「寝たきりの親を在宅介護しているけど、介助方法が合っているのか不安」
「寝たきりの人が利用できるのはどんなサービスがあるの?」
このような疑問をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。寝たきりの方の介護は身体介助が多いため、方法を間違えると病気や怪我につながる恐れもあります。
本記事では、寝たきりの方を介護する際に注意すべきポイントや在宅で受けられるサービスを中心に解説します。
記事目次
寝たきりの方の身体状況
介護の必要性を示す指標の1つに要介護認定があります。要介護認定は介護サービスの必要度によって、要支援1・2、要介護1〜5の7つの区分に分けられます。なかでも要介護の方は、以下の状態であると考えられています。
要介護1 | 要支援状態から、手段的日常生活動作を行う能力がさらに低下し、部分的な介護が必要となる状態 |
要介護2 | 要介護1の状態に加え、日常生活動作についても部分的な介護が必要となる状態 |
要介護3 | 要介護2の状態と比較して、日常生活動作及び手段的日常生活動作の両方の観点からも著しく低下し、ほぼ全面的な介護が必要となる状態 |
要介護4 | 要介護3の状態に加え、さらに動作能力が低下し、介護なしには日常生活を営むことが困難となる状態 |
要介護5 | 要介護4の状態よりさらに動作能力が低下しており、介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能な状態 |
引用:厚生労働省|2015年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~
寝たきりの方は要介護4または5に該当するケースが多く、要介護認定のなかでも特に介護が必要な区分です。要介護4、要介護5の方の身体状況について解説します。
要介護4
1日あたり90分以上110分未満もの時間が介護にかかると判断された場合、要介護4に認定される可能性があります。
要介護4の方は、日常生活を送るうえで全面的な介護が必要です。立った状態や座った状態の保持が難しく、トイレや入浴をはじめとした日常的な場面での介護が欠かせません。
また、認知症が進行していたり誤食や徘徊などの周辺症状があったりするケースもあります。
要介護5
1日あたり110分以上もの時間が介護にかかると判断された場合、要介護5に認定される可能性があります。介護にかかる時間に上限がないため、個人差が大きいといえるでしょう。
要介護5の方は、介護がなくては日常生活を送るのが不可能とされています。介護者とコミュニケーションをとることが難しく離床時間も減るため、褥瘡(床ずれ)が発生する危険性もあるでしょう。
寝たきりでなくても、意思疎通の困難さによって要介護5に認定されるケースもあります。
寝たきりの方の介護で注意すべきポイント
寝たきりの方の場合、生活のあらゆる場面で介護が必要ですが、なかでも注意したいのは次の場面における介助です。
- 排泄介助
- 食事介助
- 更衣介助
- 体位変換
それぞれ解説します。
排泄介助
排泄介助には、トイレやポータブルトイレを使用したり、おむつ交換するなどの方法があります。なかでも寝たきりの方の場合、おむつを使用しているケースが多いでしょう。
寝たきりの方のおむつ交換をする場合、次のポイントに注意しましょう。
- プライバシーと自尊心に配慮した環境を整える
- 交換前に必要物品は揃えておく
- 皮膚状態を観察する
おむつ交換時は羞恥心を強く感じるため、カーテンを閉めるなどして環境に配慮が必要です。排泄に失敗してしまった場合でも、不快な声掛けや態度は控えるよう心掛けましょう。
また、寝たきりの方は自分で寝返りが打てないため、皮膚に赤みなどがないか観察しましょう。皮膚の赤みは褥瘡の初期段階の可能性もあるため、発見した場合はかかりつけ医などに相談しましょう。
なお、介護施設では1日あたり4回~7回、おむつ交換を実施しています。しかし、尿量や皮膚状態などによって適切な交換回数は個人差があるため、疑問を感じた場合はケアマネージャーなどに相談してみましょう。
食事介助
寝たきりの方の食事介助は、誤った方法で行うと誤嚥性肺炎などを引き起こしかねません。食事介助時には、次のポイントに注意しましょう。
- 食べやすい食事を用意する
- 食事前に姿勢を確認する
- 飲み込んだことを確認してから、次の一口を入れる
寝たきりの方は食べ物を噛む力が弱くなっているため、柔らかくて食べやすい食事を用意しましょう。
介護食にはきざみ食やソフト食、ミキサー食などの種類があります。食事中にむせ込んでいないかなどを観察し、食事の形態が本人の状態に合っているか確認しましょう。
また、食事前には適切な姿勢になれるように介助しましょう。寝たきりの方は座っている姿勢の維持が難しいため、介護者が事前に確認する必要があります。
例えばベッドの上で食事する場合、背もたれは45度以上の角度に起こして頭の後ろに枕などを置きましょう。首がやや曲がっている状態であれば誤嚥しにくくなります。
食事介助時には、口の中の食べ物を飲み込んだか確認しながら介助しましょう。食欲がなかったり眠気がある状態で食事を続けると、誤嚥や窒息につながる恐れもあります。
認知症の方であれば、食事に集中できなかったり食事を認識できない場合もあります。本人の様子を見ながら食事介助を進めましょう。
更衣介助
寝たきりの方の身体状況はさまざまですが、麻痺などがあることも少なくありません。更衣介助時には、次のポイントに注意しましょう。
- 脱健着患(だっけんちゃっかん)を意識する
- 無理に身体を動かさない
脱健着患とは、麻痺側から服を着用し、脱ぐときは麻痺がなく動かしやすい側から服を脱ぐことをいいます。無理に介助すると、痛みを感じたり怪我してしまったりするリスクが高まるため、声掛けしながらゆっくりと介助しましょう。
体位変換
寝たきりの方は自力で寝返りを打てないため、褥瘡が発生するリスクがあります。褥瘡を防ぐのに役立つのが体位変換です。
体位変換はベッド上で身体の向きを変えることで、一部分に圧力が集中しづらくなります。使用しているマットレスの種類にもよりますが、2時間ごとの体位変換が推奨されています。
体位変換を行う際は、寝たきりの方の膝を立ててベッドと身体が接する面積を小さくすると、摩擦が少なくなるため体位変換しやすくなるでしょう。力尽くで身体を動かすと、介護する側もされる側も身体を痛めてしまう恐れがあるため注意しましょう。
在宅介護で受けられるサービスは?
寝たきりの方が自宅で受けられるのは次のようなサービスです。
- 訪問介護
- 訪問入浴
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
それぞれのサービス内容を解説します。
訪問介護
訪問介護は、ホームヘルパーが訪問し、食事や排泄などの身体介助、掃除や調理などの生活援助サービスが受けられます。褥瘡の処置や摘便などの医療行為にあたるものは、ホームヘルパーでは対応できないため注意が必要です。
訪問入浴
訪問入浴は、介護職員や看護職員が浴槽などを持参して訪問し、入浴のサービスを受けられます。寝たきりで自宅の浴槽が使用できない方でも、安心して入浴できるでしょう。
夜間対応型訪問介護
夜間対応型訪問介護は、夜間帯にホームヘルパーが訪問し、排泄介助や安否確認などのサービスが受けられます。また、体調不良時や転倒して身動きが取れないときなどの緊急時に、ヘルパーを呼べば対応してもらうことも可能です。
夜間の排泄介助に負担を感じていたり、いざという時に不安がある場合に活用できるサービスだといえるでしょう。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、ホームヘルパーと看護師が連携し、利用者のニーズに応じたタイミングでサービスが受けられます。24時間365日対応しているため、利用者の心身の状況に合わせて柔軟に対応してもらえます。
退院直後で家族だけで過ごすのが不安な場合でも、看護師が連携しているため安心して生活できるでしょう。
寝たきりの方の介護にかかる費用
要介護度別の介護にかかる月額費用は以下の表のとおりです。
要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
5.3万円 | 6.6万円 | 9.2万円 | 9.7万円 | 10.6万円 |
要介護度が高くなるにつれて介護にかかる費用も高くなっており、寝たきりの方が該当する要介護5は10.6万円という結果となりました。
介護サービスを利用する場合、高額介護サービス費などの制度を利用すれば負担が軽くなる可能性があります。在宅・施設のいずれでも利用可能なため、費用面に不安がある方は活用してみましょう。
寝たきりの方が生活する場で多いのは?
寝たきりの方が生活する場で多いのは、特別養護老人ホームなど施設です。要介護5の方の56.4%が施設で生活しています。
自宅で生活している要介護5の方の割合は40.4%であり、施設と比較すると少ないといえるでしょう。
在宅介護が無理だと感じたときの対処法
在宅介護は心身ともに負担がかかります。寝たきりの方の介護であれば、身体的な介護が多いことから腰痛に悩む方も少なくありません。
在宅介護が無理だと感じたときは、次の2つの対処法を試してみましょう。
- 身の回りの人に相談する
- 施設への入所も検討する
それぞれ解説します。
身の回りの人に相談する
在宅介護が無理だと感じたら、身近な人に相談してみましょう。兄弟や親戚による協力が得られれば、身体の負担だけでなく、精神的にも余裕ができるでしょう。
家族や友人に相談するのをためらう場合は、ケアマネージャーやヘルパーに相談しましょう。介護の専門職であれば、悩みに対して実践的な解決策や利用できるサービスを提案してもらえる可能性もあります。
言葉にすることで気分転換や悩みの解決につながるため、1人で抱え込まないようにしましょう。
施設への入所も検討する
在宅介護が無理だと感じた場合、施設への入所を検討する方法もあります。寝たきりの要介護4・5の方であれば、特別養護老人ホームなどの施設に入所しやすくなる可能性があります。
24時間スタッフが常駐している施設がほとんどであり、プロによるケアが受けられるため安心して生活できるでしょう。費用や立地、サービス内容などは施設によって差があるため、入所を検討する場合は複数の施設を比較しましょう。
まとめ
寝たきりの方の在宅介護は、特に身体的な負担が大きい傾向があります。介助方法を一歩間違えてしまうと、病気や怪我をしてしまうリスクも抱えています。
負担を感じた場合は1人で抱え込まず、在宅で利用できるサービスや施設への入所も検討してみましょう。