ワンオペ介護とは?現状、辛さを感じる要因、解決策について紹介

ワンオペ介護とは?現状、辛さを感じる要因、解決策について紹介

ワンオペ介護は、介護に関する作業をすべて1人でこなしている状態です。

介護者には身体的・精神的負担をはじめとした、さまざまな影響を及ぼします。ワンオペ介護の負担を軽くするには「介護サービスの活用」「地域ボランティア・ネットワークの活用」「家族・友人との連携」が必要です。

本記事では、ワンオペ介護の課題とその解決策を中心に解説します。

ワンオペ介護とは?

ワンオペ介護とは?

ワンオペ介護とは、介護にまつわるすべての作業を1人でこなしている状態を指します。

在宅介護では、家族や親族をワンオペ介護するケースがあります。被介護者は、病気やけが、老化、認知症といった要因でサポートが必要になるため、場合によっては昼夜問わず介護しなければなりません。

「夜中にトイレ介助が必要」「被介護者の状態に合わせた介護食の用意が必要」といった状況であれば、介護者は十分に休めません。仕事や家事、育児といった介護者の生活と両立する必要があるため、ワンオペ介護の負担は大きいです。

少子高齢化によりワンオペ介護は増える

日本において、少子高齢化が深刻化しています。1人の高齢者を支える15歳~64歳の人口は、2045年には1.4人となる見込みです。このような背景から、在宅におけるワンオペ介護は増加すると予測されています。

1人っ子や独身の場合、両親の介護の負担が1人の介護者に集中します。きょうだいがいる場合でも「居住地が離れている」「仕事が忙しい」といった状況であれば、協力して介護するのは難しい環境です。

参考:公益財団法人 生命保険文化センター少子高齢化はどれくらい進むの?

ワンオペ介護の課題と影響

ワンオペ介護の課題と影響

ワンオペ介護には、次のような課題があります。

身体的な負担

ワンオペ介護では必要な介助をすべて1人で担うため、介護者に身体的な負担がかかります。

被介護者の身体状況に応じて、トイレ介助やおむつ交換、入浴介助、歩行介助、車椅子への移乗といった介助をおこないます。

複数の介護者がいれば、介助の協力・分担をすることができます。しかし、ワンオペ介護ではすべて1人でおこなうため、腰痛や肩こりといった不調に悩まされるケースが多いです。

身体の不調を防ぐには「十分に休息をとる」「身体介助をヘルパーに手伝ってもらう」といった対処法が有効です。

精神的な負担

ワンオペ介護は、悩みやストレスを抱えやすい傾向があります。外出や人に会うといった機会が減り、1人で抱え込んでしまうことが原因です。

ワンオペ介護は、被介護者と1対1で接します。被介護者の状態によっては「夜間も眠らずに活動する」「暴力・暴言がある」といった行動があるため、精神的に大きな負担がかかります。

またストレスを放置すると「介護うつ」や「虐待」といった問題を引き起こす可能性があります。

介護うつには、食欲不振、睡眠障害、疲労感といった症状があります。介護うつを予防するには「相談相手を作る」「ストレスを自覚して発散する」といった対処法が有効です。

また身体的・心理的な虐待やネグレクトといった虐待につながる恐れもあります。虐待は、介護者の介護疲れ、知識・技術不足、心身の不調といった原因で起こります。

「介護負担が大きい」と感じたら、市区町村の窓口や地域包括支援センター、ケアマネジャーに相談し、適切な支援を受けましょう。

家族関係への影響

ワンオペ介護は1人に負担が集中するため、家族関係に影響を及ぼす可能性があります。

ワンオペ介護は、睡眠時間やプライベートを削って介護に費やします。すると「家族と過ごす時間が取れない」「家族間のコミュニケーション不足」といった要因により、家族間の結束力・サポート体制が弱まる可能性があります。

家族関係を良好に保つには「介護の情報を共有する」「介護サービスを利用して時間を確保する」といった対処法が有効です。

経済的な問題

ワンオペ介護は1人で介護を担うため、一時的な退職や休職を余儀なくされます。収入源を確保できなくなるため、経済的な問題が起こりやすくなります。

また介護サービスを利用する場合、利用料が必要になります。経済的に厳しければサービスを十分に活用できず、介護負担が軽減できなくなる可能性があります。

介護休業・介護休暇を使う

介護者の負担を軽くするために「介護休業」や「介護休暇」を利用する方法があります。いずれも労働者が介護を必要とする家族を介護するために利用できる制度です。

介護休業は対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得できます。休業開始予定日の2週間前までに、書面で会社に申請する必要があります。

条件を満たすことで、雇用保険の「介護休業給付制度」が利用できます。最大93日を上限として、給与の67%が支給されます。例えば給与の平均が月額20万円程度の場合、月額13万4000円程度が支給されます。

介護休暇は対象家族1人につき、年5日まで取得できます。申請方法は書面に限定されておらず、口頭での申告も可能です。給与の有無は、会社の規定で定められています。

参考:厚生労働省|Q&A~介護休業給付~

支援策や解決策

支援策や解決策

ワンオペ介護の課題に対する解決策は、次のとおりです。

地域の福祉施設や介護サービスの活用

ワンオペ介護の負担を軽減するには、介護サービスを利用する方法があります。

在宅介護では「自宅で受けるサービス」と「施設で受けるサービス」が受けられます。

自宅では、訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリといったサービスが受けられます。例えば訪問介護では「食事の用意」「おむつ交換」「服薬介助」といったサポートが受けられます。被介護者の状態に応じて必要なサポートを受けられるため、介護者の負担を減らすことができます。

施設に通って受けるサービスには、デイサービス、ショートステイといったサービスがあります。なかでもショートステイは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設といった施設に短期間宿泊してサービスを受けます。

食事や入浴、排泄介助といった日常生活に必要なサポートを受けられるため、被介護者は安心して宿泊することができます。最大30日まで連続して利用できるため、介護者の負担軽減を目的として利用されるケースが多いです。

介護者・被介護者の希望に応じて、介護サービスの利用を検討しましょう。

地域ボランティア団体やネットワークの活用

地域のボランティア団体が提供しているサービスや、ネットワークを活用して負担を軽減する方法があります。

自治体によっては、被介護者に対し「話し相手になる」「簡単な身の回りの世話をする」といった支援をおこなっています。

また「街かどデイハウス」「ふれあい喫茶」といった交流の場を提供する自治体があります。介護予防や趣味活動といった被介護者向けのイベントだけでなく「介護者の会」といった家族を介護している方が交流できる場もあります。

経験者に話すことで、ストレス発散や悩みの解決につながる可能性があります。地域の介護施設や地域包括支援センターなどで開催されているため、ぜひ参加してみましょう。

家族や友人との連携

ワンオペ介護による身体的・精神的な負担を軽減するためには、家族や友人と連携しましょう。

家族と連携することで、1人あたりの介護負担が軽くなります。同じ悩みを共有できるため、介護に関して前向きに捉えるきっかけになる可能性があります。

家族との連携が難しい場合「情報共有できる関係性づくり」「家族の不安を取り除く」といった点に取り組み、理解を得られるように働きかけてみましょう。

また介護に関する相談を友人に聞いてもらうことで、気分転換につながります。介護者の現状を把握しているため共感が得やすく、気軽に相談することができます。

自己ケアのために施設への入居も視野に

自己ケアのために施設への入居も視野に

ワンオペ介護は、介護者にさまざまな負担がかかります。そのため介護者・被介護者双方の生活のために、施設に入居する選択肢があります。

介護施設に入居すると「プロの介護が受けられる」「24時間安心して生活できる」といったメリットがあります。介護が必要な方が入居できる施設には、次のような施設があります。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、多様なサービスを入居者の状態にあわせて提供します。生活に必要な介助だけでなく、看護・リハビリといったサービスも受けることができます。

介護付き有料老人ホームの種類は、要介護の方のみが入居できる「介護専用型」、自立の方と要介護の方が入居できる「混合型」があります。

施設に常駐するスタッフから介護サービスを受けるため、月々の介護サービス費は定額です。

住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは自立の方から介護が必要な方まで、幅広く入居できる施設です。イベントやレクリエーションが充実しているため、ほかの入居者とも交流しやすいといった特徴があります。

外部の事業所から介護サービスを受けるため、利用料に応じて介護サービス費を支払います。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅は、自由度の高い暮らしができる施設です。外部の事業所からサービスを受ける「一般型」と、施設スタッフからサービスを受ける「介護型」があります。

基本的に「安否確認」と「生活相談」のサービスが提供されます。施設によっては「食事の提供」「生活支援」といったサービスをおこなっています。

グループホーム

グループホームは、認知症の方が少人数で生活する施設です。入居者ができる範囲で役割分担をおこない、共同生活を送ります。

介護スタッフは、認知症ケアに関する知識・経験が豊富です。そのため日常生活に必要なサポートだけでなく、認知症に関する専門的なケアも受けることができます。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームは、おもに要介護度3以上の方が暮らす施設です。「看取り」に対応する施設が多いため、終身で利用することができます。

費用が抑えられるため、人気が高いのが特徴です。また所得に応じて「特定入所者介護サービス費」「社会福祉法人による利用者負担軽減制度」といった制度を利用し、金銭的な負担を軽減できます。

介護老人保健施設

介護老人保健施設は、在宅復帰を目指す方が入居する施設です。理学療法士や作業療法士といった専門職から、リハビリを受けることができます。

在宅復帰を目指す施設のため、入居できる期間は原則3ヶ月です。「退院後すぐに在宅復帰できない」「特別養護老人ホームの入居待ちをしている」といった方が利用するケースがあります。

ケアハウス

ケアハウスは「家族による援助が難しい」「日常生活に不安がある」といった方が入居できる施設です。

ケアハウスには、外部の事業所からサービスを受ける「一般型」、施設スタッフからサービスを受ける「介護型」があります。自治体などの助成金で運営される公的施設のため、比較的安く利用できるのが特徴です。

まとめ

まとめ

ワンオペ介護を続けると「身体の不調」「家族関係の悪化」「経済的な問題」といった問題を引き起こすリスクがあります。そうなれば、家族の介護自体を続けられなくなる可能性があります。

ワンオペ介護の解決策を実践し、限界を感じたら施設への入居も視野に入れましょう。

この記事を書いた人

かいごマガジン編集部

かいごマガジン編集部です。
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