に欠ける状態として判断されないため「入所希望者本人の状況」や「主たる介護者である家族の状況」といった項目に加点されません。

よって、ほかの特養に入居するまでの期間が長くなる可能性があるため、特養から特養への転居は慎重に検討しましょう。

質問2.同じ特養に再入居できますか?

同じ特養への入居に制限はないため、再入居は可能です。ただし再度申し込む必要があるうえに、入居の順番が回ってくるのを待つ必要がある点に注意しましょう。

質問3.特養で病気になったらどうなりますか?

特養に入居中に病気を患った場合、施設の判断により「嘱託医の往診時に診察を受ける」あるいは「近隣の医療機関に受診する」などの方法で、診断を受けて必要な処置・薬の処方を受けます。

なお、近隣の医療機関への受診時は、家族の付き添いが必要になるケースがあります。一方で「医療機関まで送迎する」「診察に付き添う」といった対応を行う施設も存在します。

まとめ

まとめ

特養には、3ヶ月を超えて医療機関に入院した場合に退去になる「3ヶ月ルール」が存在しています。しかし、施設によって退去までの期間が異なるうえに、いざというときに相談できる窓口も幅広いです。

入居後に起こり得るリスクを確認したうえで、安心して生活できる入居先選びに役立てましょう。

白寿荘は、横浜市泉区にある特別養護老人ホームです。「相鉄いずみ野線 いずみ野駅」から徒歩8分の場所にあるため、アクセスしやすい施設です。近隣病院と協力体制を築いており、安心して生活していただける環境を整えています。

この記事を書いた人

かいごマガジン編集部

かいごマガジン編集部です。
介護の専門的な情報をどこよりもわかりやすく紹介していきます。
また、世の中の介護がどのように変化していっているのか最新の情報も随時発信していきますのでお楽しみに!
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