寿で暮す人々あれこれ
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— 163 —寿で暮らす人々あれこれその墓碑銘は仲なかま間ら 声こえなく いく秋ときぞ 経へしから始まる秋場さんの文章です。この短い文章の中に秋場さんの万感の思いが込められています。寿で千秋の丘の存在を知る人と慰霊に参加する人の数は多くないのですが、寿とそこで暮らす人々の様々な気持ちを整える場所、大切な場所として引き継いでいくことは、寿で暮らす人たちのアイデンティティーにつながっていく営みであると思います。毎年関わりのある方がなくなります。以前わたし産むひと、わたし育てるひとの項で触れたゆきさんもこの10月のはじめに亡くなりました。今年の8月16日の寿夏祭りの初日に寿福祉センター保育所前の路上にポツンと腰かけていたゆきさんに声をかけたのが最後となりました。また、ゆきさんと同じ日、寿での労働運動や地域活動に活躍したHさんも亡くなりました。Hさんとは、仕事よこせ運動の渦中で出会いました。寿で生活し仕事していた方ではなかったのですが、この運動に共感して参加してきました。仕事よこせ運動が神奈川県の労働部を数日間占拠した時がありました。その中でHさんと出合いました。Hさんは、それ以後、寿で生活することになりました。 同じ時代の風を共有した仲間を亡くし、僕は生きるということが、若いころと大分違って実感できている気がしています。

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