「介護保険の仕組みを知りたい」
「受けられるサービスは、どんなものがあるの?」
このような疑問をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。
介護保険制度とは、社会全体で高齢者の介護を支え合う制度です。要介護認定されれば、介護保険を利用して介護サービスが受けられます。
本記事では、介護保険制度の仕組みや対象者、受けられる介護サービスを中心に解説します。
記事目次
介護保険制度とは
介護保険制度とは、社会全体で高齢者の介護を支える制度です。高齢者の生活を支えるだけでなく、自立を目指した支援も目的としています。
この制度があることで介護が必要だと認められた場合には、1割~3割の費用負担で必要なサービスが受けられます。利用者の希望や状態に合わせてサービスを利用すれば、自立した生活や介護する家族の負担軽減にもつながるのです。
介護保険制度の仕組み
介護保険制度を構成するのは、保険者(市区町村)・加入者・介護サービス事業者の3者です。加入者がサービスを利用した場合、収入に応じて1割~3割をサービス事業者に支払い、残りの7割~9割は保険者からサービス事業者に支払われます。
この保険者からサービス事業者に支払う費用が、介護保険制度の財源からまかなわれるのです。財源は税金が50%、保険料が50%の割合となっています。
具体的な内訳は以下のとおりです。
税金(50%) | ||
市町村(12.5%) | 都道府県(12.5%) | 国(25%) |
保険料(50%) | ||
第1号保険料(23%) | 第2号保険料(27%) |
このような仕組みで介護保険制度は成り立っているのです。
介護保険制度の対象者
介護保険の加入者は、年齢に応じて次の2種類に分類されます。
- 第1号被保険者
- 第2号被保険者
それぞれ解説します。
第1号被保険者
第1号被保険者に該当するのは65歳以上の方です。保険料は60歳になった月から、原則として年金から天引きされます。
第1号被保険者が介護保険を利用できるのは、次のいずれかの要件に該当する場合です。
- 要介護状態と認定された(寝たきり、認知症などで介護が必要な状態)
- 要支援状態と認定された(日常生活に支援が必要な状態)
疾病にかかわらず支援が必要だと判断されれば、受給対象となります。
第2号被保険者
第2号被保険者に該当するのは、医療保険に加入している40歳から64歳までの方です。保険料は40歳になった月から、医療保険者が医療保険料と介護保険料を一括で徴収します。
第2号被保険者が介護保険を利用できるのは、次の特定疾患が原因で要支援・要介護状態になった場合です。
- がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
【パーキンソン病関連疾患】
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
上記の特定疾患に該当しなければ、介護保険の対象にはなりせん。
介護保険を利用するには?
介護保険を利用するには、要介護認定の申請をしなければなりません。
第1号被保険者の場合、「介護保険被保険者証」が申請時に必要です。介護保険被保険者証は、65歳の誕生月に市区町村から交付されます。
第2号被保険者は介護認定されたのちに発行されるため、申請時には「医療保険被保険者証」のみ必要です。要介護認定の申請方法を解説します。
要介護認定の申請方法
要介護認定の申請は、市区町村の窓口で行います。介護サービスを利用するまでの流れは次のとおりです。
- 保険証を準備して市区町村の窓口へ申請する
- 要介護認定の調査・判定が行われる
- 認定結果が通知される
- ケアプランを作成する
- 介護サービスを利用する
要介護認定は、本人や家族から心身の状況を聞き取って調査します。
その後の審査では、調査結果と主治医の意見書をもとに「介護認定調査会」で審査し、支援が必要だと判断されれば要支援1・2または要介護1~5のいずれかに判定される流れです。
その後、在宅で介護サービスを利用する場合は居宅介護支援事業者と契約し、利用するサービスを決めたのちに担当のケアマネジャーがケアプランを作成します。介護サービス事業者と契約したのちに、介護サービスの利用がはじまります。
介護保険で受けられるサービス一覧
介護保険では、悩みや希望に合わせて次のようなサービスが利用可能です。
- 自宅で利用できるサービス
- 施設に通って利用できるサービス
- 宿泊して利用できるサービス
- 訪問や通いなどを組み合わせるサービス
- 居住系サービス
- 施設系サービス
それぞれ解説します。
自宅で利用できるサービス
自宅での生活をサポートしてもらえるサービスは、次のとおりです。
- 訪問介護
- 訪問看護
- 訪問入浴
- 訪問リハビリ
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
なかでも訪問介護は、調理や買い物などの生活支援や、入浴介助や排泄介助などの身体介助など、幅広いサービスを行っています。悩みに応じてサポートしてもらえるため、在宅介護の心強い味方といえるでしょう。
施設に通って利用できるサービス
施設に日中通って利用するサービスは、次のとおりです。
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリ(デイケア)
- 地域密着型通所介護
- 療養通所介護
- 認知症対応型通所介護
なかでも通所介護は、入浴や食事などの支援だけでなく、心身の機能向上を目的とした機能訓練が受けられます。高齢者同士の交流の場でもあるため、孤立感の解消にも役立つでしょう。
宿泊して利用できるサービス
短期間、宿泊して利用するサービスは、次のとおりです。
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 短期入所療養介護
短期入所生活介護は特別養護老人ホームなどに短期間宿泊し、入浴や食事の支援や機能訓練などが受けられます。最大30日間利用できるため、家族の介護負担の軽減にも役立つでしょう。
訪問や通いなどを組み合わせるサービス
訪問や通い、宿泊を組み合わせて利用するサービスは、次のとおりです。
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護は施設への「通い」を中心として、施設への「宿泊」と利用者宅への「訪問」を組み合わせて支援を受けられます。利用者の希望や状況に応じてサービスを組み合わせられるため、柔軟に対応してもらえるのが特徴です。
居住系サービス
居住系サービスが受けられる施設には、次のような種類があります。
- 住宅型有料老人ホーム
- 介護付き有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- 軽費老人ホーム
上記の施設では、高齢者の暮らしやすさに配慮された住まいで必要な介護サービスが受けられます。なかでも軽費老人ホームは、ほかの施設と比べると費用が抑えられる傾向です。
施設系サービス
施設系サービスが受けられる施設には、次のような施設があります。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
上記の施設では入浴や排泄、食事などの生活に必要な支援や、療養上の世話などが受けられます。
なかでも特別養護老人ホームは、原則要介護3以上の方が対象です。常に介護が必要な方でも、安心して生活できるでしょう。
介護保険制度についてよくある3つの質問
介護保険制度について、よくある質問は次の3つです。
- 医療保険との違いはなんですか?
- 介護保険への加入は義務ですか?
- 介護保険を利用するといくらもらえますか?
それぞれの疑問を解消していきましょう。
医療保険との違いはなんですか?
医療保険との違いは、受けられるサービスの内容です。介護保険は、介護が必要になったときに必要な介護サービスが受けられます。
一方医療保険は、病気や怪我をしたときに費用の一部を負担することで医療が受けられます。
介護保険への加入は義務ですか?
40歳以上の方全員が加入しなければなりません。40歳を超えると老化が要因となる疾病により、誰でも介護が必要な状況になる可能性があります。
老後の不安の1つである介護を支え合うために、40歳から保険料の負担が義務付けられます。
介護保険を利用するといくらもらえますか?
介護保険を利用しても、お金は受け取れません。
介護保険制度は、1割~3割の自己負担で介護サービスを利用できる制度です。たとえば1割負担の場合は、残りの9割が介護保険の財源からまかなわれます。
お金を受け取れるのではなく、少ない費用負担で介護サービスが利用できる制度です。
まとめ
介護が必要な状態になった場合、介護保険制度を利用すれば少ない負担で介護サービスを利用できます。
利用できるサービスは幅広く、本人の悩みや希望、状態に合わせて選ぶことが可能です。介護保険制度を活用し、介護費用の負担を軽くしましょう。