養護老人ホームは、生活に困った高齢者が頼れる施設です。しかし、実際にどのような施設であるかはあまり知られていないかもしれません。この記事では、養護老人ホームに関することを詳しく解説しますので、参考にしてみてください。
記事目次
養護老人ホームとは?
養護老人ホームとは、さまざまな理由から自宅で生活できない高齢者を受け入れる施設です。特に、経済的に困っている高齢者や身寄りがない人を対象としています。
自立した生活を送れるための支援を目的としているため、介護サービスは原則提供されません。また、生涯にわたる入所も不可です。養護老人ホームでは、経済的なアドバイスや、地域とのつながりを深める行事などの支援
が職員によって行われます。
これは生活に苦しむ高齢者を保護する目的で、戦前に養老院が設立された背景があるためです。現在では、複数回の法改正を経て2006年に現在の入所条件が定められ、生活に困窮する高齢者のセーフティーネットとしての役割を果たしています。これらの目的から養護老人ホームは「高齢者最後の砦」ともいわれています。
養護老人ホームの3つの特徴
養護老人ホームの特徴には、以下の3つが挙げられます。
- 介護サービスは提供されない
- 待機になりにくい
- 収入によって料金が変動する
1.介護サービスは提供されない
養護老人ホームでは、基本的に介護サービスは提供されていません。介護が必要な場合、養護老人ホームではなく、民間が運営してる介護付きマンションや特別養護老人ホームを選ぶとよいでしょう。
介護サービスが提供されないことから、養護老人ホームには介護職員がいない場合がほとんどです。もしも、介護サービスを受けたい場合は外部へ依頼する必要があります。
2.待機になりにくい
養護老人ホームは、入居待機になりにくいのも特徴です。特別養護老人ホームは月に必要な利用料が安く、入居希望者が非常に多い傾向にあります。
また、人気施設の場合は申し込みから、実際に入居できるまで数年単位で待機しなければならない場合も考えられるでしょう。しかし、養護老人ホームは枠にも空きが多く、自治体の判断とはなりますが入所しやすい傾向にあります。
3.収入によって料金が変動する
養護老人ホームは、前年度の収入によって利用料金が変動します。
最高でも14万円が月の利用料金となりますが、所得状況によっては無料となることもあり、困窮者支援の役割を果たしています。養護老人ホーム利用料の目安は以下のとおりです。
- 144〜150万円未満:81,100円
- 40〜42万円未満:10,800円
- 27万円未満:無料
また、150万円以上の収入があった場合、自治体の定めに応じて計算されます。
養護老人ホームの入所基準
養護老人ホームの入所基準は、環境・経済的に困窮している65歳以上の高齢者です。入居決定権は自治体が有しています。
そのため、事前に調査が行われ、入居の可否が判断される仕組みです。多くの場合、介護の必要がない人が入居対象となりますが、要介護認定を受けている人でも可能な地域もあります。
入所基準は自治体によって大きく異なるため、事前に確認が必要です。入所を認められる具体的なケースは、以下のとおりです。
- 身寄りがない
- 無年金・無収入
- 立ち退きを勧告された
これらの境遇はいずれも生活に困窮していると判断されやすく、自治体の審査を経て入居を認められます。
養護老人ホームの利用料金
利用料金については、前述した月額が必要です。紹介した以外にも細かく収入区分がされており、無理のない月額負担で入居できます。
生活保護を受けている場合は、免除や減免措置が認められることがほとんどです。また、入所時に一時金を支払う必要がありません。これは、養護老人ホームの目的である「自立支援」から長期利用できないことが理由です。
つまり、養護老人ホームは事前に入居準備をする必要がありません。金銭的な心配をしなくても、食事や身の回りを支援してもらえるのは心強いポイントだといえるでしょう。
養護老人ホームのメリット
養護老人ホームのメリットは、経済的な支援を受けられることが挙げられるでしょう。ほかの高齢者施設と比べると低額で入居できるため健康面での不安を軽減でき、金銭面で困窮している高齢者にとって大きなメリットだといえるでしょう。
家庭や経済的な事情によって、老人ホームの利用が難しい場合は養護老人ホームを検討することをおすすめします。また、緊急時にも対応してもらえることもメリットです。
養護老人ホームには、24時間職員が配置されています。そのため、緊急事態が発生したとしても対応してくれます。「何かあっても大丈夫」と思える環境は、高齢者の自立を促す土台となるでしょう。
養護老人ホームのデメリット
養護老人ホームのデメリットは、自分の意志だけで入居できないことや、長期間入居できないことなどが挙げられます。入居の決定権は自治体が有しているため「自分が困っている」との判断だけでは養護老人ホームに入れません。
また、困窮度の判断基準は自治体によって異なるため、同じ境遇でも入所を認められない場合があります。そのため、入居基準が極端に高い地域に住んでいる場合、入居できないことも考えられるでしょう。
さらに、入居できたとしても退去を命じられることもデメリットです。たとえば、介護が必要になった・困窮していないと判断された場合などは、退去を求められる可能性があります。
これは養護老人ホームが「自立を支援する」目的であることが原因と考えられ、施設が提供しているサービスや目的と高齢者の状態がマッチしなくなったら 退去しなければなりません。
養護老人ホームに入所する5つの流れ
養護老人ホームに入所する流れは、以下の5つの段階を経ます。
- 相談
- 申込
- 調査
- 決定
- 入所
まずは、自治体の窓口や民生委員、近くに養護老人ホームがある場合は、相談してみるとよいでしょう。
1.相談
養護老人ホームの入所を希望する場合、まずは自治体の福祉課や地域包括センターへ相談しましょう。また、近くに住んでいる民生委員に話をするのもよいでしょう。
自宅周辺に養護老人ホームがある場合、直接問い合わせることも可能です。自分が入所基準を満たしているかは自治体にしか判断できないため、困っていると感じた場合はすぐに相談窓口へ問い合わせるようにしましょう。
2.申込
相談して入所基準を満たしているとわかれば、自治体の窓口へ入所の申し込みをします。申し込みは本人か家族に限られ、必要事項を書類に記載して窓口に提出してください。
書類の内容としては、入居申込書と収入証明資料、健康診断書などが必要です。また、扶養義務者の所得税額申告書が必要となる場合もあります。求められる書類は自治体によって変わることあるため、事前に確認しましょう。
3.調査・決定
申し込み後、市の職員が自宅へ訪問して調査が行われます。このときに入所希望者の養護状況、住環境、経済的な問題など、あらゆる観点から生活が困窮しているか否かを判断します。
この調査結果と健康診断をもとに、入所判定委員会が入所の必要性を判断します。もしも、入所が認められなかった場合は、ケアマネージャーなどに相談しましょう。
4.入所
入所判定委員会の審議を経て、入所が認められた場合は自治体から養護老人ホームと本人に通知されます。そののち、身元引き受け人の確認や日程などを自治体と養護老人ホームが連携して、入所できます。
まとめ
養護老人ホームは、経済的に困窮した高齢者を支援してくれる施設です。施設の目的上、長期間の入居はできませんが、自立するためのサポートを受けられるのは大きなメリットだといえるでしょう。
本記事では、養護老人ホームの特徴や入所基準から、入所するときの流れまで解説しました。高齢者施設への入所を検討する際の参考にしてみてください。