寿で暮す人々あれこれ
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— 39 —寿で暮らす人々あれこれ無言のコミュニケーション ─ 子安さんのこと子安さんと初めてあったのは、当所で月2回の「老人給食」の案内のチラシを届けた時だった。フトン以外ほとんど何もない部屋に、素っ裸で胡坐をかいて座っていた。どうぞ来てくださいとすすめ案内を置いていった。子安さんは「おおお…」と意味不明の言葉を漏らしただけだった。何時の頃からか、子安さんは、会食に参加するようになった。子安さんの座る場所は、いつも決まっていた。その席に座り、胡坐の上に握りこぶしを乗せ、目をつぶって会食が始まるのをじっと待つ。こんなことがあった。夏のある日の会食の席で、隣に座った調理に通ってきていたボランティアさんが、気を失って倒れてしまったのだ。介抱をされて気づいたボランティアさんは、恥ずかしそうに話した。隣の子安さんの臭いを「我慢していたのだが…」ということだった。子安さんは、銭湯にはほとんど行ってないのではないか。また着ているものもほとんど同じである。そんな強烈な臭いではないのだが、夏の湿気が強かったせいかもしれない。子安さんは、会食の数時間前から、職安広場に現れ、道端に座って目をつぶって待つ。時間が経つにつれて、少しずつ近づいてくる。30分ほど前になるとセンターの門内に入って座り、やがて、会食の場のホールのいつもの定位置に座るのである。その場所はみんな承知していて、座らないようにしている。休みの時は、そこだけがぽつんと空いているからすぐわかる。子安さんはゆっくり食べ、なめるようにきれいに平らげる。そんなだからいつも最後になる。片付けのじいちゃんたちは子安さんの周りでじっと待つことになる。子安さんはゆうゆうと食べている。ほとんど喋らない子安さんと会食に来るおじいちゃんたちの間には、無言の思いが通っているように感じられる。子安さんは、僕の簡単な問いかけにおろおろしたアクセントで「お、

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