「介護職に転職したいけど体力的に大変そう」
「体力的に大変そうで長く働けるか不安」
介護職に転職を検討している方のなかには、上記のようなお悩みがある方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、介護職へ転職する際の心構えと、仕事内容ややりがい、長く働き続けるためのポイントなどを解説します。
できるだけ長く働きたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
介護職に転職する際の心構え
介護職への転職は新たな挑戦であり、やりがいのある仕事です。しかし、同時に体力的な負担や精神的なストレスを感じる場面もあるかもしれません。
そこで、スムーズに転職し、長く働き続けるために知っておくべき心構えがいくつかあります。
具体的な内容は以下の5つです。
- 介護職の実態を正しく理解する
- 自分に合った職場を見つける
- スキルアップの機会を活用する
- 人間関係づくりを大切にする
- 体調管理に気をつける
以下より、それぞれの内容を詳しく解説します。
介護職の実態を正しく理解する
まず、介護職の実態を理解することが重要です。「離職率が高い」「大変な仕事」といったイメージを抱いているかたもいるかもしれませんが、実際はそうとも限りません。
実際の仕事内容や職場環境を事前に把握することで、転職後のミスマッチを防ぎ、長期的なキャリア形成に役立ちます。
厚生労働省の調査によると、介護職の離職率は13.1%(2023年度)で、全産業平均の15%(2022年)を下回っています。
介護業界は、労働環境の改善や処遇改善の取り組みも進んでおり、以前よりも働きやすい環境が整いつつあります。
もちろん、体力的に大変な面や精神的な負担を感じることもありますが、それ以上にやりがいを感じられる仕事です。
利用者さんの笑顔や「ありがとう」の言葉は、何ものにも代えがたい喜びとなるでしょう。
出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査の結果P.1」
自分に合った職場を見つける
介護職に転職する際は、自分に合った職場を見つけることも非常に重要です。
介護職には、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護付き有料老人ホーム・デイサービス・訪問介護など、さまざまな働き先があります。
施設によって仕事内容や必要なスキル、利用者さんの状態などが異なるため、自分の適性や希望に合った職場選びが長く働き続けるコツです。
転職活動と同時に、現場を知ることで、転職後のミスマッチを防げるでしょう。
スキルアップの機会を活用する
介護職への転職の心構えとして、スキルアップの機会を活用することも覚えておきましょう。
介護の仕事は、経験を積むほどにやりがいが増す仕事です。
資格取得や研修を通したスキルアップにより、質の高いケアを提供し、自身の成長にもつながります。
スキルアップの機会とは、以下のようなものです。
- 資格取得支援制度の利用
- 研修への参加
- 先輩職員からの指導
機会を活用し常に学び続けることで、さらにスキルアップできるでしょう。
人間関係づくりを大切にする
介護職員として働くうえで、人間関係づくりを大切にする心構えも重要です。
退職理由の上位に職場の人間関係が上がっていることからも、良好な人間関係づくりが欠かせません。
介護はチームで働く仕事です。積極的なコミュニケーションや、助け合う姿勢を心がける必要があります。
基本的な挨拶や笑顔で対応するなど、些細な心がけでよい人間関係は築けます。
介護の現場では、スタッフ間だけではなく利用者さんとのコミュニケーションも非常に重要になるため、明るい笑顔と元気な挨拶を常に意識してみましょう。
体調管理に気をつける
介護現場の仕事は体力を使う仕事です。そのため自身の体調管理が欠かせません。体調管理には以下のポイントに気をつけましょう。
- 睡眠を十分にとる
- ストレス解消法を見つける
- 正しい介護知識を身につけ、体の負担を軽減する
転職先の施設によっては、夜間勤務を担当する可能性もあるでしょう。
夜間勤務は生活リズムの乱れから、体調を崩しやすくなるともいわれています。
介護職に転職する際は「あまり風邪を引かないから大丈夫」と慢心せずに、これまで以上に体調管理を徹底する意識と行動が大切です。
介護職の仕事内容は?
介護職の仕事は、一言でいうと「利用者さんの日常生活をサポートすること」です。
しかし、具体的な仕事内容は、働く施設の種類や利用者さんの状態によって大きく異なります。
ここでは「仕事内容」と「施設の特徴」を解説するので、参考にしてください。
介護職の仕事内容
介護職の仕事には、大きく分けて「身体介護」と「生活援助」の2つがあります。仕事内容の違いは次のとおりです。
仕事の区分 | 内容 |
身体介護 | 身体介護 食事介助 入浴介助 排泄介助 寝返りの介助 移動・移乗介助 着替えの介助 |
生活援助 | 掃除、洗濯、調理、買い物などの家事 |
上記に加えて、レクリエーションの企画・運営や、利用者さんとのコミュニケーション、記録業務など、バックオフィスの仕事も介護では重要な仕事です。
また、資格保有者と無資格者では仕事の範囲が異なります。たとえば、喀痰吸引や経管栄養などの医療行為は、資格補修者だけが許される仕事です。
より、業務の幅を広げて活躍したいと考えている方は、資格取得を目指すとよいでしょう。
主な施設と特徴
介護施設には、さまざまな種類があり、対象者や提供サービスが異なります。主な施設の特徴を以下にまとめました。
施設の種類 | 特徴 | 対象者 | サービス内容 |
特別養護老人ホーム(特養) | 公的な施設で、比較的重度の方が対象で終身利用可 | 要介護3以上 | 入浴、排泄、食事などの介助、レクリエーション、機能訓練など |
介護老人保健施設(老健) | 公的な施設で、リハビリテーションに重点を置いており在宅復帰が目的 | 要介護1以上 | リハビリテーション、入浴、排泄、食事などの介助、レクリエーションなど |
介護医療院 | 医療ニーズの高い方が対象。長期的な医療ケアや看取りにも対応 | 要介護1以上 | 入浴、排泄、食事などの介助、リハビリテーション、医療ケア、看取りなど |
介護付き有料老人ホーム | 民間施設で、サービスが充実している | 要介護1以上 | 入浴、排泄、食事などの介助、レクリエーション、機能訓練、医療ケアなど |
住宅型有料老人ホーム | 民間施設で、比較的自由な生活を送れる | 要支援以上(自立支援は施設により受け入れ可) | 生活サポート、見守り、緊急時の対応など(外部サービスを利用) |
サービス付き高齢者向け住宅 | 民間施設で、比較的自由な生活を送れる | 自立以上 | 食事提供、生活相談、見守りなど(外部サービスを利用) |
グループホーム | 認知症の方向けの小規模施設 | 認知症の方 | 少人数での共同生活、食事、入浴などの介助、レクリエーションなど |
ケアハウス | 軽費老人ホームの一種で、自立した生活を送りたい高齢者向け | 60歳以上 | 食事提供、生活相談、見守りなど |
デイサービス | 通所型の施設で、日中のみサービスを提供 | 要支援・要介護 | 入浴、食事の提供、レクリエーション、機能訓練など |
訪問介護 | 利用者の自宅を訪問してサービスを提供 | 要介護1以上 | 身体介護、生活援助 |
ショートステイ | 短期滞在型の施設で、旅行や冠婚葬祭などで家族が介護できない時に利用 | 要支援以上 |
このように、介護職の仕事内容は多岐にわたります。
転職する際は、どのような施設で、どのような利用者さんに、どのようなサービスを提供したいのかを明確にすることが大切です。
それぞれの施設について、より詳しく知りたい方は「老人ホームと介護施設の違いとは?種類ごとの特徴や費用面での違いを解説します」の記事も参考にしてください。
介護職の魅力とやりがい
介護の仕事は「体力的にきつい」「精神的につらい」といったイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、それ以上に大きなやりがいや魅力を感じられる仕事です。
具体的なやりがいと魅力には以下のようなものがあります。
- 利用者や家族からもらう感謝のことば
- 人生の先輩から学べる機会が多い
- 安定して働ける安心感
- 親の介護などにも役立つ知識が身につく
それぞれの内容を詳しくみていきましょう。
利用者や家族からもらう感謝のことば
介護の仕事で一番のやりがいは、利用者さんやそのご家族から直接「ありがとう」と感謝の言葉を聞けることです。
「あなたの助けがあって本当に助かった」「あなたのおかげで気持ちが楽になった」など、心からの感謝の言葉は、大きな喜びであり、仕事のモチベーションにもつながります。
利用者さんやご家族から感謝されることで、自分の仕事が人の役に立っていると実感を得られ、さらに頑張ろうという気持ちになれるでしょう。
人生の先輩から学べる機会が多い
介護の仕事では、さまざまな人生経験を持つ高齢者の方々と接する機会が多くあります。
戦争や高度経済成長など、歴史の生き証人である高齢者の方々から、貴重な話や人生の教訓を聞ける機会もあるでしょう。
こうした経験を通して、自分の視野が広がったり、人生観が変わったりすることもあります。
高齢者の方々との触れ合いは、人生の深みや豊かさを学ぶ貴重な機会となり自身を大きく成長させてくれるはずです。
安定して働ける安心感
日本は世界でも有数の高齢化社会であり、介護ニーズはますます高まっています。そのため、介護職は将来性が高く、安定して働ける仕事だといえるでしょう。
また、介護福祉士などの資格を取得することで、キャリアアップの道も開けてきます。
安定した収入と将来の目標を持つことは、仕事へのモチベーションを高め、安心して働き続けるために重要な要素です。
親の介護などにも役立つ知識が身につく
介護の仕事を通して、高齢者の身体や心の状態、介護の方法など、さまざまな知識や技術を身につけられます。
身につけた技術や知識は、将来自分の親や家族を介護する際に役立つでしょう。
介護の知識や経験は、自分自身の生活にも活かせる貴重な財産となりえます。
このように介護の仕事は「人の役に立ちたい」「安定して長く働きたい」「実践的なスキルを身に着けたい」という思いを実現できる仕事といえるでしょう。
介護職に転職するステップ2パターン
2024年4月から「認知症介護基礎研修」の受講が義務化され、無資格では介護職として働けなくなりました。
そのため、以下いずれかのステップを踏んで転職する必要があります。
- 資格取得をしてから転職する
- 転職してから資格取得支援制度を利用する
それぞれの内容を詳しくみていきましょう。
パターン1|資格を取得してから転職する
「認知症介護基礎研修」は、eラーニングというインターネット上のシステムで受講できます。
そもそも、認知症介護基礎研修とは、認知症の人を取り巻く現状や関わり方を学べるものです。
人口の5人に1人が高齢者になるといわれている昨今、認知症に対する理解を深め、質の高い認知症ケアを提供するために義務化されました。
認知症介護基礎研修では、150分程度の動画を視聴し、確認テストを受けます。合計6時間(1日)の講義と演習で修了する研修です。
費用は自治体ごとに異なり、目安は3,000円程度となっています。
認知症介護基礎研修は、働きながら転職活動する予定の方も、手軽に受けられる研修です。
転職前に資格を取得しておくことで、転職先の選択肢が広がる可能性もあります。時間を確保しやすい環境のかたは、事前の取得をオススメします。
パターン2|転職してから資格取得支援制度を利用する
認知症介護基礎研修は、就職後1年以内の受講が推奨されています。
そのため、転職後に「認知症介護基礎研修」を受けるパターンでも問題はありません。
介護に関わる資格には以下のようなものがあります。
- 介護福祉士
- 介護福祉士実務者研修
- 介護職員初任者研修
転職先の施設によっては、資格取得支援制度を取り入れている場合もあり、働きながら資格取得を目指すことが可能です。
各資格はスクールに通い、実技を学ぶ必要があります。取得することで業務範囲が広がり、給与アップにもつながるでしょう。
なお、介護職員初任者研修などの資格保有者は、別途で認知症介護基礎研修を受ける必要はありません。
転職の際に「どの資格取得を目指すか」を検討しておくことで、効率的にキャリアアップを目指せます。
介護職で長く働き続けるポイント
介護職は、やりがいを感じながら長く働き続けられる仕事です。令和5年度介護労働実態調査によると、介護職の平均年齢は48.4歳と高く、年を重ねても働きやすい仕事だといえます。
体力的な負担や精神的なストレスを感じる場面も多い仕事ですが、長く働き続けるためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- 資格取得に挑戦し仕事の幅を広げる
- 常に学びスキルアップを心がける
- 仕事のやりがいを見つける
たとえば、ケアマネージャーの資格を取得すれば、介護サービスの計画作成や調整など、より責任のある仕事に就けます。
年齢を重ねて体力が不安になっても、資格を持っていれば体力第一ではない仕事内容を選べるようになり、長く働き続けられるはずです。
介護の仕事は、決して楽な仕事ではありません。しかし、それ以上にやりがいがあり、人として成長できる仕事だといえます。
出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」
まとめ
本記事では、介護職に転職する際の心構えや仕事内容、魅力とやりがい、転職ステップ、長く働き続けるためのポイントについて解説しました。
介護職は、体力的な負担や精神的なストレスを感じることもありますが、それ以上にやりがいのある仕事です。
高齢化が進む日本では、介護職の需要はますます高まっており、安定して働ける仕事の一つといえます。
転職を検討されている方は、介護求人サイトや転職エージェントを利用して、求人情報を見てみたり、実際に介護施設に見学に行ってみたりするのもよいでしょう。
複数の施設を比較検討することで、自身とマッチした長く働き続けられる職場を見つけられます。
ぜひこの記事を参考にして、介護職への第一歩を踏み出してみてください。