特別養護老人ホーム3種類を一覧比較!希望別の選び方・住所地特例制度も解説

特別養護老人ホーム3種類を一覧比較!希望別の選び方・住所地特例制度も解説

「特別養護老人ホームの種類ごとの違いがわからず、どの施設に申し込めばよいか迷っている」
「最適な特別養護老人ホームの選び方がわからない」

特別養護老人ホームへの入居を検討されている方のなかには、上記のような悩みがある方も多いのではないでしょうか。

特別養護老人ホーム(特養)には、広域型・地域密着型・地域サポート型の3種類あります。それぞれ対象者やサービス内容などが異なるため、理解したうえで利用先を選ぶことで、入居後も後悔せずに生活できます。

そこで、今回は「特別養護老人ホームの種類」と「利用先の選び方」を中心に解説します。特養の種類ごとの特徴を知ったうえで利用先が選べる内容のため、ぜひご覧ください。

特別養護老人ホーム(特養)は3種類ある

チェックシートと車椅子に座る高齢者

特別養護老人ホームは、大きく分けて「広域型」「地域密着型」「地域サポート型」の3種類あります。それぞれ利用条件や環境、定員数などが異なるため、希望に合った特養を選ぶことが大切です。

以下の表は、各施設の特徴を比較したものです。


広域型
地域密着型
地域サポート型
サテライト型単独型
利用条件
居住地制限なく
入居可能

施設がある市区町村に住んでいる方
・65歳以上で在宅介護を受けている高齢者
・介護認定を受けていないが支援を希望する高齢者
定員30人以上29人以下
サービス内容食事・排泄・入浴などの介助
レクリエーション・機能訓練など
見守りや援助
特徴・一般的なタイプ
・遠方からの入居も可能
・本体施設と連携
・人員、施設基準が緩和
・本体施設なし
・少人数で家庭的
・在宅の高齢者が対象
・サービス提供地域が限定的

それぞれの施設について詳しく解説します。

広域型

広域型は最も一般的な種類であり、全国の特養の大半を占めている施設です。令和5年時点の施設数は8,494か所に上ります。

広域型の最大の特徴は、入居条件に居住地の制限がない点です。現在暮らしている市区町村と施設の所在地が異なっていても入居可能なため、遠方にある施設も入居先の選択肢として検討できます。

また、広域型の入所定員は30名以上と規定されています。大規模な施設が多く、ほかの特養の種類と同様に医師や看護師、ケアマネジャー、機能訓練員などの専門職が配置されています。

参考:厚生労働省「令和4年介護サービス施設・事業所調査の概況

地域密着型

地域密着型特養は、2006年の介護保険法改正により創設された小規模な特養です。施設と同じ市区町村に住む要介護3以上の方のみが入居でき、定員は29人以下となっています。令和5年時点の施設数は2,502か所と、広域型と比べると数が少ない特養です。

地域密着型は、本体施設の有無によって「サテライト型」と「単独型」の2種類に分けられます。

参考:厚生労働省「令和4年介護サービス施設・事業所調査の概況

サテライト型

サテライト型は本体施設と密接に連携しながら、別の場所で運営される地域密着型特養です。本体施設からおおむね20分以内の距離に位置しており、人員配置基準や設備基準が緩和されています。

たとえば、本体施設が特養の場合「医師や栄養士、ケアマネジャーなどの配置義務がない」「簡易的な調理設備を調理室の代わりに設置する」などにより、施設運営が認められています。

本体施設からバックアップを受けられるため、サービスの質を維持しながらも、効率的な運営が可能となっています。なお、本体施設として認められるのは、広域型の特養・単独型の特養・介護老人保健施設・病院・診療所のみです。

単独型

単独型はサテライト型と異なり、本体施設がない地域密着型特養です。定員29名以下の小規模な施設ながら、広域型特養と同等の設備やサービスを独自に提供しています。

単独型の多くは、個室とリビングを備えた「ユニット型」の居室タイプになっており、少人数でアットホームな雰囲気の中で生活できるのが魅力です。

また、ショートステイやデイサービス、小規模多機能型居宅介護などを併設している施設が多く、ニーズに応じて利用可能な施設です。

地域サポート型

地域サポート型は、在宅で介護を受けている高齢者を対象に、24時間体制で見守りや生活支援を行います。要介護認定を受けていて生活に不安がある方や、要介護認定は受けていないものの見守りや援助などを希望する65歳以上の方が対象です。

地域サポート型が提供するサービスは、生活援助員による日中の巡回訪問や、看護師による夜間の相談対応や緊急時の対応などがあります。また、在宅介護者の悩みに関する相談にも応じるため、在宅介護を続けるために活用できるサービスです。

ただし、地域サポート型特養の数は全国的にまだ少なく、サービスを受けられる地域が限られています。地域サポート型の設置に積極的な兵庫県であっても、令和5年時点で80施設程度にとどまっています。サービスを利用したい場合は施設との契約が必要であり、対象地域に住んでいるかどうかの確認も必要です。

【希望別】利用する特別養護老人ホームの選び方

説明する若い女性と説明を受ける高齢夫婦

利用先の特養を選ぶ際は、本人や家族のニーズに合わせて、広域型・地域密着型・地域サポート型のいずれかを選択することが大切です。ここでは、以下の希望別におすすめの特養の種類を紹介します。

  • とにかく早く入居したい
  • アットホームな環境で生活したい
  • 自宅で生活を続けたい

とにかく早く入居したい

特養に早く入居したいと希望する方の場合、施設数が多い広域型の特養が適しています。広域型は、居住地に関係なく入居申し込みが可能です。つまり、自分の住んでいる地域以外の特養にも申し込めるため、入居までの待機期間を短縮できる可能性があります。

ただし、住み慣れた地域から遠方の特養に入居した場合、家族や友人と交流しにくくなる可能性がある点に注意しましょう。

アットホームな環境で生活したい

少人数でアットホームな雰囲気の中で生活したい方には、地域密着型の単独型特養の検討をおすすめします。単独型は定員が29名以下の小規模な施設であり、ユニット型の居室タイプが多いため、家庭的な雰囲気を感じられます。

また、同じ地域の方が入居するため、地域とのつながりを維持しやすい点もメリットです。ただし、施設のある地域に住民票がある方しか入居できないため、注意が必要です。

自宅で生活を続けたい

できる限り自宅で生活を続けたいと考える方は、地域サポート型特養の利用を検討してみましょう。地域サポート型は、在宅の高齢者を対象に、24時間年中無休の見守り体制を提供しています。特に1人暮らしの方や日中独居の方、高齢夫婦世帯の方にとって、心強い支援となるでしょう。

ただし、現時点では地域サポート型特養を実施している地域は限られています。まずは、自分の住んでいる地域で利用可能かどうかを確認しましょう。

広域型特別養護老人ホームは住所地特例が利用できる

笑顔でエプロン姿の女性

広域型の特養を利用する場合「住所地特例」という制度が利用可能です。住所地特例は、被保険者が広域型の特養や介護老人保健施設(老健)などに入居する方が施設所在地に住所を変更した場合、元の市区町村の保険者として扱う制度です。

この制度は、施設への入所に伴って住所を異動した人を一律に施設所在地の市区町村の被保険者にした場合、特定の自治体の負担が増えることが背景となって設けられました。

たとえば、A市からBさんという入所者をC町が受け入れると、受け入れたC町はBさんから介護保険料を受け取っていないにもかかわらず、介護サービスに関わる費用を負担しなければなりません。

すると、施設が多い市区町村に財政負担が集中してしまうため、財政上の不均衡を是正するために住所地特例が設けられています。

ここでは、住所地特例を利用するメリット・デメリットを解説します。

利用するメリット

特養に入居する方が住所地特例を利用するメリットは、以下の2つです。

  • 介護保険料が安くなる可能性がある
  • 郵便物が本人に直接届く

地域によって介護保険料が異なるため、施設所在地の保険料が安い場合は費用負担を軽減できます。ただし必ず安くなるとは限らないため、事前に確認が必要です。

また、被保険者が暮らす施設に郵便物が直接届きます。重要な書類の見落としを防げるほか、家族が郵便物を転送したり、持参する手間が省けます。

利用するデメリット

特養に入居する方が住所地特例を利用するデメリットは、以下の2点です。

  • 住所変更の手間がかかる
  • プライバシー面に不安がある

住所地特例を利用すると、住民票の異動に伴う各種手続きが必要になります。役所での手続きだけでなく、国民健康保険やクレジットカード、銀行口座などの住所変更手続きが発生します。これらの手続きは家族の負担になる可能性があるため、必要な手続きを考慮したうえで住所地特例の利用を検討しましょう。

また、本人宛の郵便物はすべて施設に届くため、本人より前に施設関係者の目に留まります。個人情報の取り扱いは厳重に行われているものの、気になる方は郵便物の取り扱いについて、入居先の施設に確認しておきましょう。

特別養護老人ホームの部屋は4種類

窓辺に置いてある車椅子

特養で利用できる部屋の種類は、従来型個室・多床室・ユニット型個室・ユニット型個室的多床室の4種類あります。各部屋タイプの特徴やメリット・デメリットを解説します。

従来型個室

従来型個室は、1人で1つの部屋を利用するタイプです。以前は個室と呼ばれていたものの、ユニット型個室の登場によって従来型個室と呼ばれるようになりました。

ユニット型個室よりも安価で利用でき、プライバシーを重視する方に適しています。ただし、共有スペースまでの移動距離が長いため、入居者同士が交流しにくい点がデメリットです。

多床室

多床室は、1部屋に2〜4人が入居する相部屋タイプです。4つの居室タイプのなかで最も費用を抑えられるうえ、同室者との交流が自然と生まれるため、孤独感の解消にもつながる点がメリットです。

個人スペースはカーテンやパーテーションで仕切られるため、プライバシーの確保は難しい面もあります。

ユニット型個室

ユニット型個室は、1人で1つの部屋を使用するタイプです。1つのユニットは10人以下の少人数で構成されるため、家庭的な雰囲気のなかで生活できます。また居室はプライバシーが確保された完全個室のため、1人の時間も大切にできる点がメリットです。

ただし、ユニット内の人間関係が良好でない場合、居心地の悪さを感じる可能性がある点に注意が必要です。

ユニット型個室的多床室

ユニット型個室的多床室は、多床室を個室化したようなタイプの居室です。パーテーションや簡易的な壁で仕切られているため、完全な個室ではないものの、一定のプライバシーが確保できます。

ただし、令和3年年4月以降は新設が禁止されているため、既存の施設でのみ利用可能です。

以下の記事では、居室の種類ごとの費用目安を解説しています。特養の利用でかかる月額費用も紹介しているため、費用面が気になる方はぜひご覧ください。

参考記事:特別養護老人ホーム(特養)における入居費用の仕組みとは?居室タイプ別の費用目安も紹介

高齢者が利用できる施設一覧

笑顔で若い女性と話す高齢女性

高齢者が利用できる施設には、特養をはじめとした「公的施設」と、有料老人ホームをはじめとした「民間施設」の2種類あります。それぞれの施設を一覧で紹介します。

公的施設

おもな公的施設は以下の5つです。

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院
  • 軽費老人ホーム
  • 養護老人ホーム

公的施設は国や自治体によって運営されており、民間施設と比べると安く利用できます。よって人気も高く、入居までの待機期間が長い施設もあります。在宅での生活が難しい方を優先的に受け入れており、入居条件が厳しい施設もあります。

各公的施設の概要や入居条件などは、以下の記事で詳しく解説しています。希望条件ごとに施設の選び方も紹介しているため、入居先選びに迷っている方はぜひご覧ください。

参考記事:高齢者施設にはどんな種類があるの?特徴から選び方まで解説します!

民間施設

おもな民間施設は以下の4つです。

  • 有料老人ホーム
  • グループホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅
  • シニア向け分譲マンション

民間会社はおもに株式会社によって運営されており、公的施設と比べると利用料金が高い傾向があります。しかし、各会社ごとの特色を活かしたサービスを提供しており、介護以外のサービスが充実している点が魅力です。

各民間施設の概要・入居条件などは、以下の記事で詳しく解説しています。高齢者施設選びのポイントも紹介しているため、民間施設も含めて検討したい方はぜひご覧ください。

参考記事:高齢者施設にはどんな種類があるの?特徴から選び方まで解説します!

特別養護老人ホームに入居するメリット・デメリット

ソファーに座る高齢女性と寄り添うエプロン姿の女性

高齢者が入居できる施設には、さまざまな種類があります。そのなかで、特養に入居するメリットは以下の3点が挙げられます。

  • 24時間365日、介護職員による介護が受けられる
  • 看取りまで対応している
  • 比較的費用を抑えて利用できる

一方で、特養に入居するデメリットは以下の3点です。

  • 入居を断られるケースがある
  • 受けられる医療的ケアに限りがある
  • 退去を求められるケースがある

以上のメリット・デメリットを踏まえて入居先を選ぶことで、入居する本人だけでなく家族も安心して生活できるでしょう。

以下の記事では、特養に入居するメリット・デメリットをさらに詳しく紹介しています。デメリットごとの具体的な対処法も解説しているため、特養への入居を検討している方は併せてご覧ください。

参考記事:特養の6つのデメリットと対処法を解説!居室タイプごとの特徴も紹介

まとめ

男性ヘルパーと車椅子に座る高齢男性

特養には、広域型・地域密着型・地域サポート型の3種類あり、それぞれ利用条件やサービス内容、特徴が異なります。本記事で紹介した希望別の選び方を参考に、入居する本人に最適な特養を選びましょう。

白寿荘は、横浜市泉区にある特別養護老人ホームです。相鉄いずみ野線 いずみ野駅から徒歩8分の場所にあるため、アクセスしやすい施設です。横浜いずみ台病院・湘南泉病院と協力体制を築いており、安心して生活していただける環境を整えています。

この記事を書いた人

かいごマガジン編集部

かいごマガジン編集部です。
介護の専門的な情報をどこよりもわかりやすく紹介していきます。
また、世の中の介護がどのように変化していっているのか最新の情報も随時発信していきますのでお楽しみに!
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