「自宅での介護にはどのくらいの費用がかかるの?」
「施設介護との違いはどんな部分?」
このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
施設と比べて自宅介護にかかる費用は抑えられる傾向があります。しかし被介護者の身体状況や生活環境によって、介護にかかる費用は異なります。
本記事では、自宅介護にかかる費用や利用できるサービス、施設との違いを中心に解説します。
記事目次
自宅介護にかかる費用の平均は?
公益財団法人生命保険文化センターが実施した調査によると、介護を始めるために一時的にかかった費用は平均74万円であり、月々にかかる自宅介護の費用は平均4.8万円です。
かかる費用は要介護度によって差がある
要介護度によって生活環境に必要な設備が異なるため、かかる費用にも差があります。要介護度ごとに必要な費用を比較してみましょう。
一時的な費用
一時的にかかった費用は以下の表のとおりです。
要介護度 | 費用 |
要支援1 | 101万円 |
要支援2 | 37万円 |
要介護1 | 39万円 |
要介護2 | 61万円 |
要介護3 | 98万円 |
要介護4 | 48万円 |
要介護5 | 107万円 |
参考:生命保険文化センター|2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査
一時的にかかった費用には、住宅改修や介護用ベッドの購入費用などが含まれます。おおむね要介護度が上がるごとに費用も高まっており、要介護5ではもっとも高い107万円かかっています。
ひと月にかかる費用
ひと月にかかる費用は以下の表のとおりです。
要介護度 | 費用 |
要支援1 | 4.1万円 |
要支援2 | 7.2万円 |
要介護1 | 5.3万円 |
要介護2 | 6.6万円 |
要介護3 | 9.2万円 |
要介護4 | 9.7万円 |
要介護5 | 10.6万円 |
参考:生命保険文化センター|2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査
おおむね要介護度が上がるごとに費用も高まっており、要介護5ではもっとも高い10.6万円がひと月にかかっています。要介護度が上がれば車椅子などを日常的に使用するケースもありますが、身体状況には個人差があるため、かかる費用にも差があるでしょう。
自宅介護にかかる費用の内容は?
自宅介護にかかる費用の種類は多岐にわたりますが、内容を知っていれば予算の見通しも立てやすくなるのではないでしょうか。自宅介護では、おもに次の費用がかかります。
- 食費
- 光熱費
- 住宅改修費
- 福祉用具のレンタル費
- 介護サービスの利用料
- おむつ代などの費用
それぞれの費用について解説します。
食費
生活するうえで食事にかかる費用は欠かせません。
運動量の低下などによって食事量が減ると、必要な栄養素が足りなくなるリスクもあります。健康な生活のためにも、栄養バランスを考えた食事を摂る必要があるでしょう。
また、介護が必要な方のなかには、食べやすさに配慮された介護食が必要な方も少なくありません。適していない食事を食べ続けた場合、誤嚥性肺炎などを引き起こす恐れもあります。
介護食は繊維の多い食材は使えないなど、使用できる食材は限られます。手間も必要になるため、市販品を活用する場合はその費用も参考にしましょう。
光熱費
光熱費には、水道やガス、電気の使用にかかる費用が含まれます。被介護者が自宅で過ごす時間の長さによって費用が変動するでしょう。
また、季節や地域によっては冷房や暖房が必要になる場合もあります。毎月発生する費用のため、忘れずに予算に含めましょう。
住宅改修費
被介護者の身体状況によっては、住宅改修費が必要になるケースもあります。住宅改修費は被介護者が安全に生活できるよう、段差を解消したり手すりを設置したりするために使用します。
実際にかかった費用の9割は、20万円を限度に自治体から払い戻される制度もありますが、リフォーム時にはまとまった費用がかかるケースもあるため注意しましょう。
福祉用具のレンタル費
被介護者の身体状況に応じて、福祉用具のレンタル費も必要です。
福祉用具には介護用ベッドや車椅子などさまざまな種類があり、生活環境や本人の希望に応じてレンタルします。介護保険が適用されるため、費用負担は原則1割となります。
介護サービスの利用料
訪問介護やデイサービスなどを利用する場合、その利用料も必要です。
利用料の自己負担額は原則1割ですが、所得によっては最大3割負担となります。世帯収入をあらかじめ確認し、予算を立てておきましょう。
おむつ代などの費用
おむつや手袋などの日用品の購入費用も必要です。
1度にまとまった支出にはなりませんが、年間通して使用すればかかっている費用も少なくないことがわかります。日用品だけでなく、医療機関への受診にかかる費用も想定しておきましょう。
自宅で利用できる介護サービスとその費用
自宅で利用できる介護サービスの量は、要介護度ごとに「支給限度額」として決められています。要介護度ごとの支給限度額は、以下の表のとおりです。
要介護度 | 支給限度額 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
参考:厚生労働省|介護サービス情報公開システム「サービスにかかる利用料」
支給限度額の範囲内であれば、介護保険が適用されるため原則1割負担で利用できますが、超えた分は全額自費負担となります。たとえば要介護5の方の場合、362,170円までであれば原則1割負担でサービスの利用が可能です。
自宅で利用できる介護サービスには、次のような種類があります。
- 訪問介護
- デイサービス(通所介護)
- ショートステイ(短期入所生活介護)
それぞれのサービス内容と費用を解説します。
なお、費用に関しては1単位10円として計算しています。地域などによって1単位ごとの費用は異なるため、ご注意ください。
訪問介護
訪問介護はヘルパーが利用者の自宅に訪問し、次のようなサービスを提供します。
- 身体介護(食事・排泄・入浴などの介助)
- 生活援助(掃除・買い物・調理などの支援)
- 通院などを目的とした乗車・移送・降車の介助サービス
訪問介護では、サービスの種類と利用時間によって料金が異なります。1回あたりの利用料の目安は以下の表のとおりです。
サービスの種類 | 利用時間 | 利用料の目安 | 自己負担する費用の目安(1割負担の場合) |
身体介護 | 20分未満 | 1670円 | 167円 |
20分以上30分未満 | 2500円 | 250円 | |
30分以上1時間未満 | 3960円 | 396円 | |
1時間以上1時間半未満 | 5790円30分増すごとに+840円 | 579円30分増すごとに+84円 | |
生活援助 | 20分以上45分未満 | 1830円 | 183円 |
45分以上 | 2250円 | 225円 | |
通院時の乗車・降車等介助 | 1回につき | 990円 | 99円 |
提供されたサービスが一定の要件を満たしていれば、利用料に加算が上乗せされます。訪問介護では、夜間・早朝加算や緊急時訪問介護加算などが上乗せされることもあるでしょう。
デイサービス(通所介護)
デイサービスは、デイサービスセンターなどの施設に日帰りで通い、介護スタッフなどから次のようなサービスを受けられます。
- 食事や入浴、排泄などの日常生活上の支援
- 機能訓練
- 施設~自宅間の送迎
- 口腔機能向上サービスなど
デイサービスは事業所の規模や利用時間によって費用に差があります。要介護5の方が通常規模の施設を利用した場合、1日あたりの利用料の目安は以下の表のとおりです。
利用時間 | 利用料の目安 | 自己負担する費用の目安(1割負担の場合) |
3時間以上4時間未満 | 5,850円 | 585円 |
4時間以上5時間未満 | 6,140円 | 614円 |
5時間以上6時間未満 | 9,790円 | 979円 |
6時間以上7時間未満 | 10,030円 | 1,003円 |
7時間以上8時間未満 | 11,420円 | 1,142円 |
8時間以上9時間未満 | 11,620円 | 1,162円 |
提供されたサービスが一定の要件を満たしていれば、利用料に加算が上乗せされます。デイサービスでは、口腔機能向上加算や入浴介助加算が上乗せされることもあるでしょう。
ショートステイ(短期入所生活介護)
ショートステイは特別養護老人ホームなどに短期間宿泊し、介護スタッフなどから次のようなサービスが受けられます。
- 食事や入浴、排泄などの日常生活上の支援
- 機能訓練
- 施設~自宅間の送迎など
家族の介護負担の軽減も目的としており、最大30日まで連続で利用可能です。ショートステイは、施設の形態や居室の種類、スタッフの配置などによって費用に差があります。
併設型の多床室を利用した場合、1日あたりの利用料の目安は以下の表のとおりです。
要介護度 | 利用料の目安 | 自己負担する費用の目安(1割負担の場合) |
要介護1 | 5,960円 | 596円 |
要介護2 | 6,650円 | 665円 |
要介護3 | 7,370円 | 737円 |
要介護4 | 8,060円 | 806円 |
要介護5 | 8,740円 | 874円 |
提供されたサービスが一定の要件を満たしていれば、利用料に加算が上乗せされます。ショートステイでは、療養食加算や認知症専門ケア加算などが上乗せされることもあるでしょう。
なお、食費・滞在費・理美容代などの日常生活費は利用料に含まれていないため、別途負担しなければなりません。介護保険が適用されないため全額自己負担となりますが、負担限度額認定証をお持ちであれば負担が軽減されます。
ご利用の際は負担限度額認定証の交付対象であるか確認し、必要に応じて申請しましょう。
自宅介護と施設介護の違いは?
内閣府の調査では、「可能な限り自宅で介護を受けたい」と答えた方の割合は44.7%にものぼりました。自宅介護と比較される対象に施設介護がありますが、おもに次のような違いがあります。
- 介護にかかる費用
- 生活の自由度
- 介護する人
それぞれ解説します。
介護にかかる費用
1つめは介護にかかる費用の違いです。
自宅介護では平均4.8万円かかるのに対し、施設介護では平均12.2万円もの費用がかかります。要介護度や利用するサービスによって差はありますが、自宅介護の方が費用を抑えられるでしょう。
生活の自由度
2つめは被介護者の生活における自由度の違いです。施設ではほかの入居者と共同生活を送るため、自宅と比べるとある程度決まったスケジュールで生活せざるをえないでしょう。
一方、自宅介護では住み慣れた自宅で過ごせるため、環境の変化に戸惑うこともありません。可能な範囲で本人の希望もかなえられ、自由度の高い生活が送れるでしょう。
介護する人
3つめは介護にたずさわる人の違いです。
自宅であればサービスを利用していても、メインで介護するのは家族となります。被介護者の状態によっては家族の身体的・精神的な負担も大きくなり、介護うつなど心身の不調につながるリスクも少なくありません。
また、介護をきっかけに離職した場合、孤立感や経済的な不安を抱える可能性もあります。
一方、施設では介護士をはじめとしたプロによるケアが受けられます。施設によっては看護師やケアマネージャーなども配置されており、夜間にスタッフが常駐する施設も少なくありません。
体調の急変時などにも対応してもらえるため、24時間安心して生活できるでしょう。
まとめ
自宅介護には、月々に平均4.8万円もの費用がかかります。食費や住宅改修費などかかる費用は幅広く、身体状況によっても差があるでしょう。
不安を抱えずに自宅介護を続けるには、費用面のみならず身体的・精神的な負担にも目を向ける必要があります。安心して生活を送れるように、家族に合ったサービスを選んで利用しましょう。