【施設内研修会】「お酒」が「神様」だったあの日から。アルコール依存症と向き合う、ある物語

【施設内研修会】「お酒」が「神様」だったあの日から。アルコール依存症と向き合う、ある物語

皆さんこんにちは!
養護白寿荘の伊藤です。


2026年2月27日(金)14:00、当施設では少し特別な研修会が開かれました。

「アルコール依存症について」。

講師にお招きしたのは、「NPO法人 市民の会 寿アルク本牧荘」の施設長で、依存症予防アドバイザーの加藤様と、生活支援員の鎌田様。お二人とも、かつては壮絶なアルコール依存症の渦中にいた「当事者」です。

笑いあり、涙あり、そして背筋が伸びるような緊張感あり。
老若男女、すべての世代の心に響いた、あの午後の様子をレポートします。

「まずは自分の体質を知ることから」パッチテストで見える現実

研修は意外なワークショップから始まりました。

配られたのは小さな銀色の袋(ASKアルコール体質判定セット)。


中にはアルコールが塗られたパッチが入っています。
これを腕の柔らかい部分に貼り、20分待つ。


「赤くなる人は体質的にアルコールに弱い人。変わらない人は飲めるけれど、逆に『飲みすぎ』に気づきにくい人。これは体質の診断であって、善し悪しではありません。
でも、自分の『器』を知ることは、自分を守る第一歩なんです」


加藤様の軽妙なトークに、会場からは「あ、赤くなった!」「私は全然変わらない」と声が上がります。この「自分を知る」という小さなアクションが、依存症という大きなテーマへの入り口となりました。

壮絶な体験談。人生を「お酒」に明け渡した日々

後半、鎌田様が静かに語り始めたのは、あまりにも重く、リアルな「人生の記録」でした。

幼少期の家庭内暴力、若くして手を染めた薬物、そして逃げ場のない孤独。

2度の自死未遂、9回に及ぶ刑務所への収監。
その背景には、常に「お酒」がありました。

「最初の1杯を飲み始めると、止まらない。10年やめていても、1杯飲めば脳が『あの快感』を思い出して、一気に奈落へ落ちてしまうんです」

窓から飛び降り、血まみれで倒れていた鎌田様を救ったのは、ある施設の「長」でした。

「生きてるなら、助けてくれ!」

その一言から、鎌田様の回復の物語は動き出したのです。

「依存症」は治るのか?

参加した職員から「10年、20年とお酒をやめれば、依存症は治るのですか?」という問いに、加藤様ははっきりと答えました。


「依存症は治らない病気です。でも、止めることはできます」
脳に刻まれた報酬系(快感)の記憶は一生消えません。
だからこそ、「今日1日、最初の1杯に手を出さない」という選択を、仲間と共に積み重ねていく。

加藤様は、かつて自分を救ってくれた職員の言葉を振り返ります。
「何度も何度も同じ失敗をして施設に戻ってくる僕を、一度も責めず、毎回『さらな状態』で話を聞いてくれた。そのお節介が、僕の命を繋いでくれたんです!」

お酒に悩むすべての人と、その家族へ

アルコール依存症は「家族を巻き込む病気」とも言われます。

本人が酔っている間に、家族は疲弊し、絶望し、最後には「一緒に死ぬしかない」と思い詰めてしまうことも少なくありません。

加藤様は力強く結びました。
「自分一人で治そうと思わないでください。
それは、支える側も同じです。
恥を捨て、専門家や同じ悩みを持つ仲間に助けを求めてください。
お酒をやめて、普通に笑える日は必ず来ます!」

編集後記:誰にでも起こりうること

研修が終わった後、会場は温かな拍手に包まれました。

お酒は、私たちの日常に溢れています。
お祝いの席、悲しみの席、そして一日の終わりのリラックスタイム。
しかし、その裏側には、一歩間違えれば誰の手からもこぼれ落ちてしまう危うさが潜んでいます。

今回の研修で学んだのは、医学的な知識だけではありません。
「人を人として尊重し、何度失敗しても手を差し伸べ続ける」という、人間としての深い愛情でした。

もし、あなたやあなたの周りに、お酒のことで人知れず悩んでいる方がいたら。
どうかこの言葉を思い出してください。
「助けてくださいと言えるのは、恥ではなく、勇気です!」

この記事を書いた人

かいごマガジン編集部

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