ユニット型特別養護老人ホームとは?入居するメリット・デメリットも解説

ユニット型特別養護老人ホームとは?入居するメリット・デメリットも解説

「ユニット型特別養護老人ホームってどんな施設?」

「従来型とどんな部分が違うの?」

老人ホームを探すうえで、このような疑問をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。特別養護老人ホームは居室タイプによって、環境面や費用面に違いがあります。

終身で利用する可能性もあるため、入居者本人の希望条件に合った施設を選ぶ必要があるといえるでしょう。本記事では、ユニット型特別養護老人ホームの特徴や入居するメリット・デメリットについて解説します。

ユニット型特別養護老人ホームとは

ユニット型特別養護老人ホームとは

特別養護老人ホームは介護が必要な高齢者が生活する場です。ユニット型と従来型があり、在宅に近い生活環境で、1人ひとりに寄り添った個別ケアが受けられるのがユニット型です。

10人以下が1つのグループとして生活し、入居者の個性などを把握した専任の職員が配置されます。馴染みの職員やほかの入居者とも関係を築きやすく、個性に合わせた手厚いケアが受けられる場です。

入居条件

入居条件は従来型と差はなく、次の3つです。

  • 要介護3~5に認定されている65歳以上の方
  • 特定疾患をお持ちで要介護3~5に認定されている40歳~64歳の方
  • 特例によって入居が認められた要介護1・2の方

特定疾患は、筋萎縮性側索硬化症や初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患などの16種類が該当します。また、要介護1・2の方の入居が認められる特例は以下のとおりです。

  • 認知症の症状により日常生活に支障があり、在宅生活が困難な方
  • 知的障害・精神障害などにより日常生活に支障があり、在宅生活が困難な方
  • 家族などによる虐待の疑いがあり、心身の安全・安心の確保が困難な環境に置かれている方
  • 1人暮らしなどの理由により家族によるサポートが受けられない。かつ、地域での介護サービスなども十分に受けられない状況であり、在宅生活が困難な方

自宅で生活を送るのが困難な方や、心身の安全が脅かされている方が対象です。

サービス内容

一般的なサービス内容は、次のとおりです。

  • 居室の提供
  • 生活を送るのに必要な支援(食事介助・排泄介助・入浴介助など)
  • 機能訓練指導(リハビリ)
  • 健康管理
  • 理容・美容に関するサービス
  • レクリエーションや季節ごとの行事
  • 退去時などの訪問相談など

なかでもユニット型は、ほかの入居者や職員と交流できる共同生活室(リビングスペース)も備え付けられています。

また、看取りを実施している施設もありますが、設備面などの条件を施設が満たしていなければ、充実した看取りは受けられません。希望する場合は、入居希望先が看取りに対応しているかをあらかじめ確認しましょう。

料金

居室のタイプにかかわらず、次の費用がかかります。

  • 施設介護サービス費
  • 居住費
  • 介護サービス加算
  • 食費
  • 日常生活費

施設介護サービス費や居住費は、要介護度や居室タイプによって差があります。要介護5の方がユニット型個室を利用した場合、費用の内訳は次の表のとおりです。

施設サービス費(1割負担の場合)約27,900円
居住費約60,180円
食費約43,350円
日常生活費約10,000円(施設によって異なります)
合計約141,430円

参考:厚生労働省|介護サービス情報公表システム「サービスに掛かる利用料」

ユニット型と従来型の違い

ユニット型と従来型の違い

ユニット型と従来型の1つめの違いは生活環境です。ユニット型は、共同生活室を中心としてそれぞれの個室が面している配置となっています。

プライバシーを守りながら共有スペースにも出入りしやすく、ほかの入所者とも交流しやすい造りです。一方、従来型は1つの部屋を4人程度で使用する多床室が一般的であり、パーテーションなどでそれぞれのスペースが仕切られています。

2000年ごろまでは従来型多床室が主流でしたが、入居者のプライバシーが尊重されにくい居室の造りが問題視されます。その結果、2002年にユニット型の施設に対応した補助金制度が創設され、ユニット型が推進される流れとなりました。

2つめの違いは職員の配置です。ユニット型は専属の職員が配置されるため、それぞれの個性や生活リズムに寄り添ったケアが受けられます。対して従来型は、大人数の入居者に対して多数の職員がケアを担当するため、個性に目を向けたケアは受けづらいといえるでしょう。

特別養護老人ホーム(特養)の居室は4タイプある

特別養護老人ホーム(特養)の居室は4タイプある

特別養護老人ホームの居室は4つのタイプがあります。

ユニット型個室

共同生活室にそれぞれの個室が面した造りになっています。共同生活室は家でいうリビングと同じ役割があり、在宅に近い環境で生活できるといえるでしょう。

ユニット型個室的多床室

大部屋だった居室をパーテーションなどで仕切り、1部屋を複数人で使用します。共同生活室に面した造りですが、完全な個室にはなっていないのが特徴です。

従来型個室

ニット型個室と同じく完全個室ですが、共同生活室がありません。各部屋は廊下に面しており、食事などをする共有スペースへ行くには少し距離があることは理解しておきましょう。

従来型多床室

パーテーションやカーテンで仕切られた1部屋に、2人以上4人以下で生活します。費用は比較的安いですが、プライバシーの確保が難しい側面もあります。

ユニット型特別養護老人ホームの2つのメリット

ユニット型特別養護老人ホームの2つのメリット

ユニット型のメリットは次の2つです。

  • 個別ケアが受けられる
  • ほかの入居者と交流しやすい

それぞれ理由を説明します。

個別ケアが受けられる

ユニット型は、それぞれの個性や生活リズムに合わせた個別ケアを受けられるのがメリットです。

ユニット型の定員は従来型と比べると少人数です。そのため、ケアを行う職員も入居者の心身の状況・生活習慣・個性などを理解しやすく、それぞれに合ったケアが受けられます。

また、個室で生活できるため、自宅で使っていた家具や好きな絵を飾るなど、共同生活であってもプライベート空間を楽しめます。介護が必要になっても自分の楽しみや好きなものを大切にしつつ、安心して生活できる空間であるといえるでしょう。

ほかの入居者と交流しやすい

ほかの入居者や職員と交流しやすく、関係を深められるのもメリットです。ユニット型はそれぞれの居室に共同生活室が面しているためすぐに移動でき、ほかの入居者とコミュニケーションが取りやすい環境です。また、多床室からユニット型個室へ建て替えた施設では、入居者に次のような変化が見られました。

建て替え前(多床室)建て替え後(ユニット型個室)
ベッド上の滞在率67.7%40.2%
リビングの滞在率16.7%42.8%
日中に占める睡眠時間42.3%22.5%
日中に占める食事時間7.6%11.3%
1人あたりの食事量1463kcal1580kcal
ポータブルトイレ設置台数29台14台

参考:厚生労働省|高齢者介護研究会「2015年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~」

以上の結果から、個室を使用しても引きこもりがちにならずに活動的になる割合が高いといえます。

また、ポータブルトイレはトイレまで行けない方などが主に居室で使用する簡易的なトイレです。ポータブルトイレの設置台数も減っていることから、入居者の歩行能力も含めた日常生活動作(ADL)の向上も期待できるといえるでしょう。

ユニット型特別養護老人ホームの2つのデメリット

ユニット型特別養護老人ホームの2つのデメリット

ユニット型のデメリットは次の2つです。

  • 従来型より費用が高い
  • 人間関係によって過ごしやすさが左右される

それぞれ理由を説明します。

従来型より費用が高い

ユニット型は従来型に比べて負担する費用が高く、なかでも居住費と施設介護サービス費に差があります。要介護5の方が利用した場合のひと月あたりの費用を比較してみましょう。

多床室ユニット型個室
施設介護サービス費約25,200円約27,900円
居住費約25,650円約60,180円

参考:厚生労働省|介護サービス情報公表システム「サービスに掛かる利用料」

施設介護サービス費に大きな差がありませんが、居住費はユニット型個室の方がおよそ3万円高い結果となりました。

終身で利用する可能性もある特別養護老人ホームですが、年金のみで費用を賄う方もいるでしょう。予算を上回る場合、金銭的な問題は無視できないデメリットといえます。

人間関係によって過ごしやすさが左右される

ユニット型は個室が用意されていますが、共同生活室などではほかの入居者と過ごす機会もあります。トラブルが起きてしまう可能性もあり、人間関係によって過ごしやすさが左右されるのもデメリットの1つです。

人間関係が良好であれば快適に暮らせますが、少人数だからこそ人間関係にわずらわしさを感じてしまう可能性もあります。日々の生活を送る場だからこそ、実際にトラブルが起きてしまうと入居者や家族にとっては見過ごせない問題になるといえるでしょう。

ユニット型は比較的入居しやすい

ユニット型は比較的入居しやすい

2022年、厚生労働省は特別養護老人ホームの入所申込者の状況について調査しました。その結果、39都道府県において約23万人が入所を申し込んでいるものの、入所できていない現状であることがわかりました。

特別養護老人ホームは、有料老人ホームやグループホームなどと比べて費用が安く、入所を申し込んでもなかなか入りづらいのが現状です。しかし、従来型と比べてユニット型は入居までの期間が短い傾向があります。

費用面の負担が大きく、安さを求める場合は従来型を選択する方が多いのが理由です。費用面や環境面などが希望条件に合う場合は、ユニット型に申し込むと入居しやすいでしょう。

まとめ

まとめ

特別養護老人ホームの居室タイプにはそれぞれ特徴があります。ユニット型はプライバシーを守りつつ個性に寄り添ったケアを受けられますが、費用が比較的高いという側面もあります。入居する本人の希望や費用面も考慮しながら、過ごしやすい施設への入居を叶えましょう。

この記事を書いた人

かいごマガジン編集部

かいごマガジン編集部です。
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