皆さんこんにちは!
養護白寿荘の伊藤です。
12月16日(火)11時より、当施設にてアート鑑賞プログラム「アートリップ」を開催しました。
このプログラムは、絵を「正しく理解する」ことを目的とするのではなく、参加者一人ひとりが感じたことや気づきを言葉にし、絵の世界を旅するように楽しむ対話型の鑑賞会です。
偶然の出会いから始まるアートの物語
冒頭では、青森県田舎館村で30年以上続く「田んぼアート」のエピソードが紹介されました。
色の異なる稲を使って巨大な絵を描くこの取り組みは、地域の方や高校生が力を合わせて作り上げているものです。
参加者の皆さまからは「知らなかった」「実際に見てみたい」といった声が上がり、アートが人と人をつなぐ力を改めて感じる時間となりました。
「答えは一つじゃない」から広がる鑑賞の楽しさ
鑑賞ではまず、有名な錯視の図を用いて「見方によって感じ方が変わる」ことを体験。
グラスに見える人、人の顔に見える形など、それぞれの視点が尊重され、「どの見方も正解」という安心感の中で自然と会話が生まれました。
日本美術と西洋美術を音で味わう
前半は、葛飾北斎の娘・葛飾応為による「三曲合奏図」。
三味線・琴・胡弓を演奏する人物たちの所作や表情から、
「音を合わせようとする緊張感」「ベテランと若手の関係性」など、鋭い観察が次々と語られました。
長唄の経験をお持ちの参加者からは、楽器の持ち方や角度に注目した専門的な視点も共有され、鑑賞が一層深まりました。
後半はアンリ・マティスの《リュート》。
色彩の明るさや室内の装飾から「情熱的」「暖かい国の雰囲気」「一人で静かに練習している感じ」など、感じ方はさまざま。
戦時中、病と向き合いながら描かれた作品背景を知ることで、
「希望を思い描く絵だったのかもしれない」という理解へとつながりました。
年齢や知識を超えて楽しめるアート鑑賞
今回のアートリップでは、専門知識の有無に関係なく、
「気づいたことをそのまま話す」ことが鑑賞の中心となりました。
そのため、初めての方も、長年芸事に親しんできた方も、自然に対話に参加され、会場には終始あたたかな空気が流れていました。
参加者からは
「現実から少し離れられて楽しかった」
「人の話を聞くことで、絵の見え方が変わった」
といった感想も聞かれ、アートが心を解きほぐす力を改めて感じる時間となりました。
今後も、世代を問わず楽しめるアート鑑賞の場を大切にしていきたいと思います。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。