「介護している人が大変だと感じている内容が知りたい」
「ストレスを感じたらどうすればいいの?」
このような疑問をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。介護経験者が大変だと感じたのは「相手とのコミュニケーション」や「排泄の介助」です。
本記事では、介護で大変なことランキングとその解決策を中心に解説します。
記事目次
介護で大変なことランキング
医療脱毛専門院「リゼクリニック」は40~50代の男女1100名に「老後・介護に関する調査」を実施しました。そのうち介護の経験がある方を対象に「介護で大変なこと」を調査したところ、以下のランキング結果となりました。
順位 | 大変なこと | 全体 | 男性 | 女性 |
1位 | 相手とのコミュニケーション | 51.7% | 39.8% | 59.7% |
2位 | 排泄の介助 | 46.1% | 40.9% | 49.6% |
3位 | 精神面 | 42.7% | 28.0% | 52.5% |
4位 | 時間面 | 41.4% | 34.4% | 46.0% |
5位 | 食事の介助 | 38.4% | 40.9% | 36.7% |
6位 | 入浴の介助 | 32.8% | 34.4% | 31.7% |
7位 | 経済面 | 29.7% | 26.9% | 31.7% |
8位 | 徘徊 | 16.8% | 16.1% | 17.3% |
9位 | 身だしなみのケア | 14.7% | 14.0% | 15.1% |
10位 | とくにない | 6.9% | 9.7% | 5.0% |
引用:医療法人社団風林会リゼクリニック|老後・介護に関する調査
大変なことだと感じる内容には男女差があり、男性は「排泄の介助」と「食事の介助」に大変さを感じています。一方、女性は「相手とのコミュニケーション」と答えた方が多く、次いで「精神面」に大変さを感じている結果となりました。
大変なことの解決策は?
介護が必要な方の状態によって、在宅介護における家族の負担は大きくなります。在宅で暮らしている被介護者が抱えている傷病には、次のようなものがあります。
- 認知症
- 筋骨格系疾患(骨粗しょう症など)
- 障害を伴う眼科・耳鼻科疾患
- 心疾患
- 脳血管疾患
なかでも認知症を抱える方が多く、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、脳血管性認知症など種類はさまざまです。同じ認知症の種類でも症状に個人差が大きく、周辺症状である徘徊や妄想などによって介護が大変になるケースも少なくありません。
介護で大変なことランキングの1位から5位までの解決策を、認知症の方に対応するポイントとともに解説します。
相手とのコミュニケーション
相手とのコミュニケーションの大変さは、女性の介護者が感じやすい傾向にあります。義理の両親を介護する場合などは、言いたいことを我慢する場面もあるのではないでしょうか。
しかし、在宅介護はストレスが溜まりやすく、我慢し続けるのが最善とはいえません。第三者にも相談して間に入ってもらい、我慢しすぎない環境を作りましょう。
また、認知症などが原因で「性格が変わってしまった」と感じるケースもあります。認知症になると思考力や理解力などが低下するため、これまでできていたことができなくなることも少なくありません。
認知症の方は、失敗に対して怒られると不安や恐怖を抱いてしまいます。その結果、精神的に不安定になり、幻覚や徘徊、興奮などの認知症の周辺症状が出る恐れもあります。
本人が安心して過ごせるような環境作りを心掛け、信頼関係を大切にしましょう。
排泄の介助
排泄介助は、介護が必要な方の身体状況に応じてトイレやポータブルトイレ、おむつを使用する場合もあるでしょう。特におむつを使用している場合、介護者にも排泄介助のスキルが求められます。身体的な負担もあるでしょう。
排泄介助は、被介護者の身体状況に応じて介護用品を活用しましょう。例えば、布パンツで失敗してしまう場合はリハビリパンツ(紙パンツ)を使用してもらうなどの対応策があります。
また、認知症の方の場合、トイレの場所がわからずにトイレ以外の場所で排泄してしまうケースもあります。そのような場合には、日頃から排泄する時間をチェックし、タイミングを見計らってトイレの声掛けをしてみましょう。
精神面
介護は突然始まることが多く、介護離職を強いられる状況も少なくありません。精神的に追い詰められてしまうと、介護うつや虐待につながってしまう恐れもあります。
精神的な負担を和らげるには、介護サービスの利用が有効です。なかでもデイサービスやショートステイは介護の負担軽減を目的として利用する方もいます。
デイサービスは、施設に通って受けられるサービスです。施設によっては食事や入浴のサービスを行っている場合もあります。
ショートステイは、施設に泊まって受けられるサービスです。食事や入浴などのサービスを受けながら、最大30日間利用できます。
介護サービスの利用は被介護者の気分転換にもつながります。必要に応じて活用しましょう。
時間面
被介護者の身体状況によっては、多くの時間を介護に割かなければなりません。直接的な介護だけでなく、食事の準備や介助前の必要物品の準備などもあります。
介護にかかる時間が多く感じる場合、訪問介護のサービス利用が有効です。訪問介護は身体的な介助だけでなく、被介護者分の調理や掃除などのサービスが受けられます。
また、認知症で昼夜問わず徘徊する場合、事故や転倒を防止するために家族が付き添わなければいけない場面もあるでしょう。徘徊に対する対応策は次のとおりです。
- 日中に適度に運動する
- GPS端末を活用する
- 服や持ち物に名札をつける
- 近隣の人や交番に連絡しておく
なお、前頭側頭型認知症の方の場合、どのような状況であっても同じ行動を繰り返す特徴があります。決まった時間に決まった道を歩くなどの行動があるため、パターンを把握して対応しましょう。
食事の介助
食事の介助は、男性の方が大変だと感じる傾向があります。介護の食事は身体状況に応じて、食材を細かくしたりペースト状にしたりしなければなりません。
食事の準備に大変さを感じる場合、市販の介護食の活用も検討してみましょう。市販の介護食には、適切な介護食が選びやすいようにマークが記載されています。
例えばユニバーサルデザインフードには、次の区分ごとのマークがあります。
- 容易にかめる
- 歯ぐきでつぶせる
- 舌でつぶせる
- かまなくてよい
「かまなくてよい」介護食を自宅で作る場合、食材をペースト状にする必要があります。食材選びや調理の手間がかかるため、疲労を感じているときは活用してはいかがでしょうか。
また、認知症の方の場合、食事を認識できなかったり食べ方がわからなかったりするケースもあります。
食べ物が認識できない場合は、嗅覚や触覚などを刺激してみましょう。例えば、ご飯をおにぎりにして持ってもらう、温め直して香りを嗅いでもらうなどが有効です。
食べ方がわからない場合は、本人と一緒に食事をしてみましょう。人の食器やスプーンなどの使い方が目に入ることで食べる動作ができる可能性があります。
在宅介護で介護者がストレスを感じる原因は?
在宅介護において介護者である家族がストレスを感じる原因は、次の3つです。
- 1人で悩みを抱えてしまう
- 自分の時間が確保できない
- 十分な休息がとれない
それぞれ解説します。
1人で悩みを抱えてしまう
悩みを共有できる人がいないと、ストレスを感じる原因になります。
在宅介護は相談できたり手伝ってくれる家族がいなければ、1人で悩みや負担を抱え込んでしまいます。やむを得ず介護離職したことがきっかけで、他人との関わりが少なくなってしまうケースもあるでしょう。
自分の時間が確保できない
自分のプライベートな時間が確保できなければ、ストレスを感じる原因になります。介護が必要な方の状態によっては、24時間気を張っていなければならないケースもあるでしょう。
また、介護度が高くなるにつれて介護にかかる時間も多くなる傾向があります。介護に時間を割けば、自分の趣味などに費やす時間も必然的に少なくなってしまいます。
十分な休息がとれない
十分に休息できずに疲れがたまれば、ストレスを感じる原因になるでしょう。
介護が必要な方の状態によっては、昼間だけでなく夜間も対応が必要です。夜間のおむつ交換やたん吸引などが必要であれば、睡眠時間の確保も難しいでしょう。
睡眠不足によって疲労が回復しなければストレスがかかります。
在宅介護でストレスを感じたときの対処法
ストレスを放置してしまえば、介護うつや虐待の原因になるリスクが高まるでしょう。在宅介護でストレスを感じた時の対処法は、次の3つです。
- かかりつけ医に相談する
- 身近な人に相談する
- 介護技術を高める
それぞれ解説します。
かかりつけ医に相談する
在宅介護でストレスを感じたら、被介護者のかかりつけ医に相談しましょう。
かかりつけ医は被介護者の状態を把握しているため、悩みに対する具体的なアドバイスがもらえます。また、ケアマネージャーとも連携しているため、医師の意見によってサービスが見直される可能性もあります。
健康面で気になることだけでなく介護に関する日常的な悩みを相談すれば、解決につながるかもしれません。
身近な人に相談する
家族や親戚、友人などの身近な人に相談する方法もあります。ほかにもケアマネージャーや訪問介護で訪れるヘルパーなどに相談してもよいでしょう。
ケアマネージャーは介護サービスにかかわるケアプランを作成するため、現在ストレスを感じている内容を解決する提案が受けられる可能性もあります。
介護技術を高める
排泄介助や食事介助の場面でストレスを感じる場合は、介護技術を高められるように意識しましょう。特におむつ交換では、介護者のスキルによってかかる時間や身体への負担に差が出ます。
家族を介護する方を対象とした介護教室を開催する自治体もあるため、介護技術の向上に役立ててみましょう。
まとめ
在宅介護で感じる大変なことには個人差がありますが、さまざまな要因でストレスを感じる傾向があります。ストレスを感じたまま介護を続ければ、介護者である家族が体調を崩してしまう恐れもあるでしょう。
介護で大変なことランキングと解決策を踏まえ、在宅介護の負担軽減に役立てましょう。