「20代ならではの若さを活かせる仕事がしたい」「将来、自分や家族のためになる業界に転職したい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
介護職への転職は、スキルを活かして家族を支えられる大きな魅力があります。
誰かの役に立てるメリットの多い職種ですが、同時に転職の際に知っておくべき注意点の把握も必要です。
そこで今回は、介護業界の現状や20代での転職のメリット・注意点を具体的に解説します。
これから転職を考えている方は、この記事を読むことで転職後の自分がより明確になります。
ぜひ最後までご覧ください。
記事目次
若い人はいない?介護業界の現状とは
介護業界では「若い人がいない」「若者離れ」などを指摘される現状があります。
実際に、介護職の年齢層では中高年層が多くを占め、若い世代の割合は少ないのが実態です。
介護労働センターの『令和5年度介護労働実態調査』によると、介護職の平均年齢は48.4歳でした。
介護業界全体の年齢割合は以下のとおりです。
年齢 | 人数(割合) |
全体 | 20,699人(100%) |
~20歳 | 21人(0.1%) |
20~24歳 | 369人(1.8%) |
25~29歳 | 905人(4.4%) |
30~34歳 | 1,356人(6.6%) |
35~39歳 | 2,143人(10.4%) |
40~44歳 | 2,653人(12.8%) |
45~49歳 | 3,137人(15.2%) |
50~54歳 | 3,008人(14.5%) |
55~59歳 | 2,547人(12.3%) |
60~64歳 | 2,051人( 9.9% ) |
65~69歳 | 1,107人(5.3%) |
70歳~74歳 | 501人(2.4%) |
75歳~ | 158人(0.8%) |
無回答 | 743人(3.6%) |
このデータからも、若い世代が圧倒的に少ないことがみてとれます。
特に20代は、働き先の選択肢が多いことから、介護職を選ぶ人がそれほど多くないのが実態でしょう。
裏を返すと、20代で介護職に就くことは採用されやすく、将来的なキャリア形成にもつながりやすい環境が整っているといえます。
出典:介護労働安定センター『令和5年度介護労働実態調査』(資料編-13)
20代で介護職に転職するメリットとは
20代での介護職への転職は、スキルアップや将来の家族介護への備え、安定した職場環境の確保につながります。
介護業界は他の業界に比べて採用率が高く、長く働き続けられる環境です。さらに、資格取得によるキャリアアップでやりがいも維持しながら働けます。
20代の方が介護職を目指す具体的なメリットは、次の通りです。
- スキルを身につけて将来の介護に活かせる
- 採用率が高い
- 長く働ける
各メリットについて、以下で詳しく解説します。
スキルを身につけて将来の介護に活かせる
介護職で得られる基礎的なスキルは、将来、親や祖父母の介護に直接役立ちます。
特に、介護の軽減がないと対応が難しい場面では、職場で身につけたスキルが家族介護の負担を軽減する助けとなるでしょう。
内閣府の調査から、介護の際に苦労した点を以下にまとめました。
苦労した内容 | 割合 (%) |
排泄(排泄時の付き添いやおむつの交換) | 62.5 |
入浴(入浴時の付き添いや身体の洗浄) | 58.3 |
食事(食事の準備、食事の介助) | 49.1 |
移乗(車いすからベッド・便器・浴槽・椅子への移乗動作の介助) | 48.3 |
起居(寝返りやベッド・椅子からの立ち上がり動作の介助) | 47.7 |
移動(屋内を歩いて移動する動作の介助) | 37.8 |
認知症ケア(認知症の症状への対応) | 28.9 |
見守り(徘徊防止や夜間転倒防止の見守り) | 28.2 |
外出(買い物などの付き添い) | 19.4 |
リハビリ訓練(体力アップを目的とした歩行などの訓練の付き添い) | 16.1 |
介護経験がないと、介護疲れによる精神的・身体的な負担が大きくなることも考えられます。
多くの方が苦労すると回答した「排泄介助」や「入浴介助」は介護の仕事を通して、双方に負担をかけない方法を正しく学べます。
介護に必要なスキルを仕事を通じて身につければ、将来親を介護する際も抵抗なくスムーズにできるようになるでしょう。
採用率が高い
介護業界は他の業界と比較して採用率が高い傾向にあります。
東京都の資料によると、令和5年度の介護業界の有効求人倍率は7.61倍と、全産業の1.49倍を大きく上回りました。
後期高齢者の増加により、ほとんどの施設で人手不足に悩まされているため、採用率が高いのも介護職に転職するメリットのひとつです。
出典:介護職員の不足が見込まれる「2025 年問題」と介護職員を巡る状況|東京都
長く働ける
介護職は長く働き続けられる業界としても注目されています。介護職の平均年齢は48.8歳と、他業種より高めです。
また、2023年度の離職率は13.1%と、2012年度の17.0%以降年々減少傾向にあります。
平均年齢の高さや離職率の低さから考えると、安定した環境で長く働ける点も介護職のメリットといえるでしょう。
出典:介護労働センター『令和5年度介護労働実態調査』(p.4)
給与アップを目指せる
介護業界では、資格取得によるキャリアアップが明確で、努力が収入に直結しやすい職種です。
以下に、主な資格ごとの平均給与をまとめたので参考にしてください。
資格 | 平均給与(円) |
介護福祉士 | 240,454 |
実務者研修 | 228,635 |
介護職員初任者研修 | 222,487 |
介護職員基礎研修 | 228,173 |
ホームヘルパー1級 | 230,265 |
ホームヘルパー2級 | 236,789 |
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー) | 262,424 |
介護支援専門員(ケアマネジャー) | 257,414 |
認定看護師・専門看護師 | 312,493 |
看護師・准看護師 | 275,438 |
PT・OT・ST | 275,747 |
社会福祉士 | 266,094 |
精神保健福祉士 | 276,918 |
資格なし | 217,852 |
このように、資格を取得すると収入が大きく向上するだけでなく、携われる仕事内容も増えるため、キャリアの幅も広がります。
特に、介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)などの資格は、業界内で高い評価を受けており、より責任あるポジションを目指せる資格です。
資格取得を目指せばキャリアアップできることが明確な点も、介護職に転職するメリットだといえます。
出典:介護労働センター『令和5年度介護労働実態調査』(資料編-84)
介護職で働くデメリットや注意点
介護職には多くの魅力がある一方で、以下のような働く上でのデメリットや注意すべきポイントも存在します。
- 肉体的・精神的負担が大きい
- 他業種と比較して給与面での課題はある
- キャリアアップには勉強が必要
それぞれの内容を以下で詳しく解説します。
肉体的・精神的負担が大きい
介護職は、利用者の身体介助や長時間の立ち仕事が多いため、肉体的負担を感じることがあります。
特に夜勤シフトがある場合、生活リズムが乱れやすくなるため、心身の健康管理が重要です。
さらに、利用者やその家族とのコミュニケーション、職場内での人間関係で精神的な負担を感じることもあります。
精神的負担だけでなく、排泄介助など、身体的な業務内容の厳しさからストレスを抱える人も少なくありません。
こういった負担を軽減するためには、自分に合った職場環境を選び、夜間勤務のない施設を選ぶなど働き方を工夫することが大切です。
他業種と比較して給与面での課題はある
介護職の給与は他業種と比較すると低い傾向にあります。とくに未経験や無資格でスタートする場合は、初任給は低くなることもあるでしょう。
これは、年齢や経験に応じて給与がアップする仕組みが影響しています。以下に、令和5年度の年齢別給与を表記しているので参考にしてください。
年齢 | 平均給与(円) |
20歳未満 | 170,601 |
20歳以上25歳未満 | 199,845 |
25歳以上30歳未満 | 227,858 |
30歳以上35歳未満 | 239,659 |
35歳以上40歳未満 | 243,071 |
40歳以上45歳未満 | 244,499 |
45歳以上50歳未満 | 248,187 |
50歳以上55歳未満 | 247,713 |
55歳以上60歳未満 | 246,311 |
60歳以上65歳未満 | 236,057 |
65歳以上70歳未満 | 226,113 |
70歳以上75歳未満 | 209,229 |
75歳以上 | 202,336 |
年齢を重ねスキルアップしたり、資格取得を目指したりすれば少しずつですが給与は上がっていきます。
また、若く体力のあるうちは積極的に夜間勤務に入り、基本給の低さを補う方法もあります。ワークライフバランスを考慮しながら検討するとよいでしょう。
出典:介護労働センター『令和5年度介護労働実態調査』(資料編-84)
キャリアアップには勉強が必要
介護職は資格取得でスキルアップが可能な業界ですが、資格取得には一定の勉強や努力が必要です。
たとえば、介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)などの資格を目指す場合、長期間に渡る学習や実務経験が求められます。
資格取得を怠ると、キャリアパスが閉ざされる可能性もあるため、常に学ぶ姿勢を持つ必要があります。
学ぶことが負担に感じられる場合は、職場でのサポート体制や資格取得支援制度が整った職場を選ぶのも一つの手です。
以下のページでは、介護職に転職する際の「心構え」について解説しているので、ぜひあわせてお読みください。
介護職に転職する際の心構えとは?長く働き続けるポイントも解説
介護職への転職を親の介護に活かす方法
介護職へ転職し必要なスキルや知識を身につけておけば、将来の負担を軽減できるでしょう。
特に親の介護は、家族だからこそ避けられない難しさがあります。
介護の資格は、具体的な介助方法だけでなく、介護される人の気持ちや心のケアについても学べる内容が含まれています。
たとえば、以下のような資格を取得しておくと、将来の介護にも活かせるでしょう。
資格の種類 | 内容 |
介護職員初任者研修 | 介護の基礎知識を習得し、日常的な介助に対応可能 |
介護福祉士 | 高度な介助スキルとともに、利用者や家族の心理的サポートも学べる |
介護支援専門員(ケアマネジャー) | 介護サービスの計画作成やコーディネートが可能 |
上記のようなスキルや知識を身につければ、家族を介護する際もスムーズに進められるだけでなく、自分自身の心にも余裕が持てます。
介護職へ転職する具体的なステップ
介護職への転職を成功させるためには、以下4つのステップを踏む必要があります。
- 転職エージェントに登録する
- 働き先の施設や働き方を絞る
- 必要であれば先に資格を取得する
- 面接を受ける
順に解説するので、転職活動の参考にしてください。
ステップ1|転職エージェントに登録する
まずは、介護職専門の転職エージェントに登録しましょう。
転職エージェントを利用すれば、自分に合った求人情報を効率よく収集できます。
また、転職活動中の悩みや疑問を相談できるのも大きなメリットです。
以下の記事では、オススメの転職エージェントを紹介していますので、参考にしてください。
オススメの転職エージェント5選!しつこい営業電話の少ないエージェントも比較
ステップ2|働き先の施設や働き方を絞る
次に、自分が働きたい施設や希望する働き方を明確にしましょう。
介護施設にはさまざまな種類があり、それぞれ仕事内容や特徴が異なります。
例えば、介護施設の種類には以下のようなものがあります。
施設の種類 | 特徴 |
特別養護老人ホーム | ・要介護3以上の方が対象 ・身体介助から看取りまで対応 |
介護付き有料老人ホーム | ・要介護方のみ利用できる専用型と、自立と要介護どちらも受け入れ可能な混合型の2種類がある ・介助業務と生活支援など利用者さんに合わせたサービスを提供 |
デイサービス | ・日中の介護やリハビリを提供する通所型施設 ・利用者とのコミュニケーションが重要 |
グループホーム | ・認知症の高齢者が少人数で生活する施設 ・認知症ケアが求められる |
施設のくわしい種類や特徴は、以下の記事をご覧ください。
高齢者施設にはどんな種類があるの?特徴から選び方まで解説します!
ステップ3|必要であれば先に資格を取得する
無資格で転職できる施設もありますが、全国の介護事業所において認知症介護基礎研修が義務化されており、転職後1年以内に受講する必要があります。
この資格を事前に取得しておけば、スムーズに転職活動が進むでしょう。
eラーニングを使って1日で取得できる資格のため、働きながら転職活動をする方でも簡単に受講できます。
詳細は以下よりご確認ください。
ステップ4|面接を受ける
転職先を絞ったら、実際に面接を受けます。
通常の転職と同様に、担当者が見ているポイントやよく聞かれる質問への回答例を事前に準備しておくと、合格率が高まります。
面接での好印象が採用の鍵となるため、準備を万全にして臨みましょう。
介護職の面接で聞かれる質問や回答例は、以下の記事を参考にしてください。
介護転職の合格率を上げる!面接で必ず聞かれる質問や回答例・担当者が見ているポイントを解説
まとめ
介護職は、安定した職場環境やキャリアアップの可能性がある一方で、肉体的・精神的な負担が伴う職種でもあります。
しかし、適切な準備や知識を身につければ、親や祖父母の介護にも役立つスキルを得られる大きなメリットがあります。
介護職への転職は、家族の未来を支えるだけでなく、自分自身のキャリアにもつながる選択肢です。
まずは、転職エージェントへの登録や資格取得の計画立てから始めてみてはいかがでしょうか。