「特養で働くケアマネジャーの具体的な仕事内容が知りたい」
「ほかの働き先との役割の違いを知りたい」
ケアマネジャーとしての働き先を探している方のなかには、上記のような疑問がある方も多いのではないでしょうか。
本記事では「特養におけるケアマネジャーの仕事内容」と「働き先ごとの役割」を中心に解説します。特養での仕事内容だけでなく、ほかの働き先との違いも確認できる内容のため、ぜひ最後までご覧ください。
記事目次
特養(特別養護老人ホーム)におけるケアマネジャーの仕事内容
特養におけるケアマネジャーの仕事内容は、おもに以下の6つです。
- ケアプランの作成・管理
- アセスメントの実施
- サービス担当者会議の実施
- モニタリング・面談の実施
- 関係者との連携
- そのほかの業務
ケアプランの作成・管理
ケアマネジャーの仕事のなかで大きな割合を占めるのは、ケアプランの作成・管理です。特養で生活する入居者が自立した日常生活を営めるように、解決すべき課題を把握したうえでケアプランを作成します。ケアマネジャーが作成したケアプランをもとに介護サービスが提供されるため、特養において重要度の高い業務です。
またケアプランは、入居者本人やその家族と相談したうえで、本人の希望に沿ったプランを立てます。たとえば「転倒せずに安心して歩きたい」といった希望がある場合、以下のような目標・サービス内容を策定します。
ニーズ | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
転倒せずに安心して歩きたい | 体を動かして筋力を維持し、健康を保つ | 定期的に運動して体の柔軟性を保ち、転倒しない体づくりをする | 個別機能訓練・歩行訓練・体操定期的な有酸素運動・ウォーキング |
なお、特養では在宅復帰の可能性を模索しながら、施設内での自立した暮らしを目標として、個人を尊重したケアプランを作成します。入居者1人ひとりの状況を把握し、その人らしい生活が送れるように支援します。
アセスメントの実施
介護現場におけるアセスメントは、入居者の心身機能や生活状況などの情報を収集し、入居者の希望や解決すべき課題を明確化するための作業です。特養で働くケアマネジャーがアセスメントを実施するのは、入居者が特養へ「入居する前」と「入居したあと」の2つのタイミングです。
まだ特養に入居していない入居予定者のアセスメントは「入居予定者が暮らす自宅」や「入院先の医療機関」などに訪問して実施します。また入居中の場合は、入居者の居室に訪れて実施するのが一般的です。
アセスメントは個人的な考えや手法で実施せず、国が指定している以下の課題分析標準項目に沿って実施します。
- 基本情報
- これまでの生活と現在の状況
- 利用者の社会保障制度の利用情報
- 現在利用している支援や社会資源の状況
- 日常生活自立度(障害)
- 日常生活自立度(認知症)
- 主訴・意向
- 認定情報
- 今回のアセスメントの理由
- 健康状態
- ADL
- IADL
- 認知機能や判断能力
- コミュニケーションにおける理解と表出の状況
- 生活リズム
- 排泄の状況
- 清潔の保持に関する状況
- 口腔内の状況
- 食事摂取の状況
- 社会との関り
- 家族等の状況
- 居住環境
- その他留意すべき事項・状況
アセスメント時には、上記の項目に沿って包括的に情報を集めます。また、実施時には「入居者本人・家族の希望を確認しているか」「組織内の多職種から情報収集しているか」などにも留意が必要です。アセスメントを適切に実施することで、入居者に合ったケアプランの作成につなげられます。
参考:令和5年10月16日厚生労働省老健局「介護保険最新情報」
サービス担当者会議の実施
サービス担当者会議は、入居者のケアプランの内容・方向性を決める際に、関係者が集まって内容を検討する会議です。入居者本人やその家族をはじめ、医師や看護師、介護スタッフ、リハビリスタッフなどが集まります。それぞれの視点に基づいた意見を交わすことで、入居者に最適なケアプランを作成できます。
ケアマネジャーはケアプランの作成責任者として、会議の開催や進行、意見の調整などを行います。サービス担当者会議で挙がった意見をもとに、原案を修正して新たなケアプランを作成・更新するため、入居者に適切なケアを提供するのに欠かせない会議です。
モニタリングの実施
モニタリングでは、特養の入居者の方が実際に介護サービスを受けている現場をチェックします。ケアプランやサービス内容が適切かどうかを判断し、必要に応じてケアプランを見直します。
特養ではサービスを提供している場面が直接モニタリングできるため、入居者の状態やニーズに応じてケアプランが調整しやすいのが特徴です。
そのほかの業務
特養におけるケアマネジャーは職場によって仕事内容が異なるため、以下のような業務も担当します。
- 介護業務(入居者の日常生活に必要な支援)
- 請求業務を含めた給付管理
- 加算の算定に伴うケアプラン・提供サービスの調整
- 要介護認定の申請手続き
- 関係各所との調整など
特養(特別養護老人ホーム)で働くケアマネジャーの1日の流れ
特養で働くケアマネジャーは、入居者や家族との面談や関係各所とのやり取りが発生するため、日中に勤務することがほとんどです。ケアマネジャーの1日のスケジュール例は、以下のとおりです。
時間 | 業務内容 |
8:30 | 出勤・朝礼 |
9:00 | ミーティング・関係各所への連絡 |
10:00 | ケアプランの作成・更新 |
12:00 | 休憩 |
13:00 | 入居者のモニタリング |
14:30 | サービス担当者会議 |
16:00 | ケアプランの見直し |
17:00 | ミーティング |
17:30 | 退勤 |
なお、施設によっては宿直業務があるケースもあります。この場合、夜間の緊急電話や外来者の応対などを行います。
働き先によってケアマネの役割は異なる
ケアマネジャーに求められる役割は、勤務する施設によって異なります。ここからは、施設ごとのケアマネジャーが担う役割を中心に解説します。
特養(特別養護老人ホーム)
特養は、要介護3~5に認定された日常的に介護を必要とする方が生活する場です。特養のケアマネジャーの人員配置は、常勤1人以上・原則専従とされています。
ただし入居者の処遇に支障がない場合は、特養のほかの職務との兼務が可能なため、マネジメント以外の業務を担うケースもあります。たとえば、介護職員と兼務して入居者の生活支援を行ったり、生活相談員と兼務して入居者・家族から相談を受けたりするケースもあります。
老健(介護老人保健施設)
老健(介護老人保健施設)は、要介護1~5に認定された方が在宅復帰を目指して、リハビリ・医療ケアを受けながら生活する場です。老健のケアマネジャーの人員配置は、常勤1人以上とされている一方で、入所者数100またはその端数を増すごとに増員するケアマネジャーに関しては、非常勤も認められています。
入居者の処遇に支障がない場合に限り、老健のほかの職種と兼務可能です。よって、特養と同様に介護スタッフや生活相談員と兼務するケースもあります。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、要支援2あるいは要介護1~5に認定された認知症のある方が生活する場です。自宅に近い環境で、5~9人の利用者が共同生活を送ります。
グループホームのケアマネジャーは、事業所ごとに1名以上の配置が義務付けられています。2人以上の計画作成担当者を配置する場合、いずれか1人がケアマネジャーの資格を有していれば問題ありません。ただし、ケアマネジャーも含めた計画作成担当者全員の認知症介護実践者研修の修了が義務付けられています。
また、グループホームは1ユニットの入居者数が少ないと同時に、スタッフ数も少ない傾向があります。よってケアマネジャーは、業務が適正に行われる場合に限り、管理者や介護スタッフなどとの兼務が認められています。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは介護が必要な高齢者が入居し、身の回りの世話や介護サービスなどを受けながら生活する場です。おもに民間企業が運営しており、施設によって入居条件や費用、運営方針などが異なります。
介護付き有料老人ホームのケアマネジャーは、入居者の処遇に支障がない範囲でほかの職種との兼務が認められています。介護付き有料老人ホーム自体が運営会社ごとに特色が異なることから、施設独自の業務がある場合もあります。
たとえば、レクリエーションや行事に力を入れている施設であれば企画の発案を求められたり、高級感を大切にしている施設であればホスピタリティの意識が求められたりするケースもあるでしょう。
居宅介護支援
居宅介護支援事業所で働くケアマネジャーは「居宅ケアマネ」とも呼ばれます。特養や老健などのケアマネジャーと異なり、自宅で暮らす介護が必要な高齢者のケアプランを作成し、自宅で介護サービスが受けられるように支援するのが仕事です。
施設で働くケアマネジャーは、最大100人程度のケアプランを作成する一方で、居宅介護支援事業所で働くケアマネジャーは法令により最大35人までと定められています。この人数制限は、居宅ケアマネの業務内容に起因しています。
居宅ケアマネは、利用者宅を1軒1軒訪問し、利用者とその家族の意向を踏まえながらケアプランを作成する必要があります。従って、ケアプラン作成にあたり大幅な時間・手間を要するため、施設ケアマネと比べると受け持ち件数は少なく設定されています。
また、利用者ごとに連携する事業者が異なるため、多くの事業者とやり取りするのが特徴です。施設ケアマネと比べると、多様な関係者とのコミュニケーションが求められる傾向があります。
居宅ケアマネは、利用者の自宅での生活を支えるために、きめ細やかな調整力とコミュニケーション能力が求められる仕事だといえるでしょう。
特養(特別養護老人ホーム)のケアマネジャーの平均給与額
令和4年に厚生労働省が実施した「介護従事者処遇状況等調査」によると、特養のケアマネジャーの平均給与額は月給41万2,720円となっています。
ただし実際の給与額は、ケアマネジャーの経験年数や勤務先の特養の規模、所在地によって変動します。
経験年数が長いほど、給与額が高くなる傾向があります。また、大規模な特養や都市部の特養では、給与額が高めに設定されているケースが多いです。
ほかの介護サービス事業所との違い
以下の表は、特養とほかの介護サービス事業所のケアマネジャーの給与額を比較したものです。
施設形態 | 平均月給 |
特別養護老人ホーム | 41万2,720円 |
介護老人保健施設 | 39万3,390円 |
介護医療院 | 35万9,820円 |
訪問介護事業所 | 36万2,550円 |
特定施設入居者生活介護事業所(介護付き有料老人ホームなど) | 36万6,410円 |
認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム) | 35万9,550円 |
参考:厚生労働省老健局老人保健課「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
このように、ほかの介護サービス事業所と比べても特養のケアマネジャーの月給は比較的高く、最も平均月給が低いグループホームと比べると5万円以上の差があります。特養のケアマネジャーは介護業務を兼任して早番・遅番・夜勤手当が付くケースがあるため、給与額が高水準になっていると考えられます。
ケアマネジャーが特養(特別養護老人ホーム)で働く3つの魅力
ケアマネが特養で働く魅力は、以下の3つです。
- 多くのケアプラン作成に関われる
- ご利用者様や現場のスタッフと近い距離で働ける
- 高収入を目指せる
多くのケアプラン作成に関われる
特養では、入所者全員のケアプランを作成する必要があるため、ケアマネジャーは多くのケアプラン作成に関われる点が魅力です。
先述したとおり、居宅のケアマネジャーが担当するケアプランの件数は35件程度です。一方、特養のケアマネジャーは最大100件のケアプランを担当するケースもあるため、件数が多いほど、さまざまなケースを経験できます。
アセスメント力や課題分析力、モニタリング力など、ケアマネジメントに必要な力を存分に伸ばせる環境のため、ケアプラン作成のスキルを向上させたい方にとって、特養は最適な職場といえるでしょう。
ご利用者様や現場のスタッフと近い距離で働ける
特養では、ご利用者様や介護スタッフをはじめとしたスタッフと近い距離で働ける点も魅力です。
特養のケアマネジャーは施設に常駐しているため、ご利用者様の日々の様子を直接見ることが可能です。ADLの変化や体調の変化にいち早く気づき、きめ細やかなケアプランの作成・修正ができます。
また、介護職や看護職、リハビリ職など、他職種のスタッフとコミュニケーションを取る機会が多いのも特徴です。ご利用者様の情報を共有し、さまざまな視点からケアプランを検討できます。
さらに、来訪した家族と対面で話せる機会もあるため、ご家族の思いを直接聞いてケアプランに反映しやすい点もメリットです。
このように、特養のケアマネジャーは、ご利用者様を中心に、関係者と緊密に連携してケアマネジメントを行えます。「ご利用者様の思いに寄り添う」というケアマネジャー本来の役割を、存分に発揮できる環境だといえます。
高収入を目指せる
ケアマネジャーの平均月給は37万6,240円である一方で、特養のケアマネジャーは41万2,720円となっています。特養は公的機関が運営しているため経営が安定しており、ほかの施設と比べると待遇がよい傾向があります。
ただし施設によっては、介護現場との兼務で得られる手当によって給与額が上がっているケースがあります。ケアプラン作成に注力したい場合は、施設ごとのケアマネジャーの業務範囲を事前に確認しましょう。
特養におけるケアマネジャーの仕事内容でよくある3つの質問
特養のケアマネの仕事内容に関して、よくある質問は次の3つです。
- ケアマネと相談支援専門員との違いは?
- ケアマネがやってはいけないことはありますか?
- ケアマネが働く場所はどのような種類がありますか?
質問1.ケアマネと相談支援専門員との違いは?
ケアマネと相談支援専門員のおもな違いは、支援する対象者です。
相談支援専門員は障害者総合支援法に基づき、障害のある方の福祉サービス利用をサポートする役割を担います。具体的には、障害者手帳を持つ方のサービス等利用計画の作成や、サービス事業所との連絡調整などを行います。
一方ケアマネは、介護保険制度に基いて高齢者や介護が必要な方が介護サービスを受けられるように支援します。ただし、両者とも利用者の自立した生活をサポートするという点では共通しています。
質問2.ケアマネがやってはいけないことはありますか?
ケアマネがやってはいけないことは、おもに以下の3点です。
- 利用者への説明や同意を得ずに物事を進める
- 正当な理由なくサービスの提供を拒否する
- 利用者にとって必要な手助けをしない
ケアマネは利用者に対して、ケアプランの内容やサービスの選択肢などを十分に説明し、同意を得る必要があります。利用者の意向を無視して、一方的にケアプランを作成したり、サービスを決定したりしてはいけません。利用者とその家族の意向を踏まえたうえで、共同で意思決定を行う必要があります。
また、利用者との関係性の悪化や、要介護度、経済状況などを理由に、サービス提供を拒否することは禁止されています。ただし、以下のような正当な理由がある場合は、サービス提供を拒否することができます。
- 人員不足などの理由で、サービス提供が困難な場合
- 事業所の通常の実施地域外である場合
- 利用者やその家族が、他のケアマネにケアプラン作成を依頼していることが明らかな場合
やむを得ずサービス提供が困難な状況になった場合は、利用者に対して適切な説明を行い、ほかの事業者を紹介するなど、必要な措置を講じなければなりません。
加えて、利用者が必要とする支援を適切に提供しなければなりません。たとえば要介護認定の申請において、利用者が円滑に申請できるよう支援したり、受給資格等の確認を怠ったりしてはいけません。
利用者の状況に応じて、必要な情報提供や相談支援、関係機関との連携など、利用者の生活を支えるために不可欠な手助けを行うのがケアマネジャーの役割です。
質問3.ケアマネが働く場所にはどのような種類がありますか?
ケアマネの勤務先として代表的なのは、以下の5つです。
- 居宅介護支援事業所
- 介護施設
- 地域包括支援センター
- 医療機関
- 自治体の役所
ケアマネは、高齢者の生活に密着したさまざまな場所で活躍しています。働き先によって、仕事内容や求められるスキルも異なります。
まとめ
特養のケアマネジャーは、ケアプランの作成をはじめとした幅広い業務に携わります。入居者や現場スタッフと日頃から関われるため、入居者の状態やニーズに則したケアプランが作成しやすいのが魅力です。
本記事で紹介した特養のケアマネジャーの仕事内容を参考に、転職先の選択肢の1つに特養を加えてみてはいかがでしょうか。