特別養護老人ホームへの入居を検討している際、どれくらいの費用がかかるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。特別養護老人ホームの入居費用や月額費用などがわかると、入居のイメージがつきやすいでしょう。
当記事では、特別養護老人ホームの入居にかかる費用の仕組みや月額費用内訳、費用を抑える3つの方法などを紹介します。
記事目次
特別養護老人ホーム(特養)の入居にかかる費用の仕組み
ここでは、特別養護老人ホームの入居にかかる費用の仕組みを詳しく紹介します。
入居一時金
有料老人ホームなど民間の介護施設では、入居一時金がかかるため初期費用が高くなりやすいです。
一方、特別養護老人ホームは入居一時金といった入居に必要な費用はかからず、月額利用料のみ発生します。初期費用を抑えて入居できるため、費用などに不安を抱えている方も安心できるでしょう。
月額利用料
特別養護老人ホームの入居には、月額利用料の支払いが必要です。
特別養護老人ホームの居室は相部屋タイプとユニットタイプに分かれており、居室のタイプと所得の段階によって月額利用料が異なります。相部屋タイプは約3〜9万円、ユニットタイプは約6〜13万円で利用可能です。
特別養護老人ホームにおける月額費用の内訳
特別養護老人ホームにおける月額費用の内訳は以下の通りです。
- 施設介護サービス費
- 介護サービス加算
- 食費
- 居住費
- 日常生活費
それぞれ詳しく紹介します。
1.施設介護サービス費
特別養護老人ホームの入居には、介護サービスを受けるために施設介護サービス費が発生します。施設介護サービス費は介護の必要性が高い分、比例して費用も高くなります。
また、居室のタイプによっても費用は変化するのが特徴です。要介護度と居室タイプ別の施設介護サービス費は以下をご覧ください。
多床室・従来型個室 | ユニット型個室・ユニット型準個室 | |
要介護5 | 25,410円 | 27,870円 |
要介護4 | 23,400円 | 25,860円 |
要介護3 | 21,360円 | 23,790円 |
要介護2 | 19,230円 | 21,600円 |
要介護1 | 17,190円 | 19,560円 |
要介護度と希望する居室タイプを照らし合わせて、施設介護サービス費がどれくらいかかるか計算しましょう。
2.介護サービス加算
介護サービス加算は、施設の職員数や設備などに応じて支払う費用です。介護サービス加算の項目は以下の通りです。
- 看護体制加算:看護師に人員数や体制に応じて支払う加算
- 介護職員処遇改善加算:介護職員の待遇を改善するための加算
- サービス提供体制強化加算:介護福祉士の割合、勤続年数に応じて支払う加算
- 初期加算:入居後30日まで支払う加算
- 外泊時費用:外泊する場合に応じて支払う加算
特別養護老人ホームへ入居する際、どの程度のサービスを受けられるかの指針には、介護サービス加算額が一つの目安になります。介護サービス加算額が高ければ高いほど、施設の設備や職員数が多いため質の高いサービスを受けられます。
3.食費
入居者の月額費用には、毎日の食費も含まれています。
基本的には毎日3食分として計算されますが、入居者が他病院へ入院するなど数日間施設へ戻らない場合は請求対象にはなりません。日帰り外出で、昼食や夕食など1食分を欠食する場合は請求対象になります。
4.居住費
特別養護老人ホームで生活するための居住費も、月額費用に含まれています。居住費は通常のマンションやアパートの家賃に該当する費用です。
5.日常生活費
食費などに加えて、医療費やイベント参加費などの日常生活費も必要です。医療費は、入居中に怪我や病気にかかってしまった場合の通院費などに使用されます。
施設によっては、定期的にイベントや行事が企画されることもあるでしょう。こうしたイベントや行事への参加費、月1程度の散髪代なども日常生活費から賄われます。
【居室タイプ別】特別養護老人ホームの月額費用の目安
特別養護老人ホームの月額費用は、居室タイプ別で異なるのが特徴です。
- 多床室の費用目安
- 従来型個室の費用目安
- ユニット型個室的多床室
- ユニット型個室
それぞれ詳しく紹介します。
多床室の費用目安
4人一部屋の多床室で生活する場合の費用は、居住費約25,000円、食費約40,000円が目安です。多床室における、要介護ごとの費用目安は次の通りです。
- 要介護5:月額利用料約94,000円
- 要介護4:月額利用料約90,000円
- 要介護3:月額利用料約90,000円
- 要介護2:月額利用料約90,000円
- 要介護1:月額利用料約86,000円
多床室は、他の居室タイプと比較すると安い傾向にあります。他入居者と同部屋でも生活できる方や、少しでも費用を抑えたい方は多床室への入居を検討してみてはいかがでしょうか。
従来型個室の費用目安
従来型個室で生活する場合の費用は、居住費約35,000円、食費約40,000円が目安です。従来型個室は入居者が一人で使える個室であり、多床室よりもプライバシーが守られた環境の中で生活できます。
従来型個室における、要介護ごとの費用目安は次の通りです。
- 要介護5:月額利用料約100,000円
- 要介護4:月額利用料約100,000円
- 要介護3:月額利用料約99,000円
- 要介護2:月額利用料約98,000円
- 要介護1:月額利用料約95,000円
自分だけの居室が欲しい方は、従来型個室のある特別養護老人ホームを探してみましょう。
ユニット型個室的多床室
ユニット型個室的多床室で生活する場合の費用は、居住費約50,000円、食費約40,000円が目安です。
ユニット型個室的多床室は、多床室として使われていた居室を簡易的な壁などで仕切った居室を指します。キッチンやトイレなどは共有物となっています。
従来型個室と比較すると他入居者の生活音が気になる場合もあるでしょうが、従来型個室よりも費用を抑えながら自分だけのスペースを作れます。ユニット型個室的多床室における、要介護ごとの費用目安は次の通りです。
- 要介護5:月額利用料約120,200円
- 要介護4:月額利用料約120,000円
- 要介護3:月額利用料約117,000円
- 要介護2:月額利用料約114,000円
- 要介護1:月額利用料約112,000円
ユニット型個室
ユニット型個室で生活する場合の費用は、居住費約60,000円、食費約40,000円が目安です。
ユニット型個室は、従来型個室と同様の居室になっており、ダイニングなどはユニットで分けられた入居者で共有する居室です。ユニット型個室における、要介護ごとの費用目安は次の通りです。
- 要介護5:月額利用料約130,000円
- 要介護4:月額利用料約127,000円
- 要介護3:月額利用料約125,000円
- 要介護2:月額利用料約125,000円
- 要介護1:月額利用料約123,000円
ユニット型個室は、プライバシーが守られた空間で生活できます。また、共用部では職員や他入居者とも交流しやすいです。
ユニットごとの生活に抵抗がない方は、ユニット型個室がある特別養護老人ホームへの入居も検討してみてはいかがでしょうか。
特別養護老人ホームの費用を抑える3つの方法
特別養護老人ホームの費用を抑える方法は以下の通りです。
- 負担限度額認定を受ける
- 高額介護サービス費制度を利用する
- 高額医療・高額介護合算療養費制度を利用する
それぞれ詳しく紹介します。
方法1.負担限度額認定を受ける
特別養護老人ホームの費用を抑えるためにも、負担限度額認定を受けましょう。
負担限度額認定は、所得や資産によって食費や居住費の上限を設定する方法です。上限を超えた場合は、介護保険によって賄われます。
方法2.高額介護サービス費制度を利用する
高額介護サービス費制度を利用すると、特別養護老人ホームの費用を抑えられます。
高額介護サービス制度は、自己上限負担を超えた場合に払い戻しを受けられる方法です。通常介護サービス費は、10〜30%の自己負担がかかり、その額は収入によって変化します。
自己上限額は6段階に分かれており、多くの人は1ヵ月44,000円が上限になるでしょう。所得が少ない方は、約15,000〜 約25,000円が上限額となります。
上限額を超えた場合は、居住地の市町村から申請書が送られてくるため、期限の2年以内に払い戻しを受けましょう。
方法3.高額医療・高額介護合算療養費制度を利用する
特別養護老人ホームの費用を抑えるために、高額医療・高額介護合算療養費制度を利用しましょう。高額医療・高額介護合算療養費制度は、健康保険と医療保険を利用して限度額を超えた際に払い戻しが受けられる制度です。
例えば、自己負担額が60万円の方が年間90万円を負担した場合、30万円払い戻しを受けられます。
利用できるのは原則同じ健康保険に加入している方で、医療保険と介護保険に限られるため注意しましょう。介護保険適用外のサービスなどは、対象外になります。
まとめ
ここまで、特別養護老人ホームの入居にかかる費用の仕組みや月額費用内訳、費用を抑える3つの方法などを紹介しました。特別養護老人ホームは、入居一時金がかからないため初期費用を抑えられるのが特徴です。
月額利用料には、介護サービス費や居住費などが費用に含まれており、居室タイプや要介護度によって費用は変動します。また、自己負担額を超えたときに利用できる方法も充実しています。
特別養護老人ホームへ入居する場合は、費用を抑えられるよう、負担限度額認定や高額介護サービス費制度などを利用しましょう。