寿で暮す人々あれこれ
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— 120 —東村山市の飯場訪問。トンコした方が悪いと認めない。元受けに交渉し責任を取ってもらう、ということを持ち出したら軟化。労災の適用、未払い賃金(日当3000円)の精算を受ける。本人の本職は手品師である。その後、労災で治療、手指も完治。アルコール依存症の治療も並行しやがて手品師に復帰、時々、TVで見事な技を披露している。《3》 日雇仲間では「あそこには間違っても行くなよ」というY市のK組でのトラブル。賃金未払い。契約日数が終わったので賃金の精算を求めたところ、支払いを延ばされ追い回しにあう。怖くなってトンコした。K組に電話。「飯場で働いている間、近くのバーで付けで飲み食いした。その分が未払いとなっている。それを立て替えると賃金はない」バーのおかみさんは、K組の親方の奥さんという関係が明らかに。賃金と生活資金が業者に握られ、その明細も定かでないまま賃金の未払いや不払いの理由にされている状況は、前近代的な労働環境である。労働基準監督署に届け出て裁定を要請する旨K組に告げる。電話での恫喝は結構なものだった。さて、その日、K組に労働者を紹介した、寿に事務所を構える暴力団の組頭が相談室を訪ねてきた。付けの明細と就労の明細を突き合わせて差額を支払うことで話はついた。日雇い労働の背景は複雑なものがある。それは、社会的な弱者が不利益を被る構図である。《4》 労働相談はその問題にその人の生き方が反映されていることがある。問題の解決は大事だけれど、その人の人生観や社会感がうかがわれて感慨深い。賃金不払いの相談。飯場で1カ月ほど働いたが、追い回しにもあい賃金をもらわずに戻ってきた。事情を

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