「現在の職場から転職したいが、転職しても介護管理職として働けるか不安」
「介護管理職には、どのような資格やスキル、知識が求められるか知りたい」
介護管理職として転職を検討中の方のなかには、上記のような悩みがある方もいます。
介護管理職に求められる資格は、事業所が提供する介護サービスによって異なります。たとえば、訪問介護では管理者に求められる資格要件はありません。一方で、介護老人保健施設は都道府県知事の承認を受けた医師を管理者とするのが原則です。
本記事では、介護管理職の転職に必要な資格や仕事内容を中心に解説します。介護管理職の転職におすすめの転職サイト5選も紹介するため、転職を検討している方はぜひご覧ください。
介護管理職の仕事内容

介護サービスを提供する事業所では、責任者として施設長や管理者などと呼ばれる介護管理職が配置されています。事業所によって介護管理職の名称は異なり、所長やホーム長などと呼ばれる場合もあります。事業所の管理(マネジメント)業務がおもな仕事内容で、以下のようにヒト・モノ・カネを管理します。
運営管理 | ・事業所の運営方針やサービスレベルを策定してモニタリングする ・遵守すべき法令の把握や必要な届け出への対応 ・外部への広報活動や営業活動などの実施 |
職員管理 | ・事業所で働く職員の採用や育成 ・各職員の能力や保有資格に応じた人員配置の実施 ・面談やアンケートを通じて現場の状況を把握 |
利用者管理 | ・利用者の状態と介護方針を理解し、適切な介護サービスを提供できているかを確認 ・サービス利用開始、終了時に利用者本人やご家族と面談を実施 ・サービス利用中の相談対応 |
収支管理 | ・利用者との契約や保険請求、各種経費などの収支管理 |
行政管理 | ・介護保険事業に関して変更があった場合、行政機関の介護保険担当窓口へ変更届を提出 ・介護保険事業者事故報告書や消防計画などの作成、提出 |
介護管理職の平均年収

2022年に公益財団法人 介護労働安定センターが実施した調査によると、管理者(月給)のひと月あたりの平均所定内賃金は383,228円、平均賞与は852,258円でした。よって、平均年収は約545万円となります。
介護サービス種類別の管理者の賃金・賞与は、以下のとおりです。
介護サービスの種類 | 平均賃金(ひと月あたり) | 平均賞与 |
訪問介護 | 332,148円 | 690,573円 |
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) | 455,608円 | 1,397,560円 |
介護老人保健施設 | 997,145円 | 1,368,187円 |
グループホーム(認知症対応型共同生活介護) | 319,204円 | 635,926円 |
デイサービス(通所介護) | 336,546円 | 781,386円 |
特定施設入居者生活介護(有料老人ホームやケアハウスなど) | 419,337円 | 891,115円 |
小規模多機能型居宅介護 | 316,825円 | 701,318円 |
このように介護管理職の年収は、事業所が提供する介護サービスの種類によって大きく差があります。また、法人・企業の規模や地域、勤続年数、管理職の責任範囲などによっても変動するため、あくまでも参考としてご覧ください。
介護管理職に求められるスキル・知識
介護管理職に求められるスキル・知識は、おもに以下の4つです。
- 介護全般の知識
- 行動力やリーダーシップ
- コミュニケーション能力
- マネジメント能力
介護事業所では、介護士やケアマネジャー、看護師、機能訓練員などの多職種が働いています。そのため介護管理職には、介護の基本的な知識だけでなく幅広い知識が求められます。また、運営する事業所が法令違反をしてしまうと、行政指導を受けたり介護報酬を減額されたりするケースもあります。そのため、介護サービス・介護報酬に関する知識も必要です。
また、介護事業所で働くスタッフの年齢やこれまでのキャリアなどが多様なため、強引に引っ張っていくだけでは、現場をうまくまとめられないケースもあります。管理職自ら率先して動き、模範となるような姿勢を見せることも大切です。
加えて、介護事業所で働くスタッフだけでなく、利用者様やその家族、関係機関の関係者など多くの人と接します。仕事を円滑に進めるためには、一定のコミュニケーション能力が必要です。
さらに、介護管理職は介護事業所のヒト・モノ・カネを管理します。満足度の高いサービスを提供しつつ、事業所を安定的に経営していくために、マネジメント能力が求められます。
(事業所別)介護管理職の転職で必要な資格は?

介護管理職は、サービス種別ごとに求められる資格が異なります。そのため、転職を検討している事業所で、管理職として働く資格要件を満たしているかどうかを確認することが大切です。
ここからは、介護管理職になるのに必要な資格要件を以下の事業所別に解説します。
- 訪問介護事業所
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- グループホーム
- デイサービス
- 有料老人ホーム
- 小規模多機能型居宅介護事業所
訪問介護事業所
訪問介護事業所の管理者になるのに、求められる資格要件はありません。管理者としての業務に支障がない場合、サービス提供責任者やケアマネジャーなどとの兼務が認められています。
以下の記事では、訪問介護員の仕事内容や向いている人の特徴などを解説しています。訪問介護事業所への転職を検討中の方は、ぜひご覧ください。
訪問介護員への転職は大変?働き方や1日のスケジュール例もご紹介
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームの施設長になるには、以下いずれかの要件を満たす必要があります。
- 社会福祉主事資格者
- 社会福祉事業に2年以上従事した者
- 全社協講習修了者
「社会福祉主事資格」を取得するには、大学や養成機関などで指定科目を修了する必要があります。社会福祉士や精神保健福祉士などの資格保有者は、社会福祉主事資格を保有しているものと見なされるため、新たに取得する必要はありません。
また「社会福祉事業に2年以上従事した者」は、特別養護老人ホームや養護老人ホーム、グループホームなどの社会福祉事業において、2年以上従事した方を指します。
「全社協講習修了者」は、全国社会福祉協議会が実施する「社会福祉施設長資格認定講習課程」の修了者を指します。全社協講習は誰でも受講できるわけではなく、以下の方が対象です。
- 「社会福祉施設長就任予定がおおむね5年以内」または「すでに社会福祉施設長に就任している」に該当する方で、社会福祉施設の長になるための必要な資格要件を満たしていない方
- 自治体等から受講の要請があった方
なお、特別養護老人ホームの施設長の資格要件は、自治体ごとに基準が異なる場合があります。資格を満たしていない場合、事前に確認したうえで準備を進めましょう。
参照:厚生労働省「施設長の研修義務化及び資格要件省令化について」
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設の管理者は、介護保険法第95条によって以下のように定められています。
(介護老人保健施設の管理)第 九十五条 介護老人保健施設の開設者は、都道府県知事の承認を受けた医師に当該介護老人保健施設を管理させなければならない。 2 前項の規定にかかわらず、介護老人保健施設の開設者は、都道府県知事の承認を受け、医師以外の者に当該介護老人保健施設を管理させることができる。 |
よって、都道府県知事の承認を受けた医師、あるいは都道府県知事の承認を受けた医師以外の者が介護老人保健施設の管理者になることが可能です。
なお、大分県では、医師以外の管理者の承認基準を以下としています。
老人の福祉に関し相当の知識、経験及び熱意を有し、過去の経歴等を勘案して、介護老人保健施設の管理者としてふさわしいと認められる者であって、次のいずれかの任用歴を有する者であること。 1 特別養護老人ホームの施設長 2 養護老人ホームの施設長 |
よって、未経験から介護老人保健施設の管理者になるのは難しいといえるでしょう。
グループホーム
グループホームの管理者になるには、以下の要件をいずれも満たす必要があります。
- 3年以上認知症の介護従事経験がある
- 厚生労働大臣が定める「認知症対応型サービス事業管理者研修」を修了している
上記の「認知症対応型サービス事業管理者研修」は、各都道府県や市区町村で実施しています。カリキュラムや申込方法、料金などは開催元によって異なるため、受講時は注意しましょう。
参照:厚生労働省 老健局「認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)(改定の方向性)」
デイサービス
デイサービスの管理者には、資格要件は定められていません。しかし、なかには介護福祉士をはじめとする福祉資格や、現場経験などが求められる職場もあります。なお、生活相談員や介護職員、機能訓練指導員などとの兼務も認められています。
有料老人ホーム
有料老人ホームの管理者は、デイサービスと同様に資格要件は定められていません。ただし、実務経験があったり福祉資格を保有していたりする人材を管理者とする傾向があります。
小規模多機能型居宅介護事業所
小規模多機能型居宅介護の管理者になるには、以下の要件をいずれも満たす必要があります。
- 3年以上認知症の介護従事経験がある
- 厚生労働大臣が定める「認知症対応型サービス事業管理者研修」を修了している
小規模多機能型居宅介護の管理者要件は、先述したグループホームの要件と同様です。しかし、小規模多機能型居宅介護には「本体事業所」と、本体事業所と連携して運営される「サテライト型事業所」の2種類あり、サテライト型は本体の管理者が兼務できるのが特徴です。
参照:厚生労働省 老健局「小規模多機能型居宅介護(改定の方向性)」
介護管理職の転職におすすめの転職サイト5選
ここからは、介護管理職への転職におすすめの転職サイトを紹介します。
レバウェル介護(旧:きらケア)
レバウェル介護は、管理職求人だけでなく、管理職候補の求人も検索できる転職エージェントです。キャリアアドバイザーによる転職サポートが受けられるだけでなく、管理職として働くにあたって気になる職場の雰囲気や有給消化率なども共有してもらえます。
管理職求人数は約2,000件と、転職エージェントのなかでも多いのが特徴です。転職後の給与や人間関係の悩み、今後のキャリアなども相談できます。
総求人数 | 125,187件(2025年8月16日時点) |
管理職求人数 | 2,048件(2025年8月16日時点) |
公式サイト | レバウェル介護 |
マイナビ介護職
マイナビ介護職は、管理職求人でも「管理者」「施設長」「サービス管理責任者」など細分化して検索できる転職エージェントです。人材関連ビジネスを40年以上展開してきたマイナビグループが運営しています。
取り扱っている求人の40%以上が非公開求人で、希望に応じてキャリアアドバイザーから最適な求人を紹介してもらえます。電話やLINE、SMSなど複数の連絡方法から選べるため、忙しくても担当者と連携して転職活動を進められるでしょう。
総求人数 | 公開求人数:90,181件(2025年8月16日時点) |
管理職求人数 | 1,591件(2025年8月16日時点) |
公式サイト | マイナビ介護職 |
ジョブメドレー
ジョブメドレーは、豊富な検索軸で希望にマッチした求人が探しやすい転職サイトです。たとえば、給与・待遇・福利厚生の特徴では「寮あり・社宅あり」や「託児所・保育支援あり」、勤務時間の特徴では「時差出勤導入」や「残業月20時間以内」などの求人を探せます。
また、プロフィールを登録しておくと事業所からスカウトが届き、スカウト経由での内定率は1.7倍と、通常の応募と比べて高いのも特徴です。応募すると事業所に直接応募内容が届き、スピーディーにやり取りできます。
総求人数(介護分野) | 260,275件(2025年8月16日時点) |
管理職求人数 | 3,812件(2025年8月16日時点) |
公式サイト | ジョブメドレー |
リジョブケア
リジョブケアは、管理職として働くうえで気になる事業所の価値観まで把握できる転職サイトです。求人情報に各事業所の「夢・想い」や「こだわり・自慢」などの項目があるため、管理職として働くのに自分の価値観に近いか確認したうえで応募できます。
また「ガイドヘルパー」や「介護タクシー・送迎ドライバー」など30種類以上の職種の求人を扱っているため、管理職以外への転職も検討している方におすすめです。
総求人数 | 29,500件(2025年8月16日時点) |
管理職求人数 | 785件(2025年8月16日時点) |
公式サイト | リジョブケア |
ウェルミージョブ(旧カイゴジョブ)
ウェルミージョブは、管理者・施設長・ホーム長の求人数が7,000件以上と、転職エージェント・転職サイトのなかでも管理職の求人数が特に多いサイトです。メールやLINEなどを登録しておくと、最新の求人情報やスカウトを受け取れます。
検索条件には「オープニングスタッフ」や「定員10名以下」「土日祝定休」などがあり、介護・福祉業界ならではのこだわり条件で求人を探せます。同じ施設の求人をまとめて確認できるため、複数の職種を比べたうえで応募したい方にもおすすめです。
総求人数 | 245,176件(2025年8月16日時点) |
管理職求人数 | 7,685件(2025年8月16日時点) |
公式サイト | ウェルミージョブ |
以下の記事では、介護福祉士におすすめの転職サイト10選を紹介しています。転職サイト以外で求人を探す方法も解説しているため、ぜひあわせてご覧ください。
介護管理職の転職についてよくある質問

介護管理職の転職についてよくある質問は、以下の3つです。
- 質問1.介護管理職によくある悩みは?
- 質問2.施設長と管理者の違いは?
- 質問3.介護職は何歳まで働けますか?
質問1.介護管理職によくある悩みは?
介護管理職は、以下のような悩みを抱える傾向があります。
- 業務量が多すぎる
- 部下に指示を聞き入れてもらえない
- 新人育成が思うように進まない
介護管理職は多岐にわたる業務を抱えるため、業務量の多さに悩まされがちです。利用者対応や人員配置、経費管理など事務作業だけでなく、現場フォローも求められるため、結果的に残業が増えることも少なくありません。
また、経験や保有資格が異なる部下へ指示を出しても、これまでのやり方を押し通す人もおり、思うように指示が通らないこともあります。
さらに、新人育成では配属先の判断や指導がうまくいかず、早期退職につながるケースがあります。そのため、自責の念を抱えて悩む管理職も少なくありません。
質問2.施設長と管理者の違いは?
施設長と管理者に明確な定義・基準はなく、明確な違いはありません。運営法人の考え方によって役職の名前が異なるため、施設長と管理者を兼務しているケースや、どちらかしか配置されていないケースもあります。
質問3.介護職は何歳まで働けますか?
介護職に年齢制限はなく、60歳以上でも働くことが可能です。ただし、定年を設けている事業所もあるため、60歳以降も正社員として働き続けたい場合は、定年の有無・年齢などを確認したうえで転職先を選びましょう。
以下の記事では、介護職に転職できる年齢をさらに詳しく解説しています。シニア世代の転職先の選び方も紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。
介護職に転職できる年齢は何歳まで?シニア世代の転職先の選び方も解説
まとめ

介護管理職は、事業所が提供する介護サービスによって求められる資格要件が異なります。どの職場でも管理者として働けるわけではないため、応募要件を満たしているかどうかを確認したうえで、転職を決断しましょう。
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