自宅介護で利用できる補助金はあるの?働き続けるためにできる対策も解説します!

自宅介護で利用できる補助金はあるの?働き続けるためにできる対策も解説します!

「自宅介護で受け取れる補助金はあるの?」

「仕事と自宅介護を両立する方法を知りたい」

このような疑問をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。自宅介護で利用できる制度や補助金は幅広く、介護保険サービスの利用に役立てられるものもあります。

本記事では、自宅介護で受け取れる補助金と働き続けるためにできる対策をご紹介します。

自宅介護で利用できる補助金一覧

自宅介護で利用できる補助金一覧

介護にかかる費用負担を軽減する補助金や制度には、多くの種類があります。なかでも自宅介護で利用できるおもな補助金・制度は次のとおりです。

  • 家族介護慰労金
  • 介護休業給付
  • 居宅介護住宅改修費
  • 福祉用具購入費
  • 高額介護サービス費制度
  • 高額介護合算療養費制度
  • 医療費控除

それぞれ対象者や申請方法を解説します。

家族介護慰労金

家族介護慰労金は、要介護4・5に認定された方を介護保険サービスを利用せずに自宅介護する家族に支給される補助金です。自治体によって金額が異なりますが、年間100,000円程度が相場です。

対象者

対象者は自治体によって異なりますが、ここでは横須賀市を例に対象者を説明します。横須賀市では、以下の条件をすべて満たす方が家族介護慰労金の対象となります。

  • 介護保険の要介護認定で、要介護4・5の認定を受けた方を自宅で介護している
  • 要介護4・5の認定を受けた方が、過去1年間介護保険のサービスを利用していない

(当該年中の1週間程度のショートステイの利用は除く)

  • 同じ世帯に属する人全員が市民税非課税である

引用:横須賀市|家族介護慰労金の支給

なお、介護保険料や医療保険料などを滞納している場合は支給対象外となるため、注意が必要です。

申請方法

家族介護慰労金はお住まいの自治体に申請します。申請の流れの一例は次のとおりです。

  1. 自治体の担当窓口に問い合わせ、申請書を入手する
  2. 申請書を記入して提出する
  3. 自治体が介護状況を確認する
  4. 支給決定後に支給決定通知書、請求書を受け取る
  5. 自治体に請求書を送付する

申請方法や介護状況の確認方法は自治体によって異なります。申請の際にはお住まいの自治体にご確認ください。

介護休業給付

介護休業給付は、働いている方が介護休業を取得した場合に支給される補助金であり、最大93日を上限に給与の67%が支給されます。たとえば平均月額が30万円程度の場合、月額20,1万円程度が支給されます

対象者

介護休業給付の対象者は、次の条件を満たしている方です。

  • 1年以上雇用保険に加入している
  • 2週間以上にわたり常時介護が必要な家族を介護するために介護休業を取得した
  • 介護休業後に職場復帰する

なお有期雇用の場合、介護休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに、その労働契約が終わると決定していないことも条件に含まれます。

申請方法

介護休業給付は原則として就業先の事業所が申請しますが、希望すればご自身で申請できます。受給資格の確認の際に必要な書類は、次のとおりです。

  • 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
  • 賃金台帳、出勤簿またはタイムカード

支給申請に必要な書類は次のとおりです。

  • 介護休業給付金支給申請書
  • 介護休業申出書
  • 住民票記載事項証明書など
  • 出勤簿、タイムカードなど
  • 賃金台帳など

必要書類を揃え、就業先を管轄するハローワークへ提出しましょう。

居宅介護住宅改修費

居宅介護住宅改修費は、自宅介護を目的としたリフォームのために支給される補助金です。手すりの取り付けや段差の解消などが対象であり、実際にかかったリフォーム費用の9割が支給されます。

支給額は、支給限度基準額(20万円)の9割である18万円が上限となります。

対象者

居宅介護住宅改修費の対象者は、次の条件を満たしている方です。

  • 要介護認定を受けている
  • 自治体によって支給が適当と判断された

なお、要支援認定の方は「介護予防住宅改修費」の対象です。

申請方法

居宅介護住宅改修費を受け取るには、リフォーム前に次の書類を自治体へ提出する必要があります。

  • 支給申請書
  • 住宅改修が必要な理由書
  • 工事費見積もり書
  • 住宅改修後の完成予定の状態がわかるもの

リフォームが完了したら、次の書類を自治体へ提出します。

  • 住宅改修に要した費用に係る領収書
  • 工事費内訳書
  • 住宅改修の完成後の状態を確認できる書類
  • 住宅の所有者の承諾書

自治体に認められると、居宅介護住宅改修費が支給される流れです。なお、必要書類は自治体によって異なります。

福祉用具購入費

福祉用具購入費は、自宅で使用する目的で特定の福祉用具を購入した際に支給される補助金です。対象となるのは次の福祉用具です。

  • 腰掛便座
  • 自動排泄処理装置の交換可能部品
  • 排泄予測支援機器
  • 入浴補助用具(入浴用椅子・浴槽用手すりなど)
  • 簡易浴槽
  • 移動用リフトのつり具の部分

上記は他人が使用したものを再利用するのに抵抗を感じたり、使用するにつれて品質が劣化したりすることから「特定福祉用具」と呼ばれます。福祉用具購入費は毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間で、10万円を上限として支給されます。

対象者

福祉用具購入費の対象者は、次の条件を満たしている方です。

  • 要介護または要支援認定を受けている
  • 特定福祉用具を購入した

なお、「特定福祉用具販売事業者」として都道府県知事の指定を受けている事業者から購入しなければ、福祉用具購入費は支給されません。購入する際には、あらかじめケアマネージャーに相談しましょう。

申請方法

福祉用具購入費を受け取るには、自治体の担当窓口に次の書類を提出する必要があります。

  • 介護保険給付費等支給申請書
  • 領収書
  • 福祉用具が必要である理由がわかる書類(理由書・居宅サービス計画書など)
  • 福祉用具の概要が記載された書類(カタログなど)

なお自治体や購入した福祉用具によっては、寸法図や設置後の写真、医学的な所見の確認書類などが必要なケースもあります。

高額介護サービス費制度

高額介護サービス費は、決められた負担の上限額を超えた金額が支給される制度です。介護サービス費が対象であり、所得に応じて負担の上限額が決定します

対象者

高額介護サービス費制度の対象者は、次の条件を満たしている方です

  • 自宅や特別養護老人ホームなどで介護保険サービスを受けている
  • 介護保険サービス利用で支払った金額が負担の上限額を超えた

なお所得に応じ、負担の上限額は以下の区分に分けられます。

設定区分対象者負担の上限額(月額)
第1段階生活保護を受給している方等15,000円(個人)
第2段階市町村民税世帯非課税で公的年金等の収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下24,600円(世帯)15,000円(個人)
第3段階市町村民税世帯非課税で第1段階及び第2段階に該当しない方24,600円(世帯)
第4段階①市区町村民税課税世帯~課税所得380万円(年収約770万円)未満①44,400円(世帯)
②課税所得380万円(年収約770万円)~690万円(年収約1,160万円)未満②93,000円(世帯)
③課税所得690万円(年収約1,160万円)以上③140,100円(世帯)

引用:厚生労働省|介護サービス情報公開システム「高額介護サービス費」

なお自宅介護の場合、福祉用具購入費は負担額に含まれないため注意しましょう。

申請方法

高額介護サービス費制度を利用するには、自治体の窓口に次の書類を提出する必要があります。

  • 高額介護サービス費支給申請書
  • 介護保険被保険者証
  • 振込先の確認できるもの(通帳など)

なお申請期限は、介護保険サービスが提供された月の翌月1日から2年間です。期限を過ぎると申請できないため注意しましょう。

高額介護合算療養費制度

高額医療・高額介護合算療養費制度は、決められた負担の上限額を超えた金額が支給される制度です。1年間に支払った医療保険と介護保険の自己負担合算額が対象であり、所得に応じて負担の上限額が決定します。

対象者

高額医療・高額介護合算療養費制度の対象者は、次の条件を満たしている世帯です。

  • 医療保険上の世帯において、医療保険と介護保険両方に自己負担が発生している
  • 1年間の自己負担合算額が負担上限額を500円以上超えた

年齢によって以下の区分に分けられます。

75歳以上70~74歳70歳未満
介護保険+後期高齢者医療介護保険+被用者保険または国民健康保険
世帯年収負担限度額
年収約1,160万円以上212万円
年収約770~約1,160万円141万円
年収約370~約770万円67万円
~年収約370万円56万円60万円
市町村民税世帯非課税等31万円

34万円
市町村民税世帯非課税かつ年金収入80万円以下等本人のみ19万円
介護利用者が複数31万円

参考:厚生労働省|介護サービス情報公開システム「高額医療・高額介護合算制度」

なお自己負担合算額を合算する対象期間は、8月1日~翌年7月31日です。

申請方法

高額医療・高額介護合算療養費制度を利用するには、医療保険者に次の書類を提出する必要があります。

  • 申請書
  • 振込先の確認できるもの(通帳など)
  • 医療保険、介護保険被保険者証
  • 被保険者のマイナンバーが確認できるもの(マイナンバーカードなど)

対象となる可能性がある世帯には、保険者から支給申請書が届くケースもあります。しかしすべての保険者が送付するわけではないため、医療費と介護費の自己負担額が多いと感じた場合は問い合わせましょう。

医療費控除

医療費控除は、支払った医療費が一定額以上だった場合、所得控除が受けられる制度です。自宅介護で利用できる居宅サービスのなかには、医療費控除の対象となるものと対象外のものがあります。

医療費控除の対象となるおもなサービスは、次のとおりです。

  • 訪問看護
  • 介護予防訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 介護予防訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 介護予防居宅療養管理指導
  • 通所リハビリテーション(デイケア)
  • 介護予防通所リハビリテーション
  • 短期入所療養介護(ショートステイ)
  • 介護予防短期入所療養介護など

なお、上記のサービスと併せて利用する場合のみ、次のサービスも医療費控除の対象となります。

  • 訪問介護(生活援助中心型は除く)
  • 夜間対応型訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • 介護予防訪問入浴介護
  • 通所介護(デイサービス)
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)など

なお、 居宅サービスで使用したおむつは医師が発行する「おむつ使用証明書」があれば、医療費控除の対象となります。

対象者

医療費控除の対象となるのは、納税している本人やその家族のために支払った医療費です。

申請方法

医療費控除を受けるには確定申告をしなければなりません。1月1日〜12月31日までの1年間の医療費を、原則として翌年の2月16日〜3月15日までに申告しましょう。

医療費控除の申告に必要な書類は、次のとおりです。

  • 確定申告書A
  • 控除対象のサービスの領収書
  • 医療費控除の明細書
  • 本人確認できるもの(マイナンバーカードなど)

書類を揃えて税務署に提出しましょう。

介護用品が給付される自治体もある

介護用品が給付される自治体もある

自治体によっては、自宅介護に必要な介護用品が支給される場合もあります。横浜市では次の被介護者を対象に、紙おむつを支給しています。

  • 要介護4・5の方および要介護1~3で福祉保健センター長が必要と認めた方
  • 生活保護受給世帯等または市民税非課税世帯で市内にお住まいの方

自治体によってさまざまな支援が実施されているため、お住まいの地域で受けられる支援があるか確認してみましょう。

自宅介護をしながら働き続けるための対策は?

自宅介護をしながら働き続けるための対策は?

自宅介護は金銭面の負担だけでなく、身体的・精神的な負担も少なくありません。自宅介護と仕事を両立するためには、次のような対策を行いましょう。

  • 利用している介護保険サービスを見直す
  • 世帯分離する

それぞれ解説します。

利用している介護保険サービスを見直す

自宅介護と仕事の両立に負担を感じている場合、利用している介護保険サービスを見直してみましょう。

介護が必要な方の状態によっては、介護する家族が十分な休息をとれないケースもあります。夜間もトイレ介助などが必要であれば、仕事を続けながら自宅介護するのは困難でしょう。

そんなときは困っていることをケアマネージャーに相談すれば、新たなサービスを提案してもらえる可能性もあります。

自宅で利用できるサービスだけでなく、状況によっては施設への入所を検討する必要もあるでしょう。

介護を必要とするご本人や家族の希望を考慮しつつ、よりよい生活のために利用するサービスを見直しましょう。

世帯分離する

経済的な負担が大きいと感じる場合、世帯分離も検討しましょう。世帯分離をすれば、同じ住所に住みながら収入に見合った税金額や介護費用を支払えるようになります。

自宅介護で利用できる補助金や制度は、世帯収入によって適用範囲が決まるものが少なくありません。世帯分離をしないと親世帯と子世帯の収入が合算され、経済的な負担が大きくなります。

世帯分離して親世帯が住民税非課税世帯になれば、支給される補助金や利用できる制度は広がります。経済的な不安が少なくなれば、仕事もセーブしつつ自宅介護も続けられる助けになるでしょう。

まとめ

まとめ

自宅介護で支給される補助金や利用できる制度は幅広く、介護保険サービスの利用に活用できるものも少なくありません。

自宅介護では金銭面だけでなく、身体的・精神的な負担もあるでしょう。利用できる補助金や制度を活用し、抱える不安を少しでも解消しましょう。

この記事を書いた人

かいごマガジン編集部

かいごマガジン編集部です。
介護の専門的な情報をどこよりもわかりやすく紹介していきます。
また、世の中の介護がどのように変化していっているのか最新の情報も随時発信していきますのでお楽しみに!
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