特別養護老人ホームと介護老人福祉施設は、名称が似ており、同じような施設と思っている人も少なくありません。確かに施設の機能は似ている部分が多いですが、根拠法や滞在期間、入所条件などが異なります。
当記事では特別養護老人ホームと介護老人福祉施設の法律上の定義、違いについて詳しく紹介します。
記事目次
特別養護老人ホームと介護老人福祉施設の法律上の定義
特別養護老人ホームと介護老人福祉施設は、機能などはほとんど同じです。しかし根拠法が異なります。
それでは各施設の定義を紹介します。
「特別養護老人ホーム」の定義
特別養護老人ホームは、老人福祉法が根拠法です。老人福祉法第二十条の五では、次のように定義されています。
特別養護老人ホームは、第十一条第一項第二号の措置に係る者又は介護保険法の規定による地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護に係る地域密着型介護サービス費若しくは介護福祉施設サービスに係る施設介護サービス費の支給に係る者その他の政令で定める者を入所させ、養護することを目的とする施設とする。
引用:老人福祉法第二十条の五
高度経済成長により人口が都市へ流れた結果、家族で高齢者の介護を行うのが難しくなり、老人福祉法が制定されました。老人福祉法の制定により、特別養護老人ホームや養護老人ホームなどの施設が整備され、高齢者の生活が支えられています。
「介護老人福祉施設」の定義
介護老人福祉施設は、介護保険法が根拠法です。介護保険法では、介護老人福祉施設について次のように記されています。
この法律において「介護老人福祉施設」とは、老人福祉法第二十条の五に規定する特別養護老人ホーム(入所定員が三十人以上であるものに限る。以下この項において同じ。)であって、当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設をいい、「介護福祉施設サービス」とは、介護老人福祉施設に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話をいう。
引用:介護保険法 第八条27
介護老人福祉施設と特別養護老人ホームは、名称は違えど入所対象者やサービス内容に違いはありません。
老人福祉法と介護保険法の違いとは?
老人福祉法は、高齢者が身体的・精神的に安定した生活を送れるよう、高齢者の生活について明記された法律です。高齢者の介護を目的とした法律ではないため注意しましょう。
一方の介護保険法は、社会全体で介護が必要な人をサポートするために規定された法律です。高齢者の介護に関する内容に加えて、施設や介護認定などについても記載されています。
どちらの法律も内容が似ていますが、高齢者に介護保険法を適用できない場合は老人福祉法が使用されます。介護保険法を適用できないのは、以下のような場合です。
- 高齢者が家族等から虐待を受けている
- 認知症などにより、本人の意思決定能力が乏しく代理の家族等もいない
老人福祉法と介護保険法は、相互関係にある法律でどちらも重要な役割を担っています。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の入居条件
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の入居条件は以下の通りです。
- 65歳以上で要介護3以上と認定された方
- 40〜64歳で、特定疾患により要介護3以上と認定された方
- 要介護1〜2の認定を受け特例で入居が認められた方
上記が特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の入居条件ですが、優先順位は希望者の状況によって異なります。また特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、待機者も多いためすぐに入居できない場合が多いです。
特別養護老人ホームと介護老人保健施設の違い
特別養護老人ホームと介護老人保健施設は、入居期間や入居条件が異なります。
特別養護老人ホームの入居条件については、前章で記載した通りです。特別養護老人ホームは入居期間が定められていないため、亡くなるまで生活を送る人も多い施設です。
介護老人保健施設の入居条件は、65歳以上で要介護1〜5と認定された方です。
要介護度が低い方も入居できるのが、特別養護老人ホームと大きく異なる点でしょう。介護老人保健施設は在宅復帰を目指す方が入居する施設のため、入居期間が3〜6ヵ月と決められています。
終身にわたって生活できる施設が「特別養護老人ホーム」、在宅復帰までの期間を過ごす施設が「介護老人保健施設」と覚えましょう。
特別養護老人ホームと有料老人ホームの違い
特別養護老人ホームと有料老人ホームは、運営母体やサービス内容が異なります。
特別養護老人ホームの運営は地方公共団体や社会福祉法人等、有料老人ホームは社会福祉法人に加え、民間企業が運営している場合も多いです。両施設はサービス内容も異なり特別養護老人ホームは介護がメインですが、有料老人ホームは介護以外にもさまざまなサービスを提供するのが特徴です。
また有料老人ホームは入居一時金がかかるなど、費用は高くなりやすい傾向にあります。介護施設の種類により、サービス内容や費用は異なるため自分にあった施設を選ぶようにしましょう。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に関するよくある質問
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に関するよくある質問は次の通りです。
- 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)はすぐに入居できますか?
疑問を解消できるように、詳しく紹介します。
質問.特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)はすぐに入居できますか?
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、すぐに入居はできない可能性が高いです。
というのも特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、待機者が多く優先度が高い人から先に入所できるためです。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、居住地以外の施設にも入居できます。待機者は施設や地域によって異なるため、すぐに入居したい方は対象範囲を広げるのが有効でしょう。
対象を広げて待機者の少ない施設を探しましょう。
まとめ
ここまで、特別養護老人ホームと介護老人福祉施設の法律上の定義、違いについて詳しく紹介しました。
特別養護老人ホームと介護老人福祉施設は、根拠法が異なりますが機能やサービス内容はほとんど同じです。施設の特徴やサービス内容を比較すると、自分がどの施設に入居したら良いかわかるようになります。
今回紹介した特別養護老人ホームと介護老人福祉施設の違いを踏まえ、自身に合う施設を検討してみてはいかがでしょうか。