介護保険負担限度額認定証とは?対象者や申請時の3つの注意点を解説します!

介護保険負担限度額認定証とは?対象者や申請時の3つの注意点を解説します!

「介護保険負担限度額認定証ってどんなもの?」

「申請時に気を付けることはどんなこと?」

このような疑問を持つ方も少なくないのではないでしょうか。

負担限度額認定の対象となる方に交付されるのが「介護保険負担限度額認定証」です。特別養護老人ホームなどの介護保険施設で活用できます。

本記事では、負担限度額認定の概要と介護保険負担限度額認定証を申請する際の注意点を中心に解説します。

介護保険負担限度額認定証とは?

介護保険負担限度額認定証とは?

負担限度額認定の対象となる方に交付される証明書です。

負担限度額認定とは?

負担限度額認定とは?

負担限度額認定は、特別養護老人ホームなどの介護保険施設やショートステイなどの利用時にかかる費用を軽減できる制度です。軽減できる費用は、食費と居住費の2つが対象となります。

施設で受ける介護サービスにかかる費用には介護保険が適用されるため、かかった費用の1割~3割を利用者が負担します。しかし、食費と居住費には介護保険が適用されないため、全額を利用者が負担しなければなりません。

そこで、利用者負担が過重にならないように作られた制度が、負担限度額認定制度です。

所得や資産に応じて決められた区分ごとに、負担限度額が設定されます。その限度額を対象費用が上回れば、特定入所者介護サービス費として介護保険から支給される仕組みとなっています。

対象者

負担限度額認定は誰でも受けられるわけではなく、以下の要件をすべて満たす方が対象です。

  • 本人およびその配偶者が市町村民税非課税である
  • 本人と住民票上、同一世帯である方が市町村民税非課税である
  • 預貯金等合計額が基準額以下である

配偶者には、法律上の婚姻はしていない内縁関係の方も含まれます。

区分

満たした要件ごとに、次の区分に分けられます。

区分所得要件預貯金等要件(夫婦の場合)
第1段階生活保護を受給している方要件なし
世帯全員が市町村民税非課税で、老齢福祉年金を受給している方1,000万円(2,000万円)以下
第2段階世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金年収入額とそのほかの合計所得金額が80万円以下650万円(1,650万円)以下
第3段階①世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金年収入額とそのほかの合計所得金額が80万円超~120万円以下550万円(1,550万円)以下
第3段階②世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金年収入額とそのほかの合計所得金額が120万円超500万円(1,500万円)以下

参考:横浜市|介護保険制度における負担限度額認定証とは何ですか。

預貯金等に含まれるもの

要件である「預貯金等」に該当するのは、次の資産です。

預貯金等に含まれるもの確認方法
預貯金(普通・定期)通帳の写し(インターネットバンクであれば口座残高ページの写し)
有価証券(株式、国債、地方債、社債など)証券会社や銀行の口座残高の写し(ウェブサイトの写しも可)
金・銀(積立購入を含む。)など購入先の口座残高によって時価評価額が容易に把握できる貴金属購入先の口座残高の写し(ウェブサイトの写しも可)
投資信託銀行、信託銀行、証券会社等の口座残高の写し(ウェブサイトの写しも可)
現金自己申告

引用:厚生労働省|介護保険施設における負担限度額が変わります

一方で、次の資産は預貯金等に含まれません。

  • 生命保険
  • 自動車
  • 腕時計
  • 宝石などの時価評価額の把握が難しい貴金属
  • 絵画
  • 骨董品
  • 家財など

なお、借入金や住宅ローンなどの負債は、預貯金等の額から差し引いて計算します。

申請手続き

申請時に必要な書類の例は次のとおりです。

  • 介護保険被保険者証
  • 介護保険負担限度額認定申請書
  • 同意書
  • 預貯金等の資産額がわかる書類の写し

必要書類は市区町村によって異なるため、あらかじめ確認しましょう。書類を揃えて市区町村の担当窓口へ提出し、その後1週間程度で介護保険負担限度額認定証が届きます。

必要書類に不備があると、交付が遅れる可能性もあります。不備がないように注意しましょう。

介護保険負担限度額認定証が活用できる施設は?

介護保険負担限度額認定証が活用できる施設は?

介護保険負担限度額認定証を利用先の介護保険施設に提示すれば、費用が軽減できます。活用できる施設は次のとおりです。

  • 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院

加えてショートステイも対象となります。なお、デイサービスや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などは対象外です。

負担限度額認定が適用された場合の費用例

負担限度額認定が適用された場合の費用例

負担限度額は所得だけでなく、施設の種類や居室タイプによっても差があります。施設ごとに具体的な費用例をご紹介します。

介護老人保健施設(老健)の場合

介護老人保健施設の多床室・ユニット型個室の費用例は、以下の表のとおりです。

基準費用額(日額)負担限度額(日額)
第1段階第2段階第3段階①第3段階②
食費1,445円300円390円650円1,360円
居住費多床室377円0円370円370円370円
ユニット型個室2,006円820円820円1,310円1,310円

参考:介護サービス情報公表システム|サービスにかかる利用料

多床室は第1段階以外差はありませんが、ユニット型個室は490円もの差があります。

特別養護老人ホーム(特養)の場合

特別養護老人ホームの多床室・ユニット型個室の費用例は、以下の表のとおりです。

基準費用額(日額)負担限度額(日額)
第1段階第2段階第3段階①第3段階②
食費1,445円300円390円650円1,360円
居住費多床室855円0円370円370円370円
ユニット型個室2,006円820円820円1,310円1,310円

参考:介護サービス情報公表システム|サービスにかかる利用料

多床室の基準費用額は、介護老人保健施設と比べると高くなります。しかし、負担限度額に差はありません。

介護保険負担限度額認定証を申請する際の3つの注意点

介護保険負担限度額認定証を申請する際の3つの注意点

介護保険負担限度額認定証を申請する際は、次の3つの点に注意しましょう。

  • 世帯分離していても所得は合計される
  • 生活保護受給者は必要書類が異なる
  • 不正受給すると加算金も含めた支払いを命じられるケースも

それぞれ解説します。

世帯分離していても所得は合計される

世帯分離などをしていて、住民票上では世帯が異なる場合もあります。しかし、そのような場合でも所得は合計されるため、注意しましょう。

法律上の婚姻はしていない内縁関係の方も同様です。なお、配偶者から暴力を受けたり行方不明になっていたりするケースは対象外となります。

生活保護受給者は必要書類が異なる

生活保護を受給されている方は、必要書類が異なるため注意しましょう。具体的には、通帳の写しなどの「世帯全員の預貯金等の資産額がわかる書類の写し」の提出は必要ありません。

不正受給すると加算金も含めた支払いを命じられるケースも

基準を上回る所得・資産であったことが判明し不正受給と判断された場合、加算金も含めた支払いを命じられるケースもあります。

給付された金額の返還のみにとどまらず、最大2倍の加算金が請求される可能性があります。通帳の明細ページの写しは記帳を済ませた状態で用意するなど、不正受給につながらないように細心の注意を払いましょう。

介護保険負担限度額認定証に関してよくある3つの質問

介護保険負担限度額認定証に関してよくある3つの質問

介護保険負担限度額認定証に関してよくある質問は次の3つです。

  • 介護保険負担限度額認定証の更新は必要ですか?
  • 介護保険負担割合証との違いはなんですか?
  • 介護保険負担限度額認定証がなくても受けられる負担軽減制度はありますか?

それぞれの疑問を解消していきましょう。

介護保険負担限度額認定証の更新は必要ですか?

更新が必要です。適用期間は毎年8月から翌年7月までの1年間であり、更新のお知らせが届く市区町村もあります。継続して利用したい場合は、忘れずに更新しましょう。

介護保険負担割合証との違いはなんですか?

介護保険負担割合証は、要介護・要支援認定を受けた介護保険被保険者に交付されます。介護サービスにかかる費用の負担割合を示す証明書であり、利用者の所得に応じて1割~3割の割合が記載されています。

対して介護保険負担限度額認定証は、負担限度額認定制度の対象となる方に交付される証明書です。食費と居住費が対象であり、介護保険負担割合証とは対象者と対象費用に違いがあります。

介護保険負担限度額認定証がなくても受けられる負担軽減制度はありますか?

市町村民税課税世帯であっても、特例減税措置が受けられる可能性があります。特例減税措置は、食費や居住費もしくはその両方について、負担限度額認定制度の第3段階②の負担限度額が適用される制度です。

対象要件は次のとおりです。

  1.  被保険者が属する世帯の構成員が2人以上であること
  2.  施設入所に伴い、第4段階の食費・部屋代の負担を行うこと
  3.  世帯の収入等から、施設の利用者負担(1割、2割または3割の自己負担、食費・部屋代の年間見込額を除いた額が80万円以下であること
  4.  世帯の預貯金等の合計額が450万円以下であること
  5.  日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと
  6.  世帯に介護保険料の滞納がないこと

引用:横浜市|市民税課税世帯の場合、介護保険施設に入所したときの負担軽減制度はありませんか。

上記すべての要件を満たせば、特例減額措置の対象となります。なお、ショートステイは対象外です。

まとめ

まとめ

介護施設で生活し続けるためにかかる費用は少なくありません。介護保険負担限度額認定証を活用すれば、特別養護老人ホームなどでかかる食費や居住費を軽減できます。

生活に必要な介護を受けながら安心して暮らすために、介護保険負担限度額認定証の申請も検討してみましょう。

この記事を書いた人

かいごマガジン編集部

かいごマガジン編集部です。
介護の専門的な情報をどこよりもわかりやすく紹介していきます。
また、世の中の介護がどのように変化していっているのか最新の情報も随時発信していきますのでお楽しみに!
※Twitterは準備中です。