寿で暮す人々あれこれ
121/189

— 119 —寿で暮らす人々あれこれしてきた。日雇はその日の仕事がすべて。景気や天気に左右されるので収入も生活も不安定だ。飯場(※7)で働いたが、デズラ(出面:賃金のこと)を払ってくれない。このような相談が多かった。先方へ電話して賃金を払うよう交渉する。払ってくれる業者もあるが、言を左右にしてなかなか支払ってくれない業者もある。また脅迫まがいの言動をするところもある。相談を通じて日雇労働者の置かれた状況がうかがえる。 《1》「なに、払えだと、うちの重機を壊してトンズラしたんだぞ。弁償しろっ!」のっけから怒鳴られてしまった。本人に確認すると、昼休みにちょっと練習気分で運転、砂の山に乗り上げ横転してしまったという。仰天してそのまま逃げ帰ってしまった、というのであった。重機を運転した時の状況など純法律的に考え、賃金を受け取ることはできるかもしれないが、常識的に考えても無理だなあ、ということであきらめた。《2》池袋の駅で寝ているところを手配師に手配される。鉄管をぶら下げる玉がけ中にワイヤーに手をはさまれ裂傷を負う。病院に一度連れて行ってもらっただけで、翌日から追い回(※8)され怖くなってトンコした。電話。「支払わないとは言ってない、勝手にいなくなってなんだ。こっちも仕事上で損害をこうむった…」堅気ではなさそうな少し嫌な感じだ。受診先の病院の診断内容と労災の適用が必要なこと、未払賃金分の支払いを要請。話し合いの末、飯場を訪問することに。本人は「怖くて嫌だ」というが、同行するからと説得。

元のページ  ../index.html#121

このブックを見る