良い特養とは?特徴から入居先を選ぶ5つのポイントまで解説

良い特養とは?特徴から入居先を選ぶ5つのポイントまで解説

「特養への入居を検討しているが、選び方がわからない」

「良い特養の定義が知りたい」

特養(特別養護老人ホーム)への入居を検討されている方・家族の入居先を探している方のなかには、このような疑問を持つ方が多いです。

本記事では「良い特養の定義」「入居する特養を選ぶ5つのポイント」を中心に解説します。ご自身あるいはご家族の入居先選びに役立つため、ぜひお読みください。

良い特養とは?

良い特養とは?

良い特養(特別養護老人ホーム)の特徴は次の5つです。

  • 費用が標準額を大きく上回っていない
  • スタッフの人員体制が充実している
  • スタッフの雰囲気がよい
  • 入居者が確保できている
  • 入居者の表情に安心感がある

費用が標準額を大きく上回っていない

特養で生活するにあたってかかる費用のなかに「居住費」「食費」があります。いずれも介護保険が適用されず、施設側が自由に設定できる費用です。ただし国が定める「基準費用額」があるため、この金額を大きく上回っていないか確認しましょう。

特養の居住費と食費の基準費用額は、以下のとおりです。

費用項目基準費用額(日額(月額))
食費1,445円(4.4万円)
居住費多床室885円(2.6万円)
従来型個室1,171円(3.6万円)
ユニット型個室的多床室1,668円(5.1万円)
ユニット型個室2,006円(6.1万円)

出典:厚生労働省 労働局「介護報酬改定率、多床室の室料負担、基準費用額(居住費)について(報告)

居住費と食費は介護保険適用外のため、施設側と入居者側の契約によって金額が左右されます。多くの特養では基準費用額と同額で設定されているため、上記の金額を相場と捉えて費用をチェックしてみましょう。

スタッフの人員体制が充実している

施設に配置されているスタッフの人数は、入居後に受けられるケアの質に影響します。そのためスタッフの人員体制が充実している施設は、良い特養だといえます。

2021年に独立行政法人福祉医療機構が実施した調査によると、人員の状況について「不足している」と答えた特養は55.1%でした。調査対象の半数以上が人材不足を感じており、なかでも入居者のサポートに直接関わる「介護職員」が足りていないと答えた施設がほとんどでした。

介護施設では、適正なケアを提供するために「人員配置基準」で人員体制が定められています。特養の場合、人員配置基準は「介護職員・看護職員の合計が入居者3人に対して1人」です。

ただし、人員配置基準はあくまでも最低基準です。なかには「基準を下回らないぎりぎりで運営している施設」がある一方で「ケアの質を優先して職員を手厚く配置している施設」もあります。そのため基準より手厚く職員を配置している施設に入居すれば、手厚いケアが受けられる可能性が高いです。

また、特養が閉鎖する原因の1つとして「人材不足」が上げられます。安心して生活し続けられる場を選ぶためにも、人員体制が充実している特養を選びましょう。

スタッフの雰囲気がよい

特養は介護が必要な方が生活する場です。介護が必要な方の状態によっては多くのサポートを受けるため、ケアに関わるスタッフの雰囲気は重要です。

入居前に見学する際は介護職員だけでなく、施設長や相談員、看護職員などの様子・受け答えをチェックしましょう。「入居者への接し方」や「職員同士の会話」なども確認すると、良い特養かどうかが判断できます。

たとえば「入居者に対してあだ名で呼んでいる」「見学者に対してあいさつしない」といった場合は、接遇マナーが欠けているため、入居後に後悔する可能性が高いです。

またタイミングが選べる場合は、昼食前のタイミングである午前11時~午後12時の間に見学すると、普段の様子が把握できます。

忙しい時間でも親切に対応してくれるスタッフがいる施設であれば、入居後も安心して生活できるでしょう。

入居者が確保できている

特養が閉鎖する原因に「入居者が確保できず経営が悪化する」「目標稼働率が達成できない」といったケースがあります。入居先の特養が閉鎖した場合、ほかの施設への転居が必要になるため、入居者が確保できていて経営が安定している施設が良い特養といえます。

入居者が確保できない理由として「地域性により特養のニーズが少ない」「競合他社に入居希望者が流れている」「スタッフ不足で新規入居者が受け入れられない」などが挙げられます。「施設の定員」と「実際の入居者数」にギャップがある場合は、ほかの特養と比較して十分に検討しましょう。

入居者の表情に安心感がある

施設における入居者とスタッフの関係性は、既に入居している方の表情からも読み取ることができます。入居者の表情に「安心感がある」「いきいきしている」といった場合は、入居者・スタッフ間に信頼関係が築けている良い特養だといえます。

また、入居者が「どのような過ごし方をしているか」といった点もチェックしてみましょう。人それぞれ「ほかの入居者と交流して楽しく過ごしたい」「部屋でマイペースに過ごしたい」といった要望があります。

入居後の生活がイメージできるため、実際に施設で生活している方の過ごし方を参考にし、希望通りに過ごせるかどうかをチェックしましょう。

そもそも特養(特別養護老人ホーム)とは?

そもそも特養(特別養護老人ホーム)とは?

特養(特別養護老人ホーム)は、介護保険が適用される公的施設のなかの1つです。「介護老人福祉施設」とも呼ばれており、常に介護が必要な方が生活する場です。

入居条件

特養の入居条件は次のとおりです。

  • 65歳以上で要介護3~5に認定されている方
  • 40歳~64歳で特定疾患があり、要介護3~5に認定されている方
  • 特例により入居が認められた要介護1・2の方

原則として要介護3以上の方が入居する施設のため、日常生活の大半に介護が必要な方が対象です。特例によって要介護1・2の方の入居が認められるケースがある一方で、要支援1・2の方は対象外です。そのため、入所申込自体を受け付けていません。

サービス内容

特養で受けられるサービスは、おもに次の4つです。

  • 日常生活上の支援
  • 機能訓練
  • レクリエーション・行事
  • 医療的ケア

日常生活上の支援

特養では、日常生活に欠かせない食事や入浴、掃除といったサービスが受けられます。

食事は、介護が必要な方の状態を考慮した食事が提供されます。たとえば「かむ力がほとんどない」「飲み込む力が弱くなった」といった状態の場合は、かまずに飲み込める「ミキサー食」が提供されます。

また週に最低2回以上は入浴でき、入居者の身体状況に応じて特殊な浴槽を使用します。たとえば立つことが難しい方の場合は、座ったまま湯船に入れる「チェアー浴」で入浴します。

各居室や共用部分の掃除は、施設のスタッフや委託業者が定期的に行います。自立支援の観点から、入居者の状態によっては、介護スタッフと共に掃除・洗濯などを行うケースもあります。

くわえて日常生活を安全に送るために、身体状況に応じた身体介助が受けられます。たとえば1人で歩くのが難しい場合は「スタッフによる手引き介助」が受けられたり、立って歩くことが難しい場合は「車椅子を使用した移動介助」が受けられたりします。

食事や排泄、入浴といった場面でもサポートが受けられるため、安心・安全に生活できます。

機能訓練

特養では「理学療法士」や「作業療法士」といった専門職から機能訓練が受けられます。機能訓練は「歩行訓練」や「関節可動域訓練」などの身体機能の維持・向上を目的としたものから、レクリエーションを通じて楽しみながら行うものまでさまざまです。

施設によっては、外部の事業者に依頼して「創作活動」や「園芸」「音楽」などを通じて、楽しみながら取り組める機能訓練を実施するケースもあります。

レクリエーション・行事

娯楽として、レクリエーションや行事を実施しています。

レクリエーションでは、楽しみながら体が動かせる体操やボール運動、頭を使って脳を活性化させる脳トレやボードゲーム、手先を使う折り紙や塗り絵などを行います。

施設によっては「料理クラブ」や「園芸クラブ」「芸術クラブ」といったクラブ活動を実施しているため、共通の趣味がある入居者同士の交流の場として活用できます。

また施設ごとに、四季を感じられる行事も開催しています。春にはひな祭りやお花見、夏は七夕祭りや納涼祭、秋は敬老の日や紅葉狩り、冬はクリスマス会や新年祝賀会などを実施します。

地域の幼稚園や小学校の子どもたちとの触れ合いを大切にしている施設もあります。入居後の生活を彩る大切なポイントとなるため、気になる特養のレクリエーション・行事をチェックしてみましょう。

医療的ケア

特養は「終のすみか」とも呼ばれ、終身利用が可能な施設です。そのため、入居者の状態に応じた以下のような医療的ケアを提供しています。

  • たんの吸引
  • 胃ろう・腸ろう
  • 経鼻経管栄養
  • カテーテルの管理
  • 酸素療法
  • 人工肛門・人工膀胱の管理
  • 褥瘡(じょくそう)の処置
  • インスリン注射など

また特養は、終末期を穏やかに過ごすための「看取り」が受けられます。令和3年に日本看護協会が実施した調査によると、82.2%の特養が看取りの方針について「可能な限り施設で看取る」と回答しています。多くの特養では看取りまで対応してもらえるため、終身利用を視野に入れた入居が可能です。

参考:公益社団法人 日本看護協会「介護施設等における看護職員のあり方に関する調査研究事業報告書

費用

有料老人ホームなどと異なり、特養への入居時に初期費用は発生しません。月々かかる費用項目は以下のとおりです。

施設サービス費介護・看護サービスを受けるのに必要な費用
居住費居室を使用するのに必要な費用
食費1日3食の食事にかかる費用
日常生活費レクリエーションの材料費や理美容代など
そのほかの費用より手厚い介護を受けた場合にかかる費用

なお特養の施設サービス費は、居室のタイプによって異なります。居室のタイプは「従来型個室」「多床室」「ユニット型個室」「ユニット型個室的多少室」の4種類に分けられます。

たとえば、要介護3の方が特養の多床室を利用した場合の料金表の例は以下のとおりです。

費用項目費用(月額)注意点
施設サービス費21,360円(712円 / 日)介護度・居室タイプによって変動
居住費25,650円(855円 / 日)施設・居室タイプによって変動
食費43,350円(1,445円 / 日)施設によって変動
日常生活費施設・購入品によって変動
そのほかの費用受けるサービスによって変動

出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造

出典:厚生労働省 労働局「介護報酬改定率、多床室の室料負担、基準費用額(居住費)について(報告)

上記の場合、特養の利用に9万円程度かかる計算となります。このほかに「日常生活費」や「加算」が上乗せされることを認識しておきましょう。

入居する特養を選ぶ5つのポイント

入居する特養を選ぶ5つのポイント

特養によって特色が異なるため、実際に入居先を選ぶ際に迷うケースがあります。入居する特養を選ぶ際は、次の5つのポイントを意識して選びましょう。

  • 必要な医療的ケアが受けられるか
  • 施設の雰囲気と合うか
  • 家族が通いやすい立地か
  • 退去になる可能性はないか
  • 予算内で入居できるか

必要な医療的ケアが受けられるか

入居を検討している方が必要とする医療的ケアを、施設が提供しているかどうかをチェックしましょう。

先述したとおり、特養では幅広い医療的ケアが提供されています。ただし提供できる医療的ケアは施設によって異なるため、施設を比較するタイミングで確認しておく必要があります。

たとえば、糖尿病により「インスリン注射」や「血糖測定」が必要な方は、いずれも対応できる施設を選ぶ必要があります。たんの吸引が頻繁に必要な場合は、夜間も喀痰吸引が可能な施設でなければなりません。

特養は生活の場であるため「医師の常駐」や「看護師の夜間配置」は義務づけられていません。医療的ケアは医療職のみ対応できるため、体制によっては対応できないケアがあります。

なお、医療的ケアのなかで対応できる特養の割合が少ないのは「レスピレータ(人工呼吸器)の管理」や「透析の管理」「中心静脈栄養」「麻薬を用いた疼痛の管理」などです。

身体状況が変化して「治療」や「利用している特養で対応できない医療的ケア」が必要になった場合は「病院」や「必要な医療的ケアが受けられる施設」に移動する必要がある点に注意しましょう。

施設の雰囲気と合うか

入居する本人と施設の雰囲気が合うかどうかをチェックしましょう。

施設の雰囲気は、施設の運営方針によって差があります。入居後に後悔しないように、見学時は入居する本人が施設の雰囲気をチェックしましょう。体験利用が可能な場合は、試してみるのがおすすめです。

また特養のなかには「デイサービス」や「ショートステイ」といった介護サービスを提供している施設もあります。特にショートステイは短期間宿泊できるため、施設での生活がイメージしやすいです。

体験利用が難しい場合は介護サービスの利用を通じて施設内の雰囲気を把握し、入居する本人の「性格」や「好み」に合った特養を選びましょう。

特別養護老人ホーム「白寿荘では「特養の入居者様」と「デイサービス・ショートステイの利用者様」に対して、1つのフロアでサービスを提供しています。そのためデイサービス・ショートステイの利用を通じて、施設内の雰囲気を感じていただけます

さらに利用者様同士が交流しやすいため、横のつながりが作りやすい環境です。「入居前に特養に入居されている方と交流を深める」「入居後にデイサービスのお知り合いと交流を続ける」といったことが可能なため、特養への入居後も安心して生活していただける施設です。

家族が通いやすい立地か

先述したとおり、特養は終身利用が可能な施設です。そのため、家族が通い続けられる立地かどうかも重要なポイントです。

入居する本人の希望を重視する一方で、体調の急変時などに家族が駆けつけられる立地にあると安心です。家族が頻繁に訪れることも想定し、無理なく通える立地の特養を選びましょう

施設の立地条件は「最寄り駅からの交通手段・交通費・所要時間」や「タクシーを使用した場合の料金・所要時間」などを確認したうえで選びましょう。

退去になる可能性はないか

特養に入居する際は、契約書を取り交わします。契約書のなかに「退去要件」が明記されており、この要件に当てはまる場合は退去勧告される可能性があります。入居先を選ぶ段階で退去要件についてチェックし、納得できる施設を選びましょう。

退去要件として定められているのは、以下のような内容です。

  • 施設の利用料の支払いが滞った
  • 医療依存度が高まって対応できる範囲を超えた
  • ほかの利用者に迷惑をかけた
  • 入院期間が長期間になった

なお、入院期間には「3か月ルール」という規定があります。老人福祉法では「入院から退院までの期間が3か月以内の見込みの場合は、退院後に円滑に入所できるようにしなければならない」と定められており、この法律に基づいて3か月~6か月程度の入院を退去要件としています

予算内で入居し続けられるか

特養の利用には、月々料金が発生するため「費用を払い続けられるか」が重要なポイントです。

特養には4種類の居室タイプがあり、それぞれ料金が異なります。なかでも居住費が最も安いのは「多床室」であり、反対に最も高いのは「ユニット型個室」です。

入居する本人の希望も考慮しつつ、費用を少しでも抑えたい場合は多床室の利用も視野に入れましょう

また特養は公的施設のため、利用できる負担軽減制度が多いのが特徴です。たとえば、特養の月額費用のなかの「居住費」と「食費」の負担が軽減できる制度に「特定入所者介護サービス費」があります。

制度の対象となる場合は活用し、費用面の不安なく特養を利用しましょう

「特定入所者介護サービス費」をはじめとした特養への入居で受け取れる補助金について、こちらの記事で解説しています。費用面に不安がある方はぜひご覧ください。

特別養護老人ホーム入所で受け取れる補助金はある?空き情報の調べ方も解説

特養に関してよくある質問3つ

特養に関してよくある質問3つ

特養に関してよくある質問は次の3つです。

  • 質問1.特養にデメリットはありますか?
  • 質問2.老健・グループホームと違う部分はどこですか?
  • 質問3.認知症の場合は特養に入れますか?

質問1.特養にデメリットはありますか?

特養のデメリットは、入居待ちの期間が長い点です。入居待ちの期間は、一般的に2年~3年となっています。

2022年に厚生労働省が実施した調査によると、特養の待機者数は全国で27.5万人となっています。特養に入居する順番は申し込み順でなく、必要性の高さで各自治体が判断します。

たとえば横浜市の場合は「要介護度」や「入所者本人の希望」「主たる介護者である家族の状況」を勘案して優先順位を決定します。

複数の特養に申し込める自治体が多く、たとえば横浜市の場合は5か所まで申し込み可能です。

出典:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況

質問2.老健・グループホームと違う部分はどこですか?

特養と老健(介護老人保健施設)・グループホームの違いは以下のとおりです。

特養老健グループホーム
入居条件原則要介護3~5・要介護1~5・リハビリが必要な方・要支援2または要介護1~5・認知症と診断された方
入居期間の定めなし原則3か月なし
特徴・費用が安い・待機期間が長い・充実したリハビリが受けられる・余暇活動が少ない・認知症ケアが受けられる・医療的ケアへの対応が難しい

老健は在宅復帰を目的とした施設のため、入居期間に縛りがあります。医療的ケアやリハビリが充実している一方で、余暇活動は少ないです。

グループホームは、認知症の方が共同で生活する場です。認知症に特化したケアが受けられる一方で、看護師の配置が義務づけられていないため、医療的ケアへの対応が難しい傾向があります。

特養は「日常生活の大半に介護が必要な方向け」であり、老健は「リハビリして在宅復帰を目指す方向け」です。そして、グループホームは「認知症であって、医療的ケアが必要ない方向け」となっています。

質問3.認知症の場合は特養に入れますか?

特養は、認知症の方であっても入居が可能です。認知症の方の場合は、要件を満たせば要介護1・2でも入居できる可能性があります。

また特養では身体介助や医療的ケアに対応できるため、認知症に伴う身体状況の変化にも対応できます。

まとめ

まとめ

多くの特養があるなかで「良い特養に入居したい・入居してもらいたい」と考えるのは当然のことです。本記事で紹介した「良い特養の定義」と「入居先を選ぶ5つのポイント」を参考に、安心して生活し続けられる入居先を選びましょう

白寿荘は、横浜市泉区にある特別養護老人ホームです。「相鉄いずみ野線 いずみ野駅」から徒歩8分の場所にあるため、アクセスしやすい施設です。近隣病院と協力体制を築いており、安心して生活できる環境を整えています。

この記事を書いた人

かいごマガジン編集部

かいごマガジン編集部です。
介護の専門的な情報をどこよりもわかりやすく紹介していきます。
また、世の中の介護がどのように変化していっているのか最新の情報も随時発信していきますのでお楽しみに!
※Twitterは準備中です。