寿で暮す人々あれこれ
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— 37 —寿で暮らす人々あれこれ両手と両足を軽く踊っているように動かしながら寿の中を闊歩している中西さん。口を精一杯あけて目をくりくりさせながら話をする。楽しくて、油断のならない人なのである。物知りで、いろんな話しをしてくれる。耳を傾けていると、何のことはない、からかわれているということもある。知的障害者の手帳を持っているのだが、生活力は旺盛だ。生活保護を受け生活している。あたらしい物好きで、ウォークマンなど新しい製品が出ると買って見せに来てくれる。得意げで楽しそうだ。しばらくすると、それはもう持っていない。生活に困り町で出会う人に声を掛けて売ってしまうようだ。相当値切られるらしい。そういう点で、生活面は大いに?がつく。でも、何やかやこのスタイルで何年も生活してきているのである。僕は半分本気で「それなら、僕のところに来ればいいのに」と言った。中西さんは「ウン」とか言ったが、僕のところに来ることはなかった。そういうところのけじめというか規矩はしっかりしていたように思えた。寿で水を得た魚のよう(左から三人目)

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