「介護保険を利用したいけど、申請のタイミングがわからない」
「サービス利用までの流れを知りたい」
このような悩みをお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。介護保険を申請するタイミングは、入院中か在宅介護中かによって異なります。
本記事では、介護保険を申請するタイミングと介護サービス利用までの流れを中心に解説します。
介護保険の申請のタイミングは?
介護保険を申請する理由には、次のようなものがあります。
- 介護サービスを利用するため
- 介護サービスが必要になったときにすぐに受けたいから
- 人から申請を勧められたため
介護サービスに関連する理由が多く、なかには家族や親戚から勧められたタイミングで申請したケースもあります。申請のタイミングで一般的なのは、次の場面です。
- 入院中の場合
- 在宅介護している場合
それぞれの場面ごとに、申請のタイミングと注意点を解説します。
入院中の場合
入院中の場合、退院する1ヶ月~1ヶ月半前のタイミングで介護保険を申請しましょう。介護保険は申請してから認定されるまで、およそ30日かかります。
また、入院中は医療保険が適用されるため、介護保険は利用できません。退院後にすぐに利用するには、退院日から逆算して申請するタイミングを決めましょう。
なお、入院中に申請する場合は、次のポイントに注意しましょう。
- 身体状態が安定しなければ認定調査を受けられない
- 入院中の介護認定に基準を設けている市区町村もある
申請時には、病院のソーシャルワーカーや担当医に介護保険が申請できるか確認しましょう。また、入院中の介護認定に独自の基準を定めている市区町村もあるため、事前に確認しておくとスムーズです。
家族が遠方に住んでいるなどの理由で介護保険の申請が難しい場合は、病院のソーシャルワーカーに相談しましょう。代理申請を依頼することもできます。
在宅介護している場合
在宅介護している場合、生活するのに人の手が必要になったタイミングで介護保険を申請しましょう。
申請して認められれば、介護サービスが利用できます。そのため、本人や家族が適切な支援を受けるためにも、介護の必要性を感じたときが申請のタイミングといえるでしょう。
なお、要介護状態になる原因として、次の病気や状態があります。
- 認知症(アルツハイマー型など)
- 脳卒中(脳梗塞、脳出血など)
- 骨折・転倒
- 高齢による衰弱
- 糖尿病
- 関節の病気(リウマチなど)
- 脊椎損傷
上記の病気や状態であれば、要介護認定される可能性も高まるでしょう。
しかし、介護を受けることが恥ずかしいと感じる方も少なくありません。そのため、家族や親戚、主治医の勧めで申請するケースが多く、自ら決める方は少ないのが実情です。
介護保険を申請する際は、ご本人と相談したうえで進めるようにしましょう。
介護保険に申請できる人は?
介護保険に申請できる方は次のとおりです。
- 65歳以上の方
- 40歳から64歳までの医療保険加入者
それぞれの条件を解説します。
65歳以上の方
介護保険は、原則として65歳以上の方が要介護状態や要支援状態と認められた場合に利用できます。
要介護状態とは、寝たきりであったり認知症などで介護が必要な状態を指します。要支援状態とは、日常生活に支援が必要な状態です。65歳以上の方は第1号被保険者となります。
40歳から64歳までの医療保険加入者
40歳から64歳までの方でも、医療保険に加入しており特定疾病を患う方であれば、第2被保険者となります。特定疾病とは、次の16種類の疾病です。
- がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
【パーキンソン病関連疾患】
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
上記の特定疾病が原因で介護が必要になると、介護保険が利用できます。
介護保険申請に必要なもの
介護保険の申請に必要な書類は、次のとおりです。
- 介護保険認定申請書
- 介護保険被保険者証
- 健康保険被保険者証
- 身分証明書
- 主治医の情報がわかるもの
- マイナンバーがわかるもの
それぞれ解説します。
介護保険認定申請書
介護保険認定申請書は、市区町村の役所や役場で受け取れるほか、インターネットでも入手できます。記入する内容は以下のとおりです。
- 本人の氏名
- 生年月日
- 住所
- 介護保険の被保険者番号
- 主治医の情報など
なお、記入する内容は市区町村によって異なります。
介護保険被保険者証
介護保険被保険者証は、第1号被保険者になる65歳の誕生日を迎えると市区町村から送付されます。
健康保険被保険者証
40歳~64歳であり第2号被保険者に該当する場合、健康保険被保険者証が必要です。
身分証明書
身分証明書は、運転免許証やパスポートなどが該当します。
主治医の情報がわかるもの
主治医の情報がわかるものは、診察券などが該当します。市区町村から医師へ意見書の作成を依頼するため、以下の情報をまとめておきましょう。
- 医療機関名
- 所在地
- 電話番号
- 医師名
- 診療科
申請書に記載する場合もあります。
マイナンバーがわかるもの
マイナンバーがわかるものは、マイナンバーカードや通知カード、マイナンバーが記載された住民票のコピーなどの書類です。なお、必要書類は市区町村によって異なるため、申請先に確認しましょう。
介護サービスを利用するまでの流れ
介護サービス利用までの流れは、次のとおりです。
- 要介護認定を申請する
- 認定調査を受ける
- 審査判定
- 判定結果の通知
- ケアプランの作成
- 介護保険サービスの利用開始
1つずつ解説します。
要介護認定を申請する
介護保険に申請できる条件を満たしているか確認し、必要書類を揃えて市区町村の窓口に申請します。
認定調査を受ける
申請者の住まいに調査員が訪問し、認定調査が実施されます。認定調査員が調査するのは、次の項目です。
- 身体機能・起居動作
- 生活機能
- 認知機能
- 精神・行動障害
- 社会生活への適応
- 過去2週間に受けた特別な医療について
特別な医療とは、医師や看護師などによって実施される医療行為のことです。点滴や中心静脈栄養、人工肛門の処置などが該当します。
認定調査は、聞き取りや実際に行為を行うなどといった方法で実施されます。
審査判定
審査判定は、一次判定と二次判定の2段階です。
一次判定は、コンピューターを用いて全国一律の方法で実施されます。その結果と主治医意見書をもとに、介護認定審査会が開かれ判定されるのです。
判定結果の通知
「非該当(自立)」「要支援1・2」「要介護1~5」のいずれかに判定されます。申請してから、原則30日以内に認定結果が通知されます。
ケアプランの作成
介護保険を利用する場合は、ケアプラン(介護サービス計画書)の作成が必要です。
要介護1以上の方は、居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)に作成を依頼します。要支援の方は地域包括支援センターに相談しましょう。
介護サービスの利用開始
ケアプランの内容に沿って、介護サービスが提供されます。ケアプランに記載されていないサービスは受けることができないため、必要に応じてケアマネージャーに相談しましょう。
介護保険の申請に関してよくある3つの質問
介護保険に申請に関してよくある質問は、次の3つです。
- 申請を代行できるのはどのような人ですか?
- 介護認定を受けるメリットはありますか?
- 介護認定前でも介護サービスの利用は可能ですか?
それぞれの疑問を解消していきましょう。
申請を代行できるのはどのような人ですか?
おもに申請を代行できるのは、申請者の家族です。地域包括支援センターや居宅介護支援事業者等に代行してもらうことも可能です。
なお、代行者には委任状や身分証明書、マイナンバーカードなどの提示が求められる場合もあります。
介護認定を受けるメリットはありますか?
介護認定を受けるメリットは、次のサービスが受けられる点です。
- 居宅サービス
- 施設サービス
- 地域密着型介護サービス
- 住宅改修の資金補助
- 福祉用具のレンタル
- 福祉用具の購入費の補助
サービスに必要なケアプランは、本人の同意のうえで内容が決定されます。意図しないサービスを受ける心配もありません。
介護認定前でも介護サービスの利用は可能ですか?
利用可能です。介護保険は申請日にさかのぼって適用されるため、申請時点から介護サービスが利用できます。
しかし、認定されなかった場合、かかった費用は全額自己負担となります。見込みの要介護度より認定結果が低かった場合も、差額は自己負担となるため注意しましょう。
認定前に介護サービスを受けたい場合は、地域包括支援センターなどに相談しましょう。
まとめ
病気や転倒などによって、身体の状態が変わってしまうことも少なくありません。しかし、適切な介護サービスを受けられれば、自宅や施設で安全に生活できるでしょう。
家族全員が安心して生活し続けられるように、介護保険の申請のタイミングを考えてみてはいかがでしょうか。