寿で暮す人々あれこれ
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— 122 —とになる。※8 追い回し:契約が終わって賃金を精算する日が来ても、何かと理由をつけて仕事をさせ賃金支払いを引き延ばす。しかも重労働や危険な仕事を割り振る。労働者がいやになるか危険を感じてトンコ(無断で逃げる)させるようにすること。寿の有子所帯の保育所入所保育所開所当時、寿の子どもたちが保育所に入所するためには、父母に重い腰を上げてもらわなくてはならない。そのため寿にある「横浜市寿生活館」という生活相談所に応援を頼んだ。入所申込用紙の記入の代書をしてもらうのである。職員たちは、以前から寿の子どもたちの保育所への入所を待ち望んでいたので喜んで協力してくれた。住民票や出生届がなくとも入所手続きには支障がないのだが、お父さんやお母さんは、入れないものと思い込んでいた。入所に大切なことは、お互いの信頼関係だった。できるだけ訪問して入所をすすめた。保育所に申し込んだ方々は、夫婦ともにドヤの管理人さんをしている所帯。お父さんかお母さんどちらかが管理人をしている所帯。ドヤを経営している所帯など比較的仕事が安定している所帯がやはり多かった。お父さんが日雇、お母さんがパートで働いている所帯も少しずつ入所申込みするようになった。働かなくとも、働けなくても「居住環境」を理由にして入所できるよう区役所に理解を働きかけた。しかし、地域の中のお互いの口コミが大きな入所の動機となっていた。寿の子どもたちは、夜中でも地区内の道路や職安広場で遊んでいた。親子4人や5人で暮らすにはドヤの3畳や4・5畳の部屋は狭い。寝るときは、頭と足を互い違いにして寝るとか、壁に角材を打ち付けそこに板を並べて作った段に小さい子どもを寝かせるとか工夫をしていた。部屋が狭いので工夫にも限界があった。子どもは夜中目覚めると部屋でじっとしていることなどできない。朝が早い労働者が寝ているのを起こすことはできない。そんなわけで、子どもたちは夜中でも寒くても外で過ごすしかない。子どもたちは集団で元

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