介護業界での転職におすすめな時期は?退職の意向を伝える時期・円満退職のポイントも解説

介護業界での転職におすすめな時期は?退職の意向を伝える時期・円満退職のポイントも解説

「好条件の求人が多い時期に転職活動を始めたいが、いつがよいのかわからない」

「転職先が決まったとしても、現在の職場を円満に退職できるかどうか不安」

転職を検討している介護職の方のなかには、上記のような悩みがある方も多いのではないでしょうか。

介護業界での転職は、転職する方本人の希望によって適した時期が異なります。そのため、転職での希望を明確にしたうえで、転職する時期を決めるのがおすすめです。

そこで本記事では、転職に適した時期を「豊富な求人から転職先を探したい」「入職時に指導を受けられる環境で働きたい」といった希望別に解説します。現在の職場を円満退職するポイントも紹介しているため、転職活動をスムーズに成功させたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

介護業界での転職に最適な時期は希望によって異なる

介護業界での転職に適した時期は、転職する本人の希望によって異なります。ここでは、以下の希望別に転職に適した時期を解説します。

  • 豊富な求人から転職先を探したい
  • ボーナスを受け取ってから転職したい
  • 入職時に指導を受けられる環境で働きたい

豊富な求人から転職先を探したい

多くの求人から自分に適した転職先を選びたい場合、4~6月に転職活動を始めるのがおすすめです。介護業界の求人は年間を通して多いものの、4〜6月は有効求人倍率が特に高くなる時期です。

社会福祉法人 全国社会福祉協議会 中央福祉人材センターが発表した「令和4年度 福祉分野の求人求職動向」によると、4〜6月の有効求人倍率は4.26倍~4.48倍と、ほかの月と比べて高い傾向にあります。

有効求人倍率とは、求職者1人に対して何人分の求人があるかを示す数値で、基準は1倍です。1倍を上回っている場合、人材の需要が高いことを意味するため、転職者側からすると以下のようなメリットがあります。

  • 応募できる求人の選択肢が増える
  • 売り手市場のため待遇面の交渉がしやすい
  • 新たな職種にチャレンジできる可能性がある

有効求人倍率が高ければ、応募できる求人数が多くなり、自分の希望に合った職場を見つけやすくなります。また、売り手市場になるため、待遇面での交渉もしやすくなるでしょう。さらに、即戦力の人材の採用が難しくなるため、職種未経験でも採用される可能性が高まります。そのため、新たな職種にチャレンジする機会を得られます。

このように、幅広い選択肢から理想の職場を見つけたい方にとって、求人倍率が高い4〜6月は転職に適した時期だといえるでしょう。

参照:福祉のお仕事「令和4年度統計(福祉人材センター・バンク 職業紹介実績報告 年間調査結果)

ボーナスを受け取ってから転職したい

ボーナスを受け取ってから転職したい場合、夏季と年末年始のボーナス支給後である8月と1月での転職がおすすめです。介護業界では、6・7月と12月にボーナスが支給されるのが一般的です。そのため、支給後のタイミングに転職することで、現在の職場でのボーナスを確実に手にすることが可能です。

また、ボーナス支給後は同様の理由で転職する方が多く、欠員が出やすい時期でもあります。そのため、求人数が増加し、転職しやすくなることも考えられます。

ただし、就業規則にボーナスの支給対象として「〇月〇日に在籍している人を対象に賞与を支給する」と規定されているケースがあります。この場合、基準日に現在の職場に在籍していなければ、ボーナスを受け取れない可能性があるため注意が必要です。職場のボーナス支給時期や条件は、事前に確認しておきましょう。

入職時に指導を受けられる環境で働きたい

介護業界で働くなかで、新しい分野のスキルを身につけるために十分に指導を受けられる環境で働きたい場合、1月〜3月の転職がおすすめです。たとえば、「これまでデイサービスで働いていたが、特養で身体介助のスキルを高めたい」「施設勤務の経験はあるが、訪問介護で知見を広げたい」といったケースです。

1月~3月は新卒者の入社前にあたるため、教育に時間を割いてもらえる可能性が高まります。また、12月の賞与後に退職する職員が増え、施設の人員不足が生じやすくなるのもこの時期の特徴です。加えて施設側は、年度内予算を使い切るべく採用活動を活発化させるため、求人情報も増加傾向にあります。

自己成長を目的とした転職の場合、1月〜3月に転職すれば、じっくりと教育を受けながらスキルアップを目指せるでしょう。ただし、教育体制は職場によって異なるため、面接時に入職時のOJTの有無をはじめとする情報を確認しておくことも大切です。

介護職が転職活動を始める時期の判断ポイント4つ

介護業界は年間を通じて求人が豊富にあることから、いつでも転職しやすい傾向があります。ただし、転職を成功させるには、思いつきで転職活動を始めずに「いまの状態で転職活動を始めるべきか」を一度立ち止まって考えるべきです。

介護職が転職活動を始める時期は、以下のポイントを参考にして判断しましょう。

  • 基本的な介護技術は身についているか
  • 転職活動と現在の仕事を両立できるか
  • 転職活動に集中できる状況か
  • 身体的・精神的に不調はないか

基本的な介護技術は身についているか

現在の職場で習得できる介護技術に関して、習得できているかどうかを確認しましょう。入職時のOJTや研修などを実施する職場もあるものの、人手不足が深刻化している職場では、入職者への教育体制が整っていないケースもあります。

なかでも、移乗介助やおむつ交換などの身体介助は、サービス形態によって携われる機会に大きな差があります。身体介助の機会そのものが減少してしまえば、スキルを伸ばすチャンスも少なくなってしまうでしょう。

そのため、現在身体介助を行う機会が多い特養(特別養護老人ホーム)をはじめとする施設で働いている方は、基本的な介護技術が身についているかを振り返り、新たな環境でも対応できるかどうかを立ち止まって考えてみましょう。

以下の記事では、介護福祉士が働く職場の仕事内容を紹介しています。特養や老健、デイサービス、訪問介護事業所、病院など、幅広い職場の仕事内容を1日のスケジュールも交えて解説しているため、ぜひあわせてご覧ください。

参考記事:介護福祉士の仕事内容を職場ごとに徹底解説!介護士との違い・1日のスケジュールまで紹介

転職活動と現在の仕事を両立できるか

働きながら転職活動を進める場合、収入が途切れないというメリットがある一方で、転職活動に時間や労力がかかります。面接は平日に行われるケースが多いため、特にデイサービスや訪問介護など土日休みの多い職場で働いている方は、日程調整に苦労する可能性があります。

また、退職日と転職先の就業日が重ならないよう、現在の職場・転職先の新たな職場両方との調整が必要になります。しかし、在職中に転職先を決めることができれば、退職後すぐに新しい職場で働けます。金銭面の不安なく、精神的にゆとりを持って取り組める点はメリットです。

転職活動に集中できる状況か

退職後に求職活動を行う場合、生活費や今後の生活に対する不安から、転職活動に集中できない可能性があります。焦りから妥協して転職先を決めてしまうと、後悔するリスクもあるため、仕事を辞めてから転職活動をする場合は、求職中の生活費を確保したうえで退職しましょう。

具体的には、現在の貯金額や支給予定の退職金などをもとに、当面の生活費が賄えるかどうかを確認します。また、離職前2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月以上ある方は、原則として失業手当の支給対象となります。ただし、自己都合退職では支給開始まで2か月~3か月かかるため、最低でもその分の生活費が必要な点を認識しておきましょう。

参照:厚生労働省|Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~について紹介しています。

身体的・精神的に不調はないか

現在の仕事が原因で身体的・精神的に不調をきたしている場合は、転職活動よりも療養を優先すべきです。介護業界は慢性的な人手不足のため、職場の状況に配慮して退職時期を先送りすると、心身の不調がさらに悪化する恐れがあります。早めに退職することで負担を軽減できるでしょう。

仕事が原因で心身に症状が出る場合「特定理由離職者」として国に認められるケースがあり、自己都合退職者とは扱いが異なります。特定理由離職者として認められれば、受給資格が決定してから約1か月程度で失業手当が振り込まれます。

ただし、該当するかどうかはハローワークが判断するため、特定理由離職者の範囲と判断基準については、お住まいの地域を管轄するハローワークに問い合わせることをおすすめします。

現在の職場に退職の意向を伝える時期は?

退職の意向は、2〜3か月前に伝えるのが一般的です。ただし、就業規則に記載がある場合は職場の規定に従いましょう。

新たな人員の確保や教育には時間がかかるため、新人が1人で業務をこなせるまでの期間、人員が減ると、業務が滞るリスクがあることが理由です。また、新しい担当者への業務内容の引き継ぎも必要です。

すぐに退職すべきケースもある

現在働いている職場が以下のいずれかに該当する場合、すぐにでも退職を検討すべきです。

  • 残業代が支払われない
  • パワハラやセクハラなどがある
  • 無資格者の医療行為がある
  • 虐待と思わしき事例がある

職場環境が悪く、自身の身体的・精神的健康に影響を及ぼす場合は、退職を視野に入れたうえで適切な機関に相談すべきです。たとえば「残業代が支払われない」といったケースは、労働基準法違反に該当する可能性があります。この場合、労働基準監督署や労働局に設置されている総合労働相談センターへ相談する方法があります。

また、パワハラやセクハラがある場合、上司や社内の相談窓口に相談しましょう。しかし、適切に対応してもらえないケースもあるため、この場合は「総合労働相談センターや、厚生労働省が設置する窓口などに相談する」といった対応や、環境を変えることを第一に考え、転職活動する方法もあります。

さらに、無資格者に医療行為を強要する例もあります。介護職員ができる範囲を理解し、医療行為に該当する行為を指示された場合は、上司や管理者などに相談しましょう。改善が見込めない場合は、早めに退職を検討し、自身の身を守ることが賢明です。

ほかにも、職場内が虐待を助長する環境になってしまっているケースもあります。介護施設での利用者への虐待行為は増加傾向にあり、厚生労働省の調査によると、令和4年度の介護施設職員による高齢者虐待の件数は856件に上りました。前年度より117件増加しており、相談・通報件数も405件増加した2,795件となっています。

このような環境下では、自分自身の精神的負担が増加したり、トラブルに巻き込まれたりする可能性があります。環境が改善されない場合、早めの退職を検討するのが望ましいでしょう。

参照:厚生労働省|令和4年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」

現在の職場を円満退職する3つのポイント

現在働いている職場を円満退職するポイントは、以下の3つです。

  • 退職の意思を明確に示す
  • 退職前に仕事の引継ぎを行う
  • 人手不足の時期の退職はなるべく避ける

退職の意思を明確に示す

円満退職のためには、退職の意思を明確に示すことが重要です。「退職の相談をさせてほしい」といったニュアンスで伝えると引き止められる可能性があるため、退職の意思が固い場合は「○月で退職したいので、引き継ぎに関して相談のお時間をいただけますでしょうか」というように伝えるのが効果的です。

また、退職の意思表示は「退職願」ではなく「退職届」を提出しましょう。退職願は、退職に使用者の承諾が必要と解釈される可能性がある一方で、退職届であれば使用者の承諾は不要です。なかには、退職届について「退職希望日の〇か月前に提出する」「直属の上司に提出する」などと就業規則で規定されているケースもあります。円満に退職するには、就業規則を事前に確認したうえで物事を進めましょう。

退職前に仕事の引継ぎを行う

円満退職のためには、最終出勤日までに余裕を持って引継ぎを済ませましょう。自分が持っている名刺や資料を整理し「担当業務をリストアップする」「マニュアルを作成する」といった方法で、スムーズに引継ぎを進められるように準備しましょう。業務に使用するパソコン上のファイルやデータを整理しておくことも重要です。

また、後任者に直接業務を引き継げる場合は、伴走して見守ることで、円滑な業務移行を実現できるでしょう。引継ぎ作業と並行して、業務に関わった人々に感謝の気持ちを伝えることも大切です。

人手不足の時期の退職はなるべく避ける

円満退職のためには、人手不足の時期や繁忙期の退職は避けましょう。人手が減るとほかの職員の負担が増えるため、忙しい時期に退職の相談をすると引き止められる可能性があります。

ただし、介護業界では通年人手不足の職場もあり、新しい人の採用を待つと退職のタイミングを逃す恐れがあります。慢性的な人手不足の場合は、退職予定の2~3か月前に退職の意思を伝えるようにしましょう。労働者には退職の自由があるものの、波風を立たせたくない場合は落ち着いている時期に転職するのがよいでしょう。

介護職が転職で後悔する6つの原因

介護職が転職で後悔する原因は、おもに以下の6つが挙げられます。

  • 転職先の仕事内容を理解しないまま選んだ
  • 待遇面だけで選んだ
  • キャリアプランを計画せずに選んだ
  • 漠然と介護業界での転職を決めた
  • 希望条件の優先順位を決めずに選んだ
  • 複数の職場を比較せずに選んだ

以下の記事で、さらに詳しく掘り下げて解説しています。具体的な転職失敗事例や転職を成功させるコツも紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。

参考記事:介護転職で後悔する原因は?成功させる5つのコツ・希望別の転職先の選び方も解説

まとめ

介護職の転職に適した時期は「豊富な求人から転職先を探したい」「ボーナスを受け取ってから転職したい」「入職時に指導を受けられる環境で働きたい」といった希望によって異なります。ただし、現在働いている環境や個人のスキルによっても、転職活動を始めるべき時期は異なります。

本記事で紹介した転職活動を始める時期の判断ポイントを参考に、自分がいつ転職すべきかを判断しましょう。

この記事を書いた人

かいごマガジン編集部

かいごマガジン編集部です。
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