「介護する人はどんな気持ちで介護しているのか気になる」
「介護に疲れたらどうすればいいの?」
在宅介護をする人のなかには、このような疑問をお持ちの方が多いです。
介護する人は、介護される人の変化を受け止めながら関係者と協力しなければならないため、戸惑いや不安を抱えています。介護する人とされる人のすれ違いを解消することで、より良い関係が築けます。
本記事では、介護する人とされる人の気持ちの違いや介護疲れの解決方法を中心に解説します。
記事目次
介護する人と介護される人の気持ちの違い
在宅介護では、子どもが親や配偶者を介護するケースが多いです。介護する側とされる側が共有する時間が多いうえに距離が近いため、ストレスを抱えることもあります。
介護する人とされる人は、どのような気持ちを抱えているのでしょうか。
介護する人の気持ち
介護者は、被介護者の変化を受け止めなければなりません。そのため、戸惑いや不安、迷いがあります。
自分の親や配偶者の変化を見るのが辛いものです。しかしより良い介護をするために主治医やケアマネージャー、ヘルパーと協力したり、情報収集したりする必要があります。
介護者は慣れないことをしながら介護が必要な方のサポート、さらには仕事や家庭も両立する必要があります。そのため疲労やストレスが溜まってしまいます。
介護される人の気持ち
介護される人は、自分の身体機能や能力が低下することに対して不安を感じています。なかには「できなくなった自分」が受け止められず、もどかしさを感じてしまう方もいます。
そんななか介護者の好意を曲解してしまうこともあります。「(介護する人が)自分を理解してくれない」「私の世話を他人に任せようとしている」といった気持ちになり、介護する人に対して不満をぶつけてしまうこともあります。
反対に「家族や他人に迷惑をかけたくない」という思いから、人に助けを求められず無理をしてしまうケースもあります。
気持ちのすれ違いを解消するには?
お互いの気持ちのすれ違いを解消するために介護する人は「会話の機会を大切にすること」を意識しましょう。介護される人は「見捨てられるのではないか」「自分は邪魔なのではないか」といった不安を抱えています。
介護者が、被介護者の不安を軽くするためにも、会話の機会を増やして自分の考えや気持ちを伝えましょう。また、介護される人の気持ちを聞くことも大切です。
しかし介護される人のなかには、気持ちや考えを直接伝えにくいと感じている方もいます。そんなときは自分以外の家族やケアマネージャー、ヘルパーを通して気持ちを伝えてもらう方法が有効です。
ほかにも、介護される人との間にいつ・どんなときに・どんなことが起きているかを気にしてみましょう。トラブルが起きる場面がわかれば、配慮できることもあるかもしれません。
認知症の方の介護で知っておきたいこと
これまでにない行動をする認知症の家族に対し、戸惑う方も多いです。認知症の方を介護するうえで、次の3つのことを知っておきましょう。
- 本人の気持ち
- 介護するうえでの心得
- 接し方のポイント
それぞれ解説します。
本人の気持ち
認知症の方を介護するうえで、まずは本人の気持ちを知ることが大切です。認知症は認知機能が低下することで、周囲の状況を正しく認識できなくなります。
たとえば見当識障害がある場合、場所・人を正しく認知できなくなります。認知症の方に見えている世界を否定せず、本人の不安な気持ちを想像してコミュニケーションを取りながら介護しましょう。
介護するうえでの心得
認知症の方の介護において悩みが生まれた場合は、1人で抱え込まずに誰かに相談しましょう。
認知症の方の症状には個人差があるため、対応も試行錯誤しなければなりません。人によっては一緒にいる時間が長いほど負担を感じます。
ケアマネージャーやヘルパー、認知症の家族を介護する方と悩みを共有すれば、効率よく介護ができるヒントを得られる可能性があります。
また愚痴や気持ちを吐き出せば、気持ちが楽になることもあります。1人で悩まずに、話しやすい相手に相談しましょう。
接し方のポイント
認知症の方への接し方を間違えると、症状を悪化させる恐れがあります。接し方のポイントを押さえて対応しましょう。
本人のペースを尊重する
認知症の方との生活では、本人のペースを尊重するようにしましょう。認知症の進行によって理解力や判断力が低下したり、計画を立てて物事を行えなくなったりします。
本人のペースを乱せば混乱や不安、怒りが生じて、徘徊や暴力行為、暴言といった行動につながる恐れがあります。症状の進行を抑えるためにも、叱ったり急かしたりせずに、本人のペースで物事に取り組んでもらいましょう。
穏やかに対応する
認知症の方に対して、穏やかな対応を心がけましょう。
認知症の方は周囲の状況を理解しづらいため、不安を抱えています。そのうえ介護する人から強い言葉をかけられれば、さらに混乱してしまい恐怖を感じます。
そうなれば「自分の居場所はここじゃない」と感じるのも無理はありません。自宅で安心して生活してもらうためにも、介護者は穏やかに接しましょう。
わかりやすい言葉で伝える
認知症の方と話す際は、わかりやすく簡単な言葉を使いましょう。
認知症の方は、理解力の低下によって相手が話す言葉が理解できないこともあります。高齢者に馴染みがない言葉であれば、ますます伝わりづらくなります。
なるべく本人が使い慣れた言葉を使って、スムーズに会話ができるように工夫してみましょう。
介護する人が注意したい「介護疲れのサイン」
平成28年に厚生労働省が実施した調査において、在宅介護するおもな介護者にストレスの有無を尋ねたところ、68.9%の方が「ある」と答えました。
ストレスの原因は「家族の病気や介護」を挙げた方がもっとも多く、次いで「自分の病気や介護」が多い結果となりました。このように在宅介護でストレスを感じる方は多く、介護うつや虐待を引き起こすケースもあります。
介護うつ
介護には身体的な負担だけでなく、精神的な負担も多いです。十分な休息がとれずに疲労やストレスが蓄積すると、「介護うつ」を発症する恐れがあります。
介護する人が介護うつを発症すれば、介護だけでなく仕事や家庭にも影響を及ぼします。
虐待
介護のストレスから、虐待につながる恐れもあります。虐待には次の種類があります。
- 身体的虐待(暴力的な行為)
- 心理的虐待(暴言や無視)
- 性的虐待(性的な嫌がらせ)
- 経済的虐待(資産を勝手に使ってしまう)
- 介護放棄・放任(必要な介護サービスを利用させない・世話をしない)
高齢者のためを思って行ったことでも、虐待になるケースもあります。無意識に行わないように注意しましょう。
介護ストレスをチェックしてみよう
介護うつや虐待を引き起こさないためにも、あなたの介護ストレスをチェックしてみましょう。介護するにあたって次の経験がある方は注意が必要です。
番号 | 項目 |
---|---|
1 | 以前より食欲や気力が落ちてきた |
2 | 睡眠時間が十分にとれていない |
3 | 人に会うことが面倒に感じる |
4 | 介護するのがつらいと感じる |
5 | 今後も介護を続けるのが難しいと感じる |
上記に1つでも当てはまる方は、ストレスを抱えている可能性があります。
ストレスが原因で身体に不調が出てしまえば、介護を続けるのも困難になります。必要に応じて医療機関や、介護サービスの専門家に相談しましょう。
介護疲れの解決策
介護疲れの解決策は次の4つです。
- 食事や睡眠をとる
- がんばりすぎない
- 居宅サービスを利用する
- 施設入居も検討する
それぞれ解説します。
食事や睡眠をとる
介護疲れを解消するには、食事や睡眠を十分にとりましょう。
肉体的な疲労の回復には、食事が欠かせません。主食・副食・副菜をメインに毎日7品目以上の食品を食べると、栄養状態を良好に保てるとされています。
また、睡眠時間の確保も大切です。質のよい睡眠をとって身体・精神的な疲労を回復しましょう。
がんばりすぎない
介護疲れを軽減するには、がんばりすぎないことも大切です。
介護において「完璧な介護」はありません。できていないことに目を向けるよりも、介護する人・される人の双方がより良い生活を送ることを大切にしましょう。
居宅サービスを利用する
介護疲れを解消するには、居宅サービスを利用する方法もあります。自宅で生活しながら利用できる介護サービスであり、さまざまなニーズに応えることが可能です。
訪問介護
訪問介護は、利用者の自宅にヘルパーが訪問してサービスを行います。食事・排泄・入浴などの介助だけでなく、掃除や洗濯、買い物、調理などの生活にかかわる支援も受けられます。
たとえば「おむつ交換だけお願いしたい」といった利用も可能です。
デイサービス
デイサービスは、利用者が施設に通って受けるサービスです。
施設では入浴や食事、排泄の支援や、機能訓練、口腔機能向上サービスが受けられます。高齢者同士の交流もあるため、友人や顔見知りの方ができやすいといった特徴があります。
ショートステイ
ショートステイは、利用者が施設に宿泊して受けるサービスです。
施設では、入浴や食事、排泄、機能訓練のサービスが受けられます。連続で最大30日まで利用できるため、介護する人の負担軽減に大きく役立ちます。
福祉用具レンタル
福祉用具レンタルは介護が必要な方が自宅で安全に暮らせるように、車椅子や介護ベッド、杖などがレンタルできるサービスです。
介護が必要な方の希望や生活環境に応じて、適切な福祉用具を選ぶためのサポートが受けられます。取り付けから調整まで行ってもらえるため、安心して福祉用具を使い始められます。
施設入居も検討する
休息がとれないことが原因で介護疲れが溜まる場合、施設入居も検討しましょう。特別養護老人ホームなどの施設では、介護士が常駐しているため24時間安心して生活できます。
また自宅から近い施設を選べば、気軽に面会できます。限界を迎える前に、選択肢の1つとして施設入居も考えてみましょう。
介護疲れを相談できる窓口は?
介護疲れを少しでも感じたら、共倒れになる前に相談しましょう。
ケアマネージャー
担当のケアマネージャーがいれば、まずは相談しましょう。ケアマネージャーは、在宅介護で利用するサービスを調整する役割があります。
介護が必要な方の状態をもっとも把握しているため、介護疲れが解消できるサービスを提案してもらえる可能性があります。
ヘルパー
訪問介護サービスを利用している場合、ヘルパーに相談するのも1つの方法です。
ヘルパーとケアマネージャーは適切なサービスの提供のために、情報共有を行っています。ケアマネージャーに相談するのが難しい場合は、ヘルパーに相談しましょう。
地域包括支援センター
担当のケアマネージャーがいない場合、福祉・保健の相談窓口である地域包括支援センターに相談しましょう。地域包括支援センターでは親の介護の相談だけでなく、介護保険や利用できる公的な制度も紹介してもらえます。
役所や関係機関とも連携しているため、相談内容に応じて対応してもらうことが可能です。
民生委員
地域の民生委員に相談する方法もあります。高齢者がいる世帯を訪問して状況を把握したり、福祉サービスの情報提供を行っています。
民生委員に相談したい場合は、お住まいの市区町村にお問い合わせください。
まとめ
介護する人は戸惑いや不安、迷いを抱えながら、介護が必要な方をサポートしています。しかし介護される人も、自分の変化に不安を感じながら生活しているのです。
会話を大切にして気持ちを伝えれば、すれ違いを解消する糸口になります。介護疲れの解決策もあわせて実践し、家族とより良い関係を築きましょう。