寿で暮す人々あれこれ
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— 94 —追 記 忘れられない「目」入院の時、救急車に乗せるためにアキさんの身体を抱き上げさせていただいた。そのあまりの軽さに切なさがこみ上げた。目を大きく見開いて僕を見つめていた。様々な思いが込められたようなその目が忘れられない。「入院したくない」と言いたかったのだろうか。言葉を発する力も残されていなかったのだろうか。死を受け入れてなすがままに任せていたのだろうか。水洗トイレは嫌いじゃ! ─ 大塚洋介のこと 彼は、もと某大手出版会社の社会派のフリーカメラマン。取材で寿に通ううちに魅せられたという。取材対象ではなく、これまでの自分の生き方を考え直す何かを感じたという。そんなわけで、カメラマンとしての仕事の合間に寿に通いだした。例えば、豪華客船に乗りこんでの取材のあと寿に来ることもあり、全く別の世界を往復するのは異なる視点で社会を眺められるという利点もあったそうだが、自分の思いは混乱する一方だったという。カメラで生活しようと思えばいろいろな取材を引き受けなくてはならない。取材を受けるほど自分のやりたいことから遠ざかることが多くなっていく。そのはざまで悩みながら彼は寿に住み、日雇いをし、暮らすことを選んだ。カメラの代わりにスコップやツルハシを持った。寿の日雇労働市場の朝は早い。まだ暗い早朝5時前には職安前広場とその周辺は、今日の仕事を探す人、労働者を求める手配師、職安の求人開始を待つ人、仕事の情報を探る人、食堂や屋台で腹ごしらえをする人

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