「高齢者施設にはどんな種類があるの?」
「選び方にはどんなポイントがあるの?」
このような疑問をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。
高齢者施設には公的施設と民間施設があり、費用や対象者、サービス内容などが異なります。終身で利用するのが難しい施設もあるため、希望条件を明確にして施設を選ぶ必要があるでしょう。
本記事では、高齢者施設の種類と選び方のポイントを中心に解説します。
記事目次
高齢者施設には公的施設と民間施設の2種類ある
高齢者施設と呼ばれる老人ホームや介護施設には、公的施設と民間施設の2種類あります。
公的施設は国や地方自治体によって運営されており、費用を抑えられる傾向があります。在宅介護が困難な方を優先的に受け入れており、入所条件が厳しい施設も少なくありません。
費用面で人気があることから、入所まで時間がかかるケースもあります。
民間施設は株式会社などによって運営されており、公的施設と比べると費用は高めです。しかし、外食産業や警備会社などのさまざまな企業が参入しており、それぞれの強みを活かしたサービスが提供されています。
比較的入所しやすいのも特徴ですが、入居一時金などが必要になる施設もあります。
公的施設一覧
公的施設の種類は次のとおりです。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護医療院
- 軽費老人ホーム
- 養護老人ホーム
それぞれの特徴を解説します。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは、身体的または精神的な理由によって在宅生活が困難な方が入所し、食事や入浴、排泄などの介護が受けられる高齢者施設です。対象者は次のとおりです。
- 要介護3~5に認定されている65歳以上の方
- 特定疾患があり要介護3~5に認定されている40歳~64歳の方
- 特例によって入所が認められた要介護1・2の方
特別養護老人ホームは次の3種類あり、それぞれ特徴が異なります。
種類 | 特徴 |
広域型 | 居住地に関係なく申し込める |
地域密着型(サテライト型) | 広域型特養や病院などを本体施設として、その近隣で運営しているスタッフの人員配置基準や設備基準が緩和されている |
地域密着型(単独型) | サテライト型と異なり、本体施設はないユニット型が多く、少人数で家庭的な雰囲気 |
地域サポート型 | 在宅で生活する高齢者が対象24時間365日、巡回訪問や相談、緊急対応などのサービスが提供される |
特別養護老人ホームには経管栄養や喀痰吸引などの医療的ケアに対応している施設もあります。看取りを実施している施設であれば、終身で利用できるでしょう。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設は、介護を必要とする方の自立をサポートする高齢者施設です。リハビリを中心として、生活に必要な介護や医療的ケアが受けられます。対象者は次のとおりです。
- 65歳以上で要介護度1~5の方
- 特定疾患があり要介護認定されている40歳~64歳の方
- 病状が安定していてリハビリテーションが必要な方
介護老人保健施設は次の5つの区分に分けられます。
- 超強化型老健
- 在宅強化型老健
- 加算型老健
- 基本型老健
- そのほか
退所時の指導やリハビリの充実度によって、区分が分けられています。なかでも超強化型・在宅強化型・加算型は在宅復帰と在宅支援の機能が高いと認められている介護老人保健施設です。
在宅復帰を目指す施設であるため、入所期間は原則3ヶ月と定められています。
介護医療院
介護医療院は、介護を必要とする方が療養しながら生活できる高齢者施設です。日常的に医療的ケアや生活に必要な介護を受けられます。対象者は次のとおりです。
- 65歳以上で要介護1~5の方
- 特定疾患があり要介護認定されている40歳~64歳の方
- 日常的に医療的ケアが必要な方
介護医療院はⅠ型とⅡ型の2種類あり、Ⅰ型は重い身体疾患がある方や身体合併症がある認知症の高齢者の方でも安心して利用できます。
Ⅱ型は、容体が比較的安定している方が対象です。いずれの介護医療院も長期にわたって利用できます。利用者の看取り・ターミナルを支える役割もあるため、医療的ケアが必要であっても終身で利用可能です。
軽費老人ホーム
軽費老人ホームは家族による援助が難しく、日常生活に不安のある方が入居できる住まいです。軽費老人ホームは次の5種類あり、それぞれ対象者とサービス内容が異なります。
軽費老人ホームの種類 | サービス内容 | 対象者 |
軽費老人ホームA型 | 食事提供生活支援 | 独立して生活するには不安があると認められた60歳以上の方 |
軽費老人ホームB型 | 生活支援 | 身体機能等の低下などが認められる60歳以上の方(自炊ができる程度) 独立して生活するには不安があると認められた方 |
都市型軽費老人ホーム | 食事提供生活支援 | ※ケアハウス対象者を想定 |
ケアハウス(軽費老人ホーム) | 食事提供生活支援 | 自立した日常生活を営むことに不安があると認められた60歳以上の方 家族による援助が困難な方 |
ケアハウス(特定施設入居者生活介護) | 食事提供生活に必要な介護(入浴・排泄・食事の介助など)機能訓練 | 要支援・要介護認定された60歳以上の方 |
参考:全国老人福祉施設協議会|自立した尊厳ある生活を支える軽費老人ホーム・ケアハウス
なお、特定施設入居者生活介護に指定されていない軽費老人ホームは、個別に介護サービス事業者と契約しなければ、介護が受けられません。家庭復帰や入院などにより、軽費老人ホームを退去するケースもあります。
養護老人ホーム
養護老人ホームは、生活が困難で経済的にも厳しい状況に置かれている方が、社会復帰にかかわるサポートを受けられる高齢者施設です。養護を目的としており、食事の提供や健康管理などの自立支援が受けられます。
対象者は、現在の環境では生活が難しく、経済的にも厳しい状況であると認められた65歳以上の方です。具体的な入所者像は次のとおりです。
- 経済的に困窮している方(無年金など)
- 身体的な障害を持つ方
- 特別養護老人ホームなどに入居できない方
- 虐待を受けている方
介護が必要な方であっても、介護サービスを個別に契約すれば養護老人ホームで生活できます。
民間施設一覧
民間施設の種類は次のとおりです。
- 有料老人ホーム
- グループホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- シニア向け分譲マンション
それぞれの特徴を解説します。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、高齢者が心身の健康を保ち、安定して生活できるように配慮された住まいです。有料老人ホームには3種類あり、それぞれ対象者とサービス内容が異なります。
種類 | 特徴 | 対象者 |
介護付き有料老人ホーム | 介護度に応じて必要な介護が受けられる | 65歳以上で介護が必要な方 |
住宅型有料老人ホーム | 生活支援が受けられ、介護が必要なった場合は訪問介護サービスなどが受けられる | 60歳以上で介護が必要な方自立している方 上記のいずれも対象 |
健康型有料老人ホーム | 自立している健康な方が生活を送る | 60歳以上で自立しており介護が必要ない方 |
なお、健康型有料老人ホームは、介護が必要になった場合は退去しなければなりません。住宅型や介護付き有料老人ホームが隣接している施設もあります。
グループホーム
グループホームは、認知症の方が共同生活を送る高齢者施設です。自宅に近い環境で、食事や入浴、排泄などの介護が受けられる住まいです。対象者は次のとおりです。
- 65歳以上で要支援2または要介護1~5の方
- 特定疾患があり要介護認定されている40歳~64歳の方
- 医師により認知症と診断された方
療養上の世話や喀痰吸引などが難しいことが理由となり、グループホームを退去するケースもあります。退去後の行き先は、医療機関や特別養護老人ホームなどがあります。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者の安心を支える介護と医療が連携したサービスが受けられる住まいです。安否確認や生活相談に加え、食事の提供や生活支援などが受けられる住宅もあり、建物はバリアフリー構造で高齢者に配慮されています。
- 60歳以上の方
- 特定疾患があり要介護認定されている40歳~64歳の方
介護が必要な方や認知症の方を受け入れている場合もあります。体調悪化や要介護度が高くなった場合は退去となる可能性もあるため、あらかじめ確認しましょう。
シニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションとは、高齢者が住みやすいように配慮されたバリアフリーの住まいです。フィットネスジムやシアタールームなどの設備や、食事の提供や家事サポートなどが受けられるマンションもあります。
対象者は自立した高齢者ですが、マンションによって年齢などの条件は異なります。
購入後は売却や譲渡、賃貸など自由に行うことができ、リフォームも可能です。ただし、介護が必要になった場合は、外部の介護サービス事業所と契約する必要があるため注意しましょう。
高齢者施設選びの3つポイント
高齢者施設を選ぶ際のポイントは、次の3つです。
- 希望条件を決めておく
- 資料請求などで情報収集する
- 窓口で相談する
それぞれ解説します。
希望条件を決めておく
高齢者施設を選ぶ際は、希望条件をあらかじめ決めておきましょう。
施設選びのうえで重視したいのは、施設がある地域や費用、提供されるサービス内容などです。高齢者施設のなかには、看取りや医療的ケアなどが受けられない施設もあります。
終身で利用するのであれば、医療的ケアなどが必要になった場合にどこまで対応可能かを確認しておきましょう。
資料請求などで情報収集する
資料請求やインターネットで情報収集するのもポイントです。
月々の費用だけでなく、入居一時金が必要な施設もあります。そのため、出来る限り情報収集し、入居後に後悔しないように準備しましょう。
なお、特別養護老人ホームなどでは、施設で短期間過ごせるショートステイというサービスもあります。在宅で生活している要支援・要介護者が対象であり、最大30日まで利用可能です。
ショートステイを利用すれば、施設での生活が実際に体験できます。見学や資料だけではわからない部分も体感できるのは、施設選びに大いに役立つでしょう。
窓口で相談する
高齢者施設は種類が多いため、情報収集や施設選びがしづらいと感じる場合もあるかもしれません。そんなときに相談できるのは、次の相談窓口です。
- ケアマネージャー
- 地域包括支援センター
- 老人ホーム紹介センター
- インターネットポータルサイト
すでに介護サービスを受けている場合、担当のケアマネージャーに相談してみましょう。ケアマネージャーはさまざまな施設とやり取りしているため、介護の情報だけでなく施設に関する情報にも精通しています。
入居を希望する方の身体状況も把握しているため、相性のよい高齢者施設を提案してもらえるでしょう。
希望条件ごとの高齢者施設の選び方
高齢者施設に求める条件は、次のようなものがあります。
- 日常的に介護が必要
- 自立しているが1人での生活が不安
- 費用を負担できるか心配
条件ごとにおすすめの施設をご紹介します。
日常的に介護が必要
日常的に介護が必要な場合は、特別養護老人ホームがおすすめです。特別養護老人ホームは生活に必要な介護や、リハビリやレクリエーションなどのサービスが受けられます。
原則として要介護3以上の高齢者を受け入れているためスタッフの介護技術も高く、安心して介護が受けられるでしょう。
自立しているが1人での生活が不安
1人で生活することが不安な場合は、住宅型有料老人ホームがおすすめです。
住宅型有料老人ホームは、自立の方から介護が必要な方まで入居できます。食事提供や生活支援、緊急時対応などの健康管理サービスが受けられるため、万が一に備えられます。
介護が必要になった場合でも、介護サービスを個別に契約できるため安心して生活できるでしょう。
費用を負担できるか心配
費用を負担できるか心配な場合は、特別養護老人ホームや養護老人ホームがおすすめです。養護老人ホームは市区町村に認められた方が入居できますが、前年度の所得に応じて負担費用が決まります。
特別養護老人ホームは、要介護度や居室の種類によって費用に差がありますが、所得に応じて負担軽減制度が適用されます。また、いずれの施設も入居金は不要であるため、安心して入居できるでしょう。
まとめ
高齢者施設には多くの種類があるため、特徴を踏まえて選ぶ必要があります。それぞれ提供しているサービスは異なるため、身体の状態や希望を踏まえて施設を比べてみましょう。
毎日過ごす生活の場だからこそ、施設選びのポイントを参考にして、よりよい施設を見つけましょう。