特別養護老人ホームには年金で入れる?費用が足りないときの対処法も紹介

特別養護老人ホームには年金で入れる?費用が足りないときの対処法も紹介

「特別養護老人ホームの費用を年金で払えるか不安がある」

「年金だけでは足りない場合、どうすればいいの?」

このような不安や疑問を抱えている方も少なくないのではないでしょうか。特別養護老人ホームは比較的費用が安く、年金のみで利用できる可能性があります。

本記事では、特別養護老人ホームの費用を年金でまかなえるか確認できる方法と、年金では足りない場合の対処法を中心に解説します。

特別養護老人ホーム(特養)の費用は年金でまかなえる?

特別養護老人ホーム(特養)の費用は年金でまかなえる?

特別養護老人ホームの費用は、年金のみで利用可能なケースもあります。しかし、終身で利用する可能性もあるため、費用に関する不安は少しでも取り除きたいものです。不安なく特別養護老人ホームを利用するために、あらかじめ確認しておきたいのは次の2点です。

  • 年金の受給額
  • 特別養護老人ホームの費用

それぞれ詳しく解説します。

年金の受給額

まず、支払いに充てる年金受給額を確認しましょう。受給している年金の種類にもよりますが、受給額は毎月数万円~20万円程度です。

すでに年金を受給している場合、銀行口座の明細を確認して受給額を把握しましょう。年金は2ヶ月に1度指定した口座に入金されるため、その金額を1/2にすれば1ヶ月ごとの年金額を知ることができます。

まだ年金を受給していない場合は日本年金機構の「ねんきんネット」を確認すれば、将来の年金受給額を把握できます。また、年金にはいくつか種類がありますが、一般的に加入されているのは国民年金と厚生年金です。

国民年金は、日本に在住している満20〜満60歳のすべての人が加入します。厚生年金は会社員や公務員として働く人がおもに加入し、自動的に国民年金にも加入する仕組みとなっています。

そのため、厚生年金に加入していれば、国民年金と厚生年金の両方を受け取ることができるのです。なお、厚生年金と国民年金の平均年金月額は次のとおりです。

厚生年金(国民年金を含む)国民年金
2016年度147,927円55,464円
2017年度147,051円55,615円
2018年度145,865円55,809円
2019年度146,162円56,049円
2020年度146,145円56,358円

参考:厚生労働省年金局|令和2年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況」

年金の受給額を把握しておけば、特別養護老人ホームを選ぶ費用基準も決められるでしょう。

特別養護老人ホームの費用

特別養護老人ホームを利用するのに月々かかる基本的な費用は次のとおりです。

・施設介護サービス費

・居住費

・食費

・日常生活費

特別養護老人ホームには複数の居室タイプがあります。多床室とユニット型個室を利用した場合の費用の目安を比較してみましょう。

多床室(要介護5の人が利用した場合)ユニット型個室(要介護5の人が利用した場合)
施設サービス費(1割負担の場合)約25,200円約27,900円
居住費約25,650円約60,180円
食費約43,350円約43,350円
日常生活費約10,000円約10,000円
合計約104,200円約141,430円

参考:厚生労働省|介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」

金額に大きく差があるのは「居住費」であり、ユニット型個室の方が3万円ほど高い結果となりました。

なお、上記の費用以外にも施設のサービス体制に応じて「介護サービス加算」という費用がかかります。介護サービス加算は、より充実した介護を提供するためにスタッフの人員配置を手厚くしたり、特別なケアを提供したりする場合に加算される費用です。

実際に加算される額は施設によって異なりますが、手厚い介護が受けられる施設ほど加算額も大きくなるといえるでしょう。

介護施設の費用を比較してみよう

介護施設の費用を比較してみよう

介護が必要な方が利用できる介護施設には、さまざまな種類があります。月々かかる費用の目安を、特別養護老人ホームと比べてみましょう。

施設の種類初期費用月額費用の相場
特別養護老人ホーム0円5万円~15万円
介護老人保健施設0円8万円~14万円
介護医療院0円9万円~17万円
ケアハウス数十万円~数百万円10万円~30万円
介護付き有料老人ホーム0円~数百万円15万円~30万円
サービス付き高齢者向け住宅0円~数十万円10万円~30万円
グループホーム0~数十万円15万円~20万円

特別養護老人ホームをはじめとした公的施設は、国や自治体の出資によって運営されています。一方、有料老人ホームなどの民間施設は民間企業が運営しています。そのため、公的施設はおおむね初期費用もかからず、月々にかかる費用も抑えられる傾向があるでしょう。

年金だけで入れる可能性が高いのは公的施設

年金だけで入れる可能性が高いのは公的施設

年金の受給額にもよりますが、年金だけで利用できる可能性が高いのは公的施設です。公的施設は特別養護老人ホーム以外にも、次のような施設があります。

  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院
  • ケアハウス(特定施設入居者生活介護)

それぞれの施設について解説します。

介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設は、介護を必要とする高齢者の自立を支援する施設です。在宅復帰を目指す施設であるため、入所期間は原則3ヶ月と定められています。

入居条件

介護老人保健施設の入居条件は次のとおりです。

  • 原則65歳以上で要介護度1~5の方
  • 病状が安定していてリハビリテーションが必要な方

病院を退院したあとに在宅復帰が困難な方などが入居するケースもあります。

サービス内容

介護老人保健施設は、作業療法士や理学療法士などによるリハビリテーションが受けられるのが特徴です。医師の医学的管理のもと1人ひとりの状態に合わせて支援してもらえるため、目標を持ちながら安心して在宅復帰を目指せるでしょう。

介護医療院

介護医療院は、介護を必要とする高齢者が療養しながら生活できる施設です。医療を提供する施設としての側面を持ちつつ、利用者のプライバシーへ配慮するなど生活施設としての役割も担います。

介護医療院は、Ⅰ型とⅡ型の2種類あります。介護医療院Ⅰ型は重い身体疾患がある方や身体合併症がある認知症の高齢者の方でも安心して利用できます。

介護医療院Ⅱ型は、容体が比較的安定している方が対象です。いずれの介護医療院も長期にわたって利用できます。

入居条件

介護医療院の入居条件は次のとおりです。

  • 原則65歳以上で要介護1~5の方
  • 日常的に医療的ケアが必要な方

自宅での介護が難しく、喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な方が入居します。

サービス内容

介護医療院は生活を送るのに必要な支援を受けながら、医療的ケアにも対応してもらえるのが特徴です。

医療的ケアは、具体的に次のようなケアを指します。

  • 喀痰吸引
  • 経管栄養
  • 点滴
  • 酸素吸入
  • 褥瘡(床ずれ)の処置
  • 注射・薬の処方
  • 看取り・ターミナルケアなど

介護施設のなかには医療的ケアに対応していない施設もあります。介護医療院は医療的ケアに対応できるうえに長期間利用できるため、安心して生活し続けられる施設といえるでしょう。

ケアハウス(特定施設入居者生活介護)

ケアハウスは家族からの支援が難しい高齢者のための住まいであり、一般型と介護型があります。日常的に介護が必要な方は「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている介護型のケアハウスであれば、安心して生活できるでしょう。

入居条件

介護型ケアハウスの入居条件は次のとおりです。

  • 原則65歳以上で要介護1以上の方

なお、ケアハウスは所得に応じて費用が減額されるため、低所得の方でも安心して利用できます。しかし、ほかの公的施設とは違って初期費用が必要なケアハウスもあるため、施設選びの際には注意しましょう。

サービス内容

介護型ケアハウスでは、要介護度ごとに定められている介護保険サービス費を支払えば介護サービスが受けられます。具体的には、食事や排泄の介助、レクリエーションや機能訓練などのサービスが受けられます。

費用が足りない場合の対処法

費用が足りない場合の対処法

年金の受給額によっては、施設の利用にかかる費用が足りないケースもあるでしょう。そのような場合に活用できる可能性がある2つの制度があります。

  • 生活保護制度
  • 負担減免制度

それぞれ解説します。

生活保護制度

生活保護は生活に困窮する方に対し、その程度に応じて必要な保護を行う制度です。保護には次のような種類があります。

  • 生活扶助
  • 住宅扶助
  • 教育扶助
  • 介護扶助
  • 医療扶助など

生活保護を受給すると、介護保険サービスにかかる費用には介護扶助が適用されるため、費用負担なく介護サービスが受けられます。

ただし、介護扶助は介護保険適用外の費用には適用されません。居住費や生活費はそれぞれ住宅扶助・生活扶助が適用されるため、支給された生活保護費を施設に支払います。

年金を受給している方でも、生活保護制度は利用できます。生活保護費から年金受給額を差し引いた金額が支給されるため、施設を利用する費用が足りない場合は、生活保護制度の利用も検討してみましょう。

生活保護制度は、お住まいの地域を管轄する福祉事務所の生活保護担当窓口で相談できます。福祉事務所が設置されていない町村では、町村役場でも相談可能です。

負担減免制度

介護保険サービスを利用している方の負担減免を目的とした制度は、おもに次の種類があります。

  • 特定入所者介護サービス費
  • 高額介護サービス費
  • 高額医療・高額介護合算制度

なかでも特定入所者介護サービス費は、 特別養護老人ホームなどの介護保険施設に入所している方の所得や資産が一定以下である場合に適用される制度です。

減免されるのは、施設の利用にかかる費用のなかの居住費と食費です。所得に応じて定められた負担限度額を超えた金額が、介護保険から支給されます。

特定入所者介護サービス費を利用するには、お住まいの市区町村で負担限度額認定を受ける必要があります。申請後に交付される「介護保険負担限度額認定証」を利用している施設に提示することで制度が適用され、費用負担が減免されます。

在宅介護と施設の介護費用を比較

在宅介護と施設の介護費用を比較

介護施設などへの入居を検討する際、在宅で介護をする場合と施設に入居する場合の費用の違いが気になることもあるのではないでしょうか。

生命保険文化センターは、介護を行った場所別にかかった介護費用を調査しました。「支払った費用はない」を0円として、月額費用別に平均を算出しています。

月額在宅施設
支払った費用はない0%0%
1万円未満7.2%0.4%
1万円~2万5千円未満22.3%6.3%
2万5千円~5万円未満17.6%4.7%
5万円~7万5千円未満13.3%9.1%
7万5千円~10万円未満2.3%8.7%
10万円~12万5千円未満4.3%20.9%
12万5千円~15万円未満1.2%7.9%
15万円以上5.8%30.7%
不明26.0%11.4%

参考:生命保険文化センター|生命保険に関する全国実態調査

介護にかかった費用は在宅で平均4.8万円、施設で平均12.2万円という結果となりました。介護にかかる費用は施設のほうが比較的高く、在宅との金額差も少なくありません。

しかし、在宅介護は介護サービスを利用しなければ、食事・排泄・入浴の介助や食事の準備などを同居する介護者が行わなければなりません。被介護者の状態によっては、夜間も思うように休めないこともあるでしょう。

「介護うつ」という言葉もあることから、費用だけでなく、家族の負担も考慮して介護する場を決める必要があるといえるでしょう。

まとめ

まとめ

特別養護老人ホームにかかる費用を年金でまかなえるかを知るには、年金受給額と施設に支払う費用をあらかじめ確認することが大切です。費用が足りない場合は生活保護や負担減免制度などの活用も視野に入れ、費用面の不安なく施設を利用しましょう。

この記事を書いた人

かいごマガジン編集部

かいごマガジン編集部です。
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