訪問介護員への転職は大変?働き方や1日のスケジュール例もご紹介

訪問介護員への転職は大変?働き方や1日のスケジュール例もご紹介

訪問介護員(ホームヘルパー)への転職を考えている方も多いのではないでしょうか。

施設での介護職員として働いてきた経験を活かしながら、より柔軟な働き方を実現できる職種として注目されています。

しかし、「一人で利用者さんのお宅を訪問するのは不安」「施設での介護とどう違うのか」など、転職に関する疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

本記事では、訪問介護員の仕事内容や必要な資格、働き方の種類から具体的な1日のスケジュールまで、転職に役立つ情報を詳しく解説します。

訪問介護員へ転職を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

訪問介護員(ホームヘルパー)とは?

訪問介護員は、要介護認定を受けている高齢者や障害支援区分の認定を受けている方の自宅を訪問し、身体介助や家事の支援を行う仕事です。

通称、ホームヘルパーやヘルパーさんと呼ばれており、基本的に利用者さんと一対一で支援を行います。

施設での介護と大きく異なる点は、利用者さんの「生活の場」である自宅で支援を行うことです。

そのため、その方の生活習慣や価値観を尊重しながら、自立した在宅生活を支えることが重要な役割となります。

出典:訪問介護員/ホームヘルパー|jobtag|厚生労働省

訪問介護員の転職に必要な資格はある?

訪問介護員として働くためには、最低でも「介護職員初任者研修」の修了が必須となります。

また、より専門的な知識や技術を持つ「介護福祉士実務者研修修了者」や「介護福祉士」の資格保持者も、訪問介護員として活躍できます。

以下でそれぞれの資格について詳しく解説するので、参考にしてください。

出典:介護職員・介護支援専門員|厚生労働省

介護職員初任者研修

介護職員初任者研修は、介護職員として働くための入門資格です。

資格の概要は以下の通りです。

取得方法民間の養成施設で全130時間の講習を受講
費用相場5~10万円程度
取得時間最短約3週間、週1コースで4か月程度
カリキュラム・職務理解
・介護における尊厳の保持
・自立支援
・介護の基本・介護・福祉サービスの理解と医療の提携
・介護におけるコミュニケーション技術
・老化の理解
・認知症の理解
・障がいの理解
・こころとからだのしくみと生活支援技術など

通学と通信の2種類の方法から選び、座学と実技を通じて介護の基本的な知識と技術を学びます。

条件を満たせば「特定一般教育訓練給付制度」を利用し、費用の40%(上限20万円)を支給してもらえるため、費用を抑えて資格を取得できるのが特徴です。

訪問介護員を目指している方は、まずは「介護職員初任者研修」の取得を目指しましょう。

資格取得制度の充実している事業所への転職もオススメです。

介護福祉士実務者研修

介護福祉士実務者研修は、介護福祉士の受験資格を得るために必要な研修で、介護職員初任者研修の上位資格です。

より専門的な介護技術や医療的知識を習得できます。

資格の概要は以下の通りです。

取得方法養成施設で全450時間の講習を受講
費用相場5~15万円程度
取得時間無資格の場合6か月以上、初任者研修修了者は約4か月(320時間)
カリキュラム・人間の尊厳と自立
・社会の理解
・介護の基本
・コミュニケーション技術
・生活支援技術
・介護過程
・発達と老化の理解
・認知症の理解
・障害の理解
・こころとからだのしくみ・医療的ケア(講義+演習)

介護福祉士実務者研修も、条件を満たすことで教育訓練給付制度の対象となります。

訪問介護員としてキャリアアップを目指したい方は、ぜひ取得しておくべき資格のひとつです。

介護福祉士

介護福祉士は、より高度な介護知識と技術が求められる介護の国家資格です。

資格の概要は以下の通りです。

取得方法・介護福祉士養成施設を修了することで資格を目指す「養成施設を経るルート」
・福祉に特化した高校課程を卒業する「福祉系高校を通じたルート」
・外国人向けの「経済連携協定(EPAを活用したルート)」
・3年以上の実務経験と介護福祉士実務者研修の修了を条件とする「実務経験を活かしたルート」
費用相場受験料:18,380円(第35回参考)
取得時間養成施設ルートの場合最短2年、実務経験ルートの場合最短3年程度
カリキュラム実務経験ルートの場合、介護福祉士実務者研修を受講

介護福祉士の国家資格を受験するためには、4つの取得ルートがあります。

働きながら資格取得を目指す場合は、実務経験ルートを辿るのが一般的でしょう。

条件を満たし専門実践教育訓練制度を利用できれば、研修期間に支払った受講料の50%(年間最大40万円)が支給されます。

その後1年以内に介護福祉士の資格を活かせる職に就職すれば、さらに20%が給付されます。

介護福祉士の資格を取得すれば、主任やリーダーのような責任のある立場で活躍できるため、訪問介護員として長く活躍したい人にオススメです。

出典:厚生労働省「介護福祉士の養成カリキュラム等について」p.2

訪問介護員の働き方は大きく分けて3つある

訪問介護員の働き方は、雇用形態によって大きく分けると以下3つのパターンがあります。

  1. 直接雇用
  2. 派遣ヘルパー
  3. 登録ヘルパー

それぞれの特徴を見ていきましょう。

1.直接雇用

直接雇用は、訪問介護事業所に直接雇用される形態で、正社員やパートタイマーとして働けます。

事業所に出勤してから利用者さん宅を訪問するのが一般的な流れです。

正社員として働く場合は、給与や待遇面で安定した働き方が期待できます。

なお、常勤と非常勤の違いは、事業所が定める所定労働時間(通常週40時間)に達しているかどうかで区分されます。

2.派遣ヘルパー

派遣ヘルパーは派遣会社に所属(就職)し、契約期間を定めて働く形態です。

直接雇用と異なり、契約期間ごとに就業先や勤務時間を調整しながら働けます。

そのため、自分の希望に合わせて柔軟な働き方を選べるのが特徴です。

事業所との相性が悪い場合や、相談がある場合も派遣会社を挟んで伝えられるため、人間関係や職場環境に不安を感じる方でも働きやすい形態だといえるでしょう。

3.登録ヘルパー

登録ヘルパーは、事業所に直接登録し、希望する時間帯や曜日に働く形態です。

利用者さん宅への直行直帰が基本となります。

家庭との両立や自分のペースで働きたい方に適しており、1日の訪問件数や訪問時間を自分で決められるなど、自由度の高い働き方だといえるでしょう。

このように、ライフスタイルや希望する働き方に応じて、最適な雇用形態を選択できるのが訪問介護員の魅力です。

訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事内容

訪問介護の仕事は、大きく「身体介護」と「生活支援」の2つに分けられます。

それぞれの内容を以下で詳しく見ていきましょう。

食事介助や入浴介助などの「身体介護」

身体介護は、利用者さんの身体に直接触れて行う介助です。具体的には以下のようなものがあります。

介助の種類介助内容
食事介助食事の準備、食べやすい形態への調整、食べさせるなど
入浴介助浴室への移動、着脱の介助、洗身など
排泄介助トイレへの移動、おむつ交換、着脱の介助など
体位変換寝返りの補助、褥瘡(床ずれ)予防など
移乗・移動の介助ベッドから車椅子への移乗など

範囲は、利用者さんの要介護度によって異なり、心身状態に合わせた介助が必要です。

掃除や買い物などの「生活支援」

生活支援では、利用者さんの日常生活に必要な家事の支援を行います。主な支援内容は以下の通りです。

  • 掃除
  • 洗濯
  • 買い物
  • 料理
  • 薬の受け取り
  • 通院の同行

家事代行サービスとは異なり、ケアマネジャーが事前に作成したケアプランに基づき、必要な支援のみを行います。

原則として、ケアプランにない内容や利用者さん本人以外の支援は実施できません。

訪問介護員の1日のスケジュール例をご紹介

ここまで訪問介護員の具体的な業務内容について見てきましたが、実際の常勤と非常勤、それぞれの典型的な1日のスケジュール例をご紹介します。

常勤の場合、1日の訪問件数は5件程度が平均で、非常勤の場合は1日1~2件の人が多いようです。

正社員など常勤のスケジュール例

正社員など常勤で働く介護員の1日の流れの例は次の通りです。

時間業務内容
8:30事業所に出勤、朝礼訪問先の確認と準備
9:00A様宅訪問(身体介護 60分)
10:30B様宅訪問(生活支援 45分)
12:00事業所で休憩・記録作成
13:30C様宅訪問(身体介護 45分)
15:00D様宅訪問(生活支援 60分)
16:30E様宅訪問(身体介護 45分)
17:30事業所で記録作成・報告
18:00退勤

上記は移動時間も含まれます。

訪問介護は、サービスの時間があらかじめ決まっているため、オーバーしないよう気をつける必要があります。

次の訪問に遅れないように移動する必要もあり、介護のスキルだけではなく時間管理スキルや利用者さんや、そのご家族とのコミュニケーションスキルも必須です。

登録ヘルパーなどの非常勤のスケジュール例

登録ヘルパーなどの非常勤は直行直帰が基本です。ここでは午前中のみ働く場合の例をご紹介します。

時間業務内容
8:45A様宅に到着(身体介護 45分)
9:45移動・休憩
10:00B様宅訪問(生活支援 60分)
11:15移動・休憩
11:30C様宅訪問(身体介護 45分)
12:30自宅に帰宅、記録作成

非常勤の場合、スケジュールの確認や支援内容の変更などを事業所の方針に基づいて確認します。

上記例のように、午前中のみ訪問するパターンや、週3日のみフルタイムで働くパターンなどさまざまです。

訪問介護員の平均年収と平均年齢は?

訪問介護員の平均年収は約390万円(※)です。

ただし、これは雇用形態によって大きく異なり、常勤の場合は月給315,170円、非常勤の場合は月給219,390円が平均となっています。

訪問介護員の平均年齢は、48.8歳(※)で、30代後半から50代の方が中心です。

これは、子育てが一段落した後に転職されるケースや、施設での介護経験を活かして転職されるケースが多いためだと考えられるでしょう。

訪問介護員の有効求人倍率は、30.96倍(※)と非常に高く、人材不足が続いている状況です。

そのため、何歳でも働きやすく経験や資格に応じた条件での転職がしやすい職種だといえます。

※令和5年度時点の数値です。

出典:訪問介護員/ホームヘルパー|jobtag|厚生労働省

厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」p.122

訪問介護員への転職が向いている人

就職先の選択肢が多い訪問介護員ですが、一人で利用者さんのお宅を訪問し、支援を行う特徴的な働き方のため、向き不向きもあるでしょう。

訪問介護員は、主に以下のような特徴を持つ方に向いている職種です。

  • 柔軟な働き方をしたい人
  • 気配りができ、コミュニケーション能力のある人
  • 家事が得意または好きな人

それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

柔軟な働き方をしたい人

訪問介護員は、柔軟な働き方をしたい人に向いているといえます。

登録ヘルパーなど、自分のライフスタイルに合わせて働き方を選べることが大きな特徴です。

たとえば「午前中だけ働きたい」「扶養内で週3日だけ働きたい」など、希望に応じて臨機応変なシフト調整が可能です。

施設での介護職員としての経験や資格を活かしながら、より自由度の高い働き方を選べます。

訪問介護員は、育児や介護との両立を考えている方にも適した職種だといえるでしょう。

気配りができ、コミュニケーション能力のある人

気配りが得意でコミュニケーションスキルのある人も訪問介護員に向いています。

訪問介護員は、利用者さんと一対一で接する時間が長く、その方の生活習慣や価値観を理解し、尊重することが求められる仕事です。

たとえば「いつもと表情が違う」「部屋の様子が普段と違う」などといった小さな変化に気づけば、病気の進行や認知症の早期発見につながるかもしれません。

利用者さんの状態に合わせて食事のメニューを変える、着せる服の種類を考えるなどささいな気配りも重要です。

訪問介護員の仕事は、このような細かな観察力とコミュニケーション能力がある方に向いているといえるでしょう。

家事が得意または好きな人

訪問介護員は、利用者さんの代わりに掃除や洗濯、料理などの家事全般を行うこともあります。

そのため、家事が得意または好きな人に向いている仕事です。

たとえば「利用者さんの好みに合わせた調理」「効率的な掃除の手順」「季節に応じた衣類の整理」など、家事経験を活かせる場面は多くあるでしょう。

訪問介護員は、主婦として培った経験を仕事として活かしたい方や、家事を楽しめる方に向いている仕事です。

ただし、あくまでもケアプランに基づいた支援が基本となるため、メリハリをつけた対応が必要です。

まとめ

訪問介護員への転職は、施設での介護経験を活かしながら、より柔軟な働き方を実現できる選択肢だといえます。

介護職員初任者研修以上の資格があれば、未経験でも転職は可能です。

また、直接雇用や派遣、登録ヘルパーなど多様な雇用形態から選べるため、自分のライフスタイルに合った働き方を見つけやすいのも特徴です。

身体介護と生活支援の両面で、これまでの介護経験や生活経験を十分に活かせるでしょう。

訪問介護員は有効求人倍率が30倍以上と高く、人材不足が続いているため、転職のチャンスは豊富にあります。

ただし、一人で利用者さんのお宅を訪問するという特性上、コミュニケーション能力や気配りの力が重要です。

訪問介護員への転職を検討されている方は、まずは自身の希望する働き方や、活かせる経験・スキルを整理してみましょう。

そのうえで、資格取得や求人探しを進めていくことをオススメします。

この記事を書いた人

かいごマガジン編集部

かいごマガジン編集部です。
介護の専門的な情報をどこよりもわかりやすく紹介していきます。
また、世の中の介護がどのように変化していっているのか最新の情報も随時発信していきますのでお楽しみに!
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