物盗られ妄想はいつまで続くの?症状が出やすい認知症の種類や対応ポイントも解説

物盗られ妄想はいつまで続くの?症状が出やすい認知症の種類や対応ポイントも解説

「物盗られ妄想はいつまで続くの?」

「対応するときのポイントはあるの?」

認知症の方を介護する方のなかには、このような疑問を持つ方も多いです。

物盗られ妄想は、認知症の初期から中期にかけて表れます。認知症が進むにつれて、症状が収まるケースが多いです。

物盗られ妄想に対応する際は、話を聞いたのちに探し物を一緒に探しましょう。本人が見つけ出せるように誘導し、見つけたら一緒に喜ぶことが大切です。

本記事では、物盗られ妄想に対応する際のポイント、症状が出やすい認知症の種類を中心に解説します。

物盗られ妄想はいつまで続くの?

物盗られ妄想はいつまで続くの?

物盗られ妄想は、認知症の初期から中期にかけて現れます。女性に現れる割合が多く、認知症が進むにつれて収まる傾向があります。

物盗られ妄想は認知症による妄想の種類のなかで、もっとも現れる確率が高いものです。接する機会が多い介護者が妄想の対象になりやすいため、症状が現れているうちは適切な距離をとることが大切です。

参考:老年期認知症研究会|認知症の妄想

物盗られ妄想の原因

物盗られ妄想の原因

認知症の症状には中核症状とBPSD(行動・心理症状)があり、物盗られ妄想はBPSDの1つです。中核症状により脳の機能が下がり、その結果BPSDとして行動に表れます。

BPSDはおもに次のような要因の影響を受けて現れます。

  • 環境要因
  • 心理要因
  • 身体要因

それぞれ解説します。

環境要因

環境要因には、生活環境や人間関係、不適切なケアが該当します。具体的には、「失敗を責められる」「ケアの無理強い」「引っ越すことで環境が変わった」などが要因です。

心理要因

心理的要因には、できなくなることが増えて感じる喪失感や不安、悩み、ストレスが該当します。具体的には、「家族から孤立していて疎外感を感じる」「自分が置かれている状況がわからずに不安を感じる」などが要因です。

身体要因

身体要因には、薬の影響やそのときの体調、身体状況が該当します。具体的には、「病気によって行動が制限される」「体調が悪くて不快感がある」「認知症治療薬の内服」などが要因です。

物盗られ妄想が起きる仕組み

物盗られ妄想が起きる仕組み

物盗られ妄想は、中核症状である記憶障害によって「大切な物をどこに置いたか忘れたこと」から始まります。家族に何度も置き場所を尋ねたり、家のなかを探し回ったりすることもあります。

このような行動を家族から叱られると「私が困っているのになぜ怒るのか」と不安や不信感が生じるのです。その結果「この人が盗んだから怒ってごまかしているのか」と考え、物盗られ妄想につながります。

物盗られ妄想が出やすい認知症は?

物盗られ妄想が出やすい認知症は?

物盗られ妄想が特に出やすいのは、次の認知症です。

  • レビー小体型認知症
  • アルツハイマー型認知症

それぞれの特徴を解説します。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の次に多い認知症です。

実在しないものが見える「幻視」や本来聞こえないものが聞こえる「幻聴」、手足が震える「パーキンソン症状」があるのが特徴です。なかでも幻視や幻聴は、本人にとっては本当に実在するように見えるため、否定せずに不安を取り除くことを優先しましょう。

レビー小体型認知症は、物盗られ妄想が現れる割合がもっとも多い認知症です。物盗られ妄想だけでなく、自分の家を自宅ではないと感じたり知らない人が家のなかにいると感じたりする「誤認妄想」もあります。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、患者数がもっとも多い認知症です。日時や場所、人物が認識できなくなる見当識障害や、記憶障害といった症状が特徴です。

記憶障害は、加齢による物忘れと間違えられるケースがあります。放っておくと症状が進行しますが、初期段階で治療すれば、認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。

アルツハイマー型認知症は体験そのものを忘れてしまい、同じことを何度も聞いたり置き場所を忘れて探し回ったりすることも多いです。

しかしそのような行動を叱ったり否定したりすれば、認知症がさらに悪化する恐れがあります。本人の不安な気持ちを理解し、安心して生活できるような声かけや環境作りを心掛けましょう。

またアルツハイマー型認知症は、レビー小体型認知症に次ぐ割合で物盗られ妄想が表れます。物盗られ妄想のほかにも、誰かが危害を加えようとしていると感じる「迫害妄想」が現れる傾向があります。

参考:老年期認知症研究会|認知症の妄想

参考:厚生労働省|都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応

物盗られ妄想への3つの対応ポイント

物盗られ妄想への3つの対応ポイント

物盗られ妄想に対応する際は、次の3つのポイントを意識しましょう。

  • 話を聞く
  • 一緒に探す
  • 話題を変える

それぞれ解説します。

話を聞く

本人が物を盗まれたと訴えた場合、まずは落ち着いて話を聞きましょう。犯人扱いされたとしても、感情的になって否定してはいけません。

盗まれたと訴える場面では、大切な物が見つからずに困っています。本人が困っていることに対して共感し、あいづちをうちながら話を聞きましょう。

また盗まれたという話にはなるべく触れずに、失くした物の色や形、最後に見かけた時間といった情報を確認しましょう。失くした物の特徴を尋ねることで、相手に協力する姿勢を示せます。

一緒に探す

失くした物が実在するかどうかに関わらず、本人と一緒に探しましょう。

実在する物の場合は、本人が見つけ出せるように声をかけて誘導しましょう。見つけられたときには、一緒に喜ぶのがポイントです。

特定の物を盗まれたと頻繁に訴える場合は、本人が見つけやすい位置に普段から置いておきましょう。

実在しない物の場合でも、まずは本人と一緒に探す姿勢を見せましょう。そしてある程度探したら、「またあとで探しましょうか」などと声をかけ、作業を一旦終わらせましょう。

その流れで食事にしたり外出したりすれば、ほかに気持ちが向いて物盗られ妄想が収まる可能性があります。

話題を変える

実在しないものを探し続ける場合、話題を変えるのも効果的です。盗まれたと言われたときにすぐに話題を変えるのではなく、一緒に探しながら少しずつ話題を変えましょう。

本人の趣味や好きなものといった、楽しく会話できそうな話題を日頃から集めておきましょう。

犯人扱いされて辛いときは

犯人扱いされて辛いときは

物盗られ妄想は、身近にいる人に出るケースが多いです。普段から世話をしている介護者が対象になるため、「あなたが盗んだ」と言われれば、憤りや悲しみを感じるのは当然といえます。

物盗られ妄想で犯人扱いされて辛いときは、次の対応を試しましょう。

  • 適切な距離を取る
  • 介護サービスを利用する
  • 主治医に相談する
  • 介護施設への入居を検討する

それぞれ解説します。

適切な距離をとる

物盗られ妄想で頻繁に犯人扱いされる場合は、適切な距離をとりましょう。

介護が必要な方の状態によっては、昼夜問わず介護しなければならないことがあります。十分に休めないうえに泥棒呼ばわりされながら介護を続けるのは、精神的・肉体的に大きな負担がかかります。

体調を崩すまえに、ほかの家族や親戚の協力を得て介護が必要な方と距離をとりましょう。

介護サービスを利用する

ほかの家族や親戚に頼るのが難しい場合、介護サービスの利用も視野に入れましょう。

在宅介護ではさまざまな介護サービスが利用できます。なかでもデイサービスは、施設に通って食事や入浴、排泄といった日常生活上の支援が受けられます。

一般的なデイサービスは5~8時間程度利用できるため、介護負担の軽減や認知症悪化の予防に大きく役立ちます。

主治医に相談する

物盗られ妄想への対応が難しい場合、主治医に相談してみましょう。

物盗られ妄想には、興奮する・怒るといった攻撃的な態度が伴うこともあります。医師の判断によっては内服薬による治療が必要なケースもあります。

介護者の生活に支障が出たり身の危険を感じたりした場合は、主治医に日頃の様子を伝えましょう。

介護施設への入居を検討する

物盗られ妄想で犯人扱いされて辛いときは、介護施設への入居も検討しましょう。

物盗られ妄想は、認知症の初期から中期にかけて現れます。しかしそのあとも認知症は進行し、新たな症状が現れはじめるのです。

歩くことが難しくなったり食べ物を飲み込むことが難しくなったりするため、日常生活の多くの場面でサポートが必要となります。

介護施設では、介護士や看護師、ケアマネージャーといったスタッフから専門的なケアが受けられます。そのため物盗られ妄想をはじめとした認知症の症状が出ていても、安心して生活できるでしょう。

なかでも特別養護老人ホームは、最期まで施設で生活できる「看取り」に取り組む施設も多いです。本人や家族の希望、今後の生活も考慮して、安心して生活し続けられる場を選びましょう。

まとめ

まとめ

物盗られ妄想はおもに介護する方が対象になることが多く、犯人扱いされれば辛いと感じるのは当然です。しかし認知症が進むにつれて、物盗られ妄想は収まります。

物盗られ妄想への対応ポイントを実践し、日々の在宅介護に役立てましょう。

この記事を書いた人

かいごマガジン編集部

かいごマガジン編集部です。
介護の専門的な情報をどこよりもわかりやすく紹介していきます。
また、世の中の介護がどのように変化していっているのか最新の情報も随時発信していきますのでお楽しみに!
※Twitterは準備中です。