「自宅介護に限界を感じているけど、どうすればいいのかわからない」
「負担を軽くする方法はないの?」
このような疑問をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。
自宅介護では、介護される側の希望をかなえようとするあまり、介護する側が無理をしてストレスを抱えるケースも少なくありません。しかし双方の健康や生活のためにも、自宅介護の限界を客観的に判断し、負担を軽減しなければなりません。
本記事では、自宅介護の限界を判断するポイントや負担を軽くする方法を解説します。
記事目次
自宅介護が限界だと感じるおもな理由
自分に介護が必要になった場合、自宅での介護を望む方は少なくありません。しかし、自宅での介護で周囲にかかる負担は大きく、介護する側が体調を崩してしまう可能性もあります。
自宅介護が限界だと感じるのは、次のような理由があります。
- 介護にかかる時間が多く休めない
- 身体に負担がかかり体力的にきつい
- いつまで続くのか先が見えない
それぞれ解説します。
介護にかかる時間が多く休めない
自宅介護では介護にかかる時間が多く、介護する側がプライベートな時間や休息をとりづらいケースも少なくありません。要介護度別の介護にかかる時間の割合は、以下のグラフのとおりです。
要介護1は「必要なときに手をかす程度」がもっとも多いですが、要介護3~要介護5の場合は1日の大半を介護に費やしています。介護度が上がるにつれて歩行などの日常生活に必要な動作ができなくなるため、必然的に介護する側の負担も大きくなります。
そのうえ睡眠時間なども削らなければならない状況であれば、自宅介護が限界だと感じるのは無理もないでしょう。
身体に負担がかかり体力的にきつい
自宅介護では、被介護者の状態に応じて身体介助も行わなければならないため、体力的にも辛く感じるケースもあります。生活に欠かせない身体介助を行う代表的な場面は次のとおりです。
- 起き上がり
- 立ち上がり
- 車椅子への移乗
- おむつ交換などの排泄
- 入浴
- 更衣
- 食事など
なかでもおむつ交換は1日に何回か行わなければならず、介護に不慣れな方であればやり方に戸惑ってしまう場合もあるでしょう。腰や膝への負担もあるため、おむつ交換のたびに体力を消耗してしまい、自宅介護に限界を感じてしまうこともあります。
いつまで続くのか先が見えない
自宅介護には肉体的な負担がかかるうえに先が見通せないことから、精神的な負担を感じるケースもあるでしょう。
医療法人社団風林会 医療脱毛専門院「リゼクリニック」が介護経験がある方に介護で大変なことをアンケートしたところ、以下の結果となりました。
大変だと感じたこと | 割合 |
相手とのコミュニケーション | 51.7% |
排泄の介助 | 46.1% |
精神面 | 42.7% |
時間面 | 41.4% |
食事の介助 | 38.4% |
入浴の介助 | 32.8% |
参考:医療法人社団風林会 医療脱毛専門院リゼクリニック|「老後・介護に関するアンケート」
排泄介助などの肉体的な負担だけでなく、コミュニケーションや精神面などに大変さを感じた経験がある方も少なくない結果となりました。
介護期間の平均は5年1ヶ月ですが、なかには10年以上介護し続けているケースも存在します。さまざまな負担を感じつつも終わりが見えない状況であれば、不安を感じるのは当然といえるでしょう。
自宅介護の限界を判断する2つのポイント
日本労働組合総連合会が実施した「要介護者を介護する人の意識と実態に関する調査」によると、自宅介護でストレスを感じている方は全体の80%に達しています。
ストレスによるイライラなどを放置すると、虐待や介護する側が介護うつを患うリスクなどにつながる恐れもあるでしょう。自宅介護の限界を判断するには、次の2つのポイントをチェックしましょう。
- 日常生活に支障がある
- 常に見守りが必要
それぞれのポイントを解説します。
日常生活に支障がある
介護にかかる時間が多く、休息が十分にとれないなど日常生活に支障がある場合は、自宅介護が限界だと考えられるでしょう。自宅介護をしながら就労している方のうち、問題がありつつもなんとか働き続けている方は50%以上であり、被介護者の状態によっては自宅介護と仕事の両立は容易ではありません。
また、認知症の症状がある場合、夜中であっても大声を出したり暴言や暴力などの行為があったりするケースもあります。介護する側の日常生活に支障があると感じたら、自宅介護は限界だと判断すべきタイミングだといえるでしょう。
参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社|介護離職防止の施策に資する在宅介護実態調査結果の活用方法に関する調査研究事業
常に見守りが必要
疾病や身体機能の低下によって常に見守りが必要な場合は、自宅で安全に過ごすのは難しくなってきていると考えられるでしょう。
認知症の方の場合、家族が目を離した隙に1人で外出してしまい、事故に巻き込まれたり行方がわからなくなってしまったりする恐れがあります。また、高齢になると筋力が低下するため、転んで骨折などをしてしまうリスクもあります。
しかし、常に見守らなければならない状況であれば、家族にかかる負担も少なくありません。家族がつきっきりで傍にいなければ安全に生活できないと感じたら、自宅介護は限界だと判断すべきでしょう。
自宅介護に限界を感じたときの相談先は?
自宅介護が限界だと感じた場合、次のような場所に相談しましょう。
- お住まいの地域の役所
- 地域包括支援センター
- 担当のケアマネージャー
- 担当のホームヘルパー
- 自宅介護をする家族の集まり
すでに担当のケアマネージャーがいる場合、被介護者の状態や家族の状況なども把握しているため、負担軽減につながるアドバイスが受けられるでしょう。排泄介助などの介護にかかわる悩みは、日頃から支援を行っているヘルパーに相談すれば実践的なアドバイスが受けられる可能性もあります。
役所の担当窓口や地域包括支援センターでも相談を受け付けていますので、気軽に相談しやすい場所に相談しましょう。
自宅介護の負担を軽くする4つの方法
自宅介護の負担を軽減するには、次の4つの方法があります。
- 居宅サービスを利用する
- 相談できる関係を周囲と築く
- 制度を活用する
- 施設への入居を検討する
それぞれの方法を解説します。
居宅サービスを利用する
自宅介護を続ける場合、居宅サービスを活用して介護する側の負担を軽くする方法があります。居宅サービスとは自宅で介護を受ける方が利用できる介護保険サービスであり、次のような種類があります。
- 訪問介護
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- デイサービス(通所介護)
- 小規模多機能型居宅介護
- ショートステイ(短期入所生活介護)など
なかでもショートステイは、介護者である家族の負担軽減(レスパイト)を目的として利用されるケースも少なくありません。生活に欠かせない食事や入浴、排泄などの支援が受けられ、最大30日間まで連続で利用可能です。
ほかにもさまざまなサービスがあるため、利用する本人や家族の状況に合わせて居宅サービスの利用も検討しましょう。
相談できる関係を周囲と築く
自宅介護で感じている不安や悩みを相談できる相手を作りましょう。自宅介護では介護にかかる時間も多いことから、周囲に相談できるタイミングも少なくなる傾向があります。
しかし、不安や悩みを誰かに聞いてもらえれば、気持ちが軽くなる可能性もあります。ほかの家族や親戚、友人などに相談できるような関係性を築き、1人で悩みを抱え込まないようにしましょう。
制度を活用する
自宅介護と仕事を両立するために「介護休暇」や「介護休業」といった制度を利用する方法もあります。
介護休暇
介護休暇は、対象家族1人につき年5日まで取得可能であり、賃金の有無は会社の規定によって異なります。取得できるのは、要介護状態の家族を介護している方です。
なお、次のような方は対象外です。
- 入社6ヶ月未満の方
- 1週間の所定労働日数が2日以下の方
口頭での申請も可能ですが、会社によっては書面での申請を求められる場合もあります。
介護休業
介護休業は対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得可能です。賃金は原則無給ですが、条件を満たせば雇用保険の介護休業給付制度を利用できます。
取得できるのは、要介護状態の家族を介護しており、休業取得後に職場復帰する方です。なお、次のような方は対象外です。
- 入社1年未満の方
- 申出の日から93日以内に雇用期間が終了する方
- 1週間の所定労働日数が2日以下の方
休業開始予定日の2週間前までに会社に書面で申請しましょう。
施設への入居を検討する
自宅介護に限界を感じた場合は、介護施設への入居も検討しましょう。入居条件やサービス内容は異なりますが、施設には次のような種類があります。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護付き有料老人ホーム
- グループホーム
- 介護医療院
- サービス付き高齢者向け住宅
例えば特別養護老人ホームでは、原則要介護3以上でなければ入居できません。しかし、費用は比較的抑えられる傾向があり、プロの介護が受けられるため安心して生活できるでしょう。
家族の通いやすさや費用面、入居する本人の希望などを考慮して、多くの介護施設を比較して選びましょう。
まとめ
自宅介護に限界を感じる理由には、介護にかかる時間の多さや身体的・精神的な負担などがあります。限界を感じたままストレスを放置すると、介護者である家族の心身の不調や虐待につながる恐れもあるでしょう。
自宅介護の限界を客観的に判断し、家族みんながよりよい生活を送れるように対処しましょう。